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十一話 もうひとつの決着


 十一話 もうひとつの決着



 起き上がった裂姫は銀髪が黒くなり、その着ている服も白から黒に変わっていた。フールフールも何が起こったのか把握できず呆然と立ち尽くしている。


・・・裂姫のスイッチが入った ・・・


「拳勝っ 構えろっ 紅葉を守れっ 」


 銃鬼が拳勝に向かって怒鳴る。拳勝は慌てて拳に力を入れ紅葉の前に立つ。裂姫は右手に”白菊”左手に”向日葵”を持ち腰を落とすと、フールフール目掛けて飛び出す。その時凄まじい大音響が響き渡る。それが衝撃波となり周りの物を破壊した。


「今の裂姫の動きは音速を超えている ソニックブームがくるぞっ 」


 裂姫が動くたび衝撃波が辺り構わず襲ってくる。それでなくても早い動きの裂姫がもう銃鬼でも目で捉えることは不可能になっていた。縦横無尽に飛び回る”黒い”裂姫は全てを飲み込む黒い闇のように見える。その闇に飲み込まれたフールフールは黒い闇の中で踊っているかのように見えた。


・・・この動きは? この速さは在り得ない この速度で動いたら空気との摩擦で肉体は崩れていってしまう ・・・


 フールフールは時間を止め、裂姫の猛攻を凌いでいたが最早防御だけで精一杯だった。時間停止を繰り返し発動し防いでいるが、次の発動まで今は一呼吸の余裕もなくなっていた。


・・・いけない このままでは ・・・


 フールフールは現状を打破しようとするが、もう時間を止めるのが間に合わなくなってきていた。停止が解除されてから、フールフールが次に発動するまでの僅かな時間に、裂姫の斬撃がフールフールの左腕を襲う。”白菊”はフールフールの左腕を簡単に切断した。そして、更に”向日葵”が切断され宙に飛んだフールフールの左腕を切り裂く。左腕はバッと一瞬で炎に包まれ、床に落ちるまでには消し炭になっていた。


「ぐわぁっ 」


 フールフールは左腕を押さえて膝を落とす。裂姫は大上段から”白菊”で斬りかかる。フールフールは時間を止め窮地から逃れようとするが、もう裂姫の攻撃から逃れる術はない、そう思われた。


 その時、地下フロアの空間が避ける。その空間から一人の人間が姿を現した。


「フールフール もう遊びは終わったかい 」


 姿を現した人物は、フールフールに声をかける。


「ダンタリオンか ああ、丁度今終わったところだ 」


「そうか なら会議がある 早く来い 」


 ダンタリオンはそう言うと空間の裂け目の中に姿を消した。フールフールは立ち上がると、いた仕方がないという様にシルクハットを取りコンクリートの床に思い切り叩き付けた。


「伏せろっ 」


 銃鬼の叫びで拳勝たちは床に伏せる。その直後閃光と共に爆発音が響き渡り周囲がぐらぐらと揺れる。揺れが収まり拳勝と紅葉が目を開けると、フールフールの姿はなく”白い”裂姫が”白菊”と”向日葵”を両手で構え立っていた。銃鬼が裂姫に向かって歩いていく。

 拳勝も紅葉の手を取って立ち上がらせる。と、紅葉があれっという顔で天井を見上げる。


「ちょと、拳勝 これ崩れるんじゃない 」


 拳勝も天井を見上げると亀裂が広がり、パラパラとコンクリートの欠片が落ちてきている。それに、ごぉっという何かが崩れる音も聞こえる。


「銃鬼さん 裂姫さん 崩れますっ!! 早く逃げて下さいっ 」


 そう言うと拳勝は紅葉の手を取り走り出した。階段を駆け上がり一階の入り口を目指す。入り口から外に出るとバラバラと割れたガラスが降ってきた。二人は後ろを見る余裕もなく駐車場のバイクまで走った。そして、ようやく駐車場で振り返りセンタービルを見ると十階建てのビルがこちらに向かって倒れてくるところだった。


「拳勝 ここまずいよっ 」


 拳勝はバイクに跨るとエンジンをかけ、紅葉に早く乗れと言う。そして、紅葉をタンデムシートに乗せアクセルを開ける。

 センター通りに飛び出したところでビルが倒れてきた。今までいた駐車場が瓦礫の山に埋まっている。


 少し離れた公園にバイクを止めた拳勝は、銃鬼と裂姫の姿を探すが彼らの姿は見えない。紅葉も目を皿のようにして探していたが二人の姿を発見する事は出来なかった。


「嘘だろ…… 銃鬼さん 裂姫さん 」


 拳勝たちはバイクで再び崩れたビル跡に戻り、瓦礫を除きながら二人を探す。紅葉も綺麗に手入れしていた爪が真っ黒になるのも構わず転がるコンクリートの欠片をどかし続けた。


「裂姫ちゃん…… 」


 いつしか紅葉の瞳から涙が溢れ出ていた。拳勝が紅葉の肩を叩き、無言で首を振る。そして、震える紅葉の肩を抱きバイクに向かって歩き出した。拳勝の目からも涙が流れ出していた。二人は瓦礫の間をとぼとぼ歩き、バイクを止めた場所に戻った。そして、俯いていた顔を上げる。


・・・えっ ・・・


 そこには探していた銃鬼と裂姫の姿があった。


「裂姫ちゃんっ 」


 紅葉が裂姫に飛び付くように抱きついた。


「モミジ どうしたの 」


 裂姫がいつものように普通に答える。銃鬼が隣で微笑んでいるのもいつもと同じだ。拳勝も銃鬼に右手を出し握手を求めた。銃鬼は多分意味が分からないまま右手を出し拳勝と握手した。


「それより 裂姫のバイク壊れちゃったの 」


 裂姫がこれ以上ないという程悲しい顔で呟いた。


「待ってろ、裂姫 すぐ持ってくる 紅葉、乗れっ 」


 拳勝はバイクに飛び乗り紅葉をタンデムに乗せアクセルを開ける。銃鬼と裂姫が見送るなかバイクは禍対委に向かって走り出した。


「うおぉぉぉーーーっ 」


 なぜか叫びたい気分だった。


「やあぁぁーーーっ 」


 紅葉も後ろで叫んでいる。


 二人はいつもより心地よく感じる風の中をバイクで疾走していった。


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