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3か月後

 婚約破棄をする?私から?婚約解消ではなくて?

 まぁ、命の危険があるので怖いから辞めたいというのは正当な理由になるだろう。

 婚約破棄すると……。

 私の寿命は……69年……。あ、戻る。

 やった!

 これはぜひとも婚約破棄の方向で。

 と、待って、まだお父様の寿命がどうなるのか確かめてからじゃないと、即答なんてできない。

 あ……!

 殿下の寿命が1年になった。

 え?私から婚約破棄すると、殿下の寿命は1年になるの?

 どうして?私が寿命を見ることで事前に危険を回避することが出来なくなるから?

 ……。

「こ、婚約破棄は……」

 したい。

 だって、早死にたくない。

 でも、でも……。

 だからって、殿下が死ねばいいなんて思わない。

 ぐっと奥歯を噛みしめる。

「殿下……私から婚約破棄も婚約解消もいたしません……」

 私の寿命が10年になった。ん?9でなく、10?

 ん?んん?

「本当か?」

 殿下が不安そうな顔をする。

「え、ええ」

 寿命が11年になる。

「お、俺と婚約するのは……仕方がなくじゃないのか?」

 仕方がなくです。

 寿命が3年に縮むよりはマシだと思って、仕方なくです。

 そして、殿下の寿命が1年になってしまうのを防ぐために仕方なくです。

 思わず目が泳ぐ。

「……やっぱり義務だからか」

 殿下がしょぼくれたとたんに寿命が9年に戻った。

 うひゃー。どういうこと、何が正解なの?

「殿下!これだけは信用してください!」

 とにかく、寿命が延びたり縮んだりすることは分かった。殿下との関わり方一つで変化するのだろう。

 だったら、20歳で死んでしまうまでに、寿命を戻す方法を見つけるためには殿下と積極的に関わって言った方がいいんだろう。

「私は、自分の命が尽きようとも、殿下のお命を守ります」

 殿下がびっくりした顔をしている。

 そりゃそうだろう。騎士でもないのに何を言ってるんだと。

 でも、確かに私は、私から婚約破棄をする選択を放棄した。

 残り余命……寿命が見えるから分かることなんだけど……。

 人の命を犠牲にして自分だけが生きていくなんてできない。

 それはたとえ殿下でなくとも、だ。

 殿下が私のせいで早死にするくらいなら、殿下を恨みながら死んだ方がましだ。

 死ぬ間際には、殿下の頭が剥げ散らかす呪いをかけてやるっ!頭頂部円形に剥げ散らかすがいい!




 3か月後。婚約破棄しないと宣言してから、殿下の寿命は残り83年のまま。私は9年からなぜか微増して11年になっていた。

 ……微増、微妙だ。

 一月に1度のお茶会。今日も王宮の1室。お茶会といいつつお茶もお菓子も何もない。

 ……公爵家から何か持ってこようかしら?

 うちなら毒を入れるような人間はいないし。

「殿下」

 ソファに隣同士で殿下と座っている。

 殿下の寿命を確認しようと手を伸ばすと、殿下が私の手を避けるように引っ込めた。

 あれ?

 寿命を確認しつつ会話したいんだけど……。

 流石に引っ込めた手に、再び手を伸ばすのは怪しいかと思って、腰を持ち上げて座る位置を変え殿下に近づく。

「えーっと、ああ、そうだ。庭には出られないけれど、バルコニーには出られるんだ」

 殿下が不自然に、突然立ち上がりソファから距離を取った。

 あれ?

 もしかして、避けられてる?

 ちょ、それは困る!触れないと寿命が見えない。

 なんで避けられちゃうわけ?

 ぬぅー。

 そうだ!


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