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黒幕

 それから、あわただしく学園の入学を迎えた。

 予知ができるという謎の少女が入学式で私に話かけてきた。

「あんたのせいよ」

 は?

「あんたが生きてるから叔父さんが死んじゃったじゃないのっ!」

 私が生きているから、叔父さんが死んだ?全く意味が分からなくて首をかしげる。

「叔父さん?」

「そうよ! ジェフ叔父さん! 私の生みの親の兄よ!」

 ジェフ叔父さん?ジェフってまさか、ジェフのこと?

 ミミリアは、ジェフの妹の娘? 

「でも、ジェフの妹は……もう亡くなっていると……」

「そうよ。15で……学園で恋に落ちて私を産んだの。そして亡くなった」

 ミミリアは私と同じ15。15でミミリアを産んだのであれば生きていれば30。ジェフは今31だから……。計算はおかしくない。

「あなたが……ジェフの姪……?」

「そうよ。そして、父親は、王弟殿下よ」

「うそ……」

 ミミリアはふんっと鼻息を出す。

「知らないのも当たり前よ。この秘密が表に出るのはシナリオも終盤だから。めでたく殿下と恋に落ちたけれど男爵令嬢ということで周りからの反対を受けたヒロイン。しかし、実はヒロインは王弟殿下の隠し子だった。王家の血筋を引く娘として二人は晴れて一緒になることができるというね」

 えっと、何を言っているのだろう。

「ヒロイン? それは予知で見たということかしら?」

 ミミリアがクスリと笑った。

「予知だなんて本当に信じてるの? そんな能力なんてないわよ。ゲームをやった人間なら知ってる話ばかりよ」

 ゲーム? 

「でも、あんたが生きてるせいでシナリオがめちゃくちゃよ。邪魔なのよ。シャリアーゼ。あんたがいなければ、きっとシナリオ通りの展開に戻るはずだわ!」

 シナリオってどういうこと? 

「ミミリアが見た未来通りに、私がいると進まないから邪魔だと言うことかしら?」

「そうよ。消えてくれる?」

 足が震えてきた。理不尽すぎるというよりも、どんな理由があろうとも人の死を願うことが信じられなくて……。

「ミミリア……あなた、いったい何様よっ!」

 かわいい顔をしているのに、その考え方に背筋が寒くなる。

「私? ヒロイン様に決まってるじゃない」

「ジェフが言っていた妹のためというのは……妹の産んだ子供のためっていう意味だったの……?」

 ミミリアがふっと馬鹿にしたように笑った。

 ジェフが最後に残した……バケモノという単語が頭をかすめる。

 この子のことなの?

「そうよ。回想スチルで兄さん娘をお願いとかいうシーンが出てきたもの。そのときに、父親が王弟殿下だっていうのも判明するのよね。叔父さんは、王族の血を引いてるのに貧乏男爵家に養女に出され、日陰で生きて姪を可愛そうだから何とかしてあげようって思うでしょう?」

「殿下を亡き者にして、王弟殿下を皇太子にしようとしたの?」

 王弟殿下が皇太子になってからミミリアの存在を公表するつもりだった? なんかおかしい。別に皇太子になってからでなくてもいいじゃない。

「はぁ? 殿下を亡き者にする? 冗談じゃないわ! 私は殿下と結婚して王妃になるのよ? 殿下が死んだら意味ないじゃないのっ!」

「でも、ジェフは殿下に毒を……」

 ミミリアがだんっと地面をける。

「王弟殿下ね。シナリオでは自分が王位に付こうとして。それが、自分の娘であるミミリアが殿下と結ばれたことで改心するんだけれど……」

 ミミリアが親指の爪を噛んだ。

「シャリアーゼは非の打ちどころがないから、シナリオがゆがんだんだわ。それで……殿下を排除するために殺そうとしたってこと……?」

「え? 殿下の命を狙った黒幕は王弟殿下?」

 ジェフと王弟殿下は学生のころからの付き合いで、妹の恋人で、娘がいるという秘密を共有していて……。王弟殿下に協力を頼まれればジェフは断るに断れなかったのだろう。だけれど、殿下に手を下すことも出来ずにいたということ……? 

 ジェフはどれだけ苦しんだのだろう。……妹のためって……。ミミリアのために苦しんだの? こんな……自分のことしか考えてない子のために。

「知らないわよ。だって、私が知ってるのは、シナリオ通りのストーリーだもの。とにかく、シャリアーゼ、あなたのせいでめちゃめちゃよ。私はヒロインなのに!私が消してあげるわ!」

 キラリと、ミミリアの手元が光る。

 その手にはナイフが握られていた。

「何をしているっ!」

 背後から殿下の声が聞こえた。

「やだ、強制力が働くのね。シャリアーゼもしっかり悪役になれるじゃん」

 クスリとミミリアは笑うと、すぐに泣きそうな顔をになった。手にしていたナイフはすぐに隠すことも忘れない。

「殿下ぁ、シャリアーゼ様ったらひどいんですぅ。ミミリアのことぉ、男爵令嬢のくせに生意気だって言うんですぅ。土砂崩れから助けてあげたのにぃ」

「黙れ、聞こえていたぞ。お前がシャリアーゼに消えろと言っていることは」

 ミミリアが伸ばした手を避けると私を背にかばうようにして前に立った。

「ちょ、なんでよっ。殿下はシャリアーゼを庇うの? まるで私が悪役みたいじゃないの。私がヒロインなのに! 殿下は私と結ばれるのよ!」

 カラリと、ミミリアが隠したナイフが地面に落ちた。

「あ、こ、これは……」

 ミミリアが言い訳を探して口を開く。

「連れて行け……」

 殿下が命じると、マーカスが、ミミリアの両腕を後ろで拘束する。

「嫌だ、殿下、どうして! 真実の愛の相手は私のはずでしょう? 殿下ぁ!」

「俺の真実の愛の相手はシャリアーゼしかいない」

 わめきながらマーカスに連れていかれるミミリアに殿下はそういった。

「わ、私が……真実の愛の相手? 何を……言って……」

 殿下が私をふわりと優しく抱きしめる。

「初めて会った時からシャリアーゼが好きなんだ。照れ隠しでお前でいいなんて言ってしまったけれど、違う。お前がいいんだ。お前じゃなきゃ嫌なんだ……」

 嘘……! 

「でも、シャリアーゼは俺のこと好きになってくれないんじゃないかと思うと……怖くて。別の人が好きだと言われたら殺してしまいそうで……」

 ぎゃっ! 寿命が点滅し始めた。

 何、これ! いろんな数字がパカパカしてる。

 殿下に殺されるいろいろな未来があるってこと? 

 怖っ! 

「でも、シャリアーゼは自分の身が危険にさらされようと、俺の命を守ろうとしてくれた」

 そんなの……。

「俺と一緒に笑ってくれて、俺のために泣いてくれる。それが、たとえ愛馬に対する扱いと同じだったとしても……シャリアーゼが傍にいてく」

 思わず、殿下の頭をポンッと叩いてしまった。

「もう、お馬さんごっこするほど子供ではありませんわ!」

「え?」

 殿下が驚いた顔をしている。

「そうですわね、今度からは真実の愛ごっこでもいたしましょうか?」

 ふふふと笑うと、殿下が真っ赤になった。

「いや、それはさすがにまだ早いのでは」

 って、まだ早いって、いったい真っ赤になった殿下は何を想像したのよ! 

 寿命が66年に戻っているのに気が付くのはもう少し先のお話。

短編をご覧いただいてからの方は、結末も想像できていたかと思います。

ひとまずの完結です!ここまでお付き合いいただきありがとうございました!短編でフラグを立てていたジェフの話がかけて満足です!


広告欄下にある★★★★★の評価をしていただけると嬉しいです。


また、書籍版とは半分大きく変わっております。よろしければお手に取っていただけると嬉しいです。


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