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私の覚悟

「なんでだよ。俺の側近になったから、死ぬことになったんだろう。俺の側近にならなきゃ、俺の命を狙うこともなかったんじゃないのか。犯罪者になることもなかったはずだ」

 ふと、ここで店長のことを思い出した。

 玉露で毒は作れないのに、毒を作っていたこと。

 店長は自分の無実を晴らすためにかばってくれたと言っていたけれど。

「本当に、ジェフは殿下の命を狙っていたのでしょうか……」

 馬鹿なことを言っていると思っている。

 どう考えても毒苺ムース事件ではジェフが絡んでいるのは明白だろう。情報を流しただけでも罪になるのだから。

 でも、情報を流しただけで、手を下そうとしていたのだろうか?

「命を狙っているふりをしていた……」

 自分の言葉に驚いた。

「命を狙っているふりをして、殿下を逆に守っていた?」

 途方もない考えが脳みそを通過して口から出る。

「誰かが殿下の命を狙っていて、ジェフは協力するように命じられていた。もしくは本人が言っていたように死んだ妹のために協力を決めた……けれど、殿下を殺されたくないジェフは協力するふりをしていた……とか」

 馬鹿みたいな考えだけど、でも。

「ジェフならいつでも殿下に毒は盛れますよね。犯人を仕立て上げることだってできそうだし……。自ら命を落とす覚悟もあるならいくらだって殿下を殺すことなんて出来たはずで……」

 それなのに、しなかった。

 生かしておく理由があったのかもしれない。

 殿下を殺してしまうと自分も口封じで殺されかねないから、手を下さずにおいたとか。……でも。

 ジェフが死んでしまったのだ。真実なんて分からない。

 だったら、都合のよい想像で頭を満たしちゃえばいいんだ。

 殿下に、店長の話をした。

 もしかしたら、玉露で毒を作っていますと、毒を作るのには時間がかかると誰かに報告して時間を稼いでいたのかもしれないと。殿下を守るために。

「ば……かな……それなら……言ってくれれば……ずっと、俺を守ってくれればいいだろ二重スパイになればよかったのに……」

 もう、誰もジェフの行動の真実を知る者はいないのだから。唯一知っていたジェフ自身が亡くなってしまったのだ。

 ジェフは殿下を守りたかったんだと……私の願望を口にしたって、否定することさえできないんだ。

 これから回りの人を疑って誰も信じられなくて孤独になって辛い思いを殿下にはしてほしくない。

「殿下……覚えていてください。私は殿下を裏切ることはないということを……。自分の命よりも、殿下の命を選びます」

 嘘じゃない。

 殿下が死ねば私の寿命が元に戻るからって、選ばなかった。

「嫌だっ!」

 殿下が私の両肩をつかんだ。くしゃりと、殿下の持っていたジェフからの手紙が音を立てた。

 怖い顔をして殿下が私の顔を見ている。

「絶対に、許さないからな。死ぬなんて。俺のために死ぬなんて!許さない」

 自分のせいで誰かが命を落とすことで殿下は心を痛める。

 だから、寿命が見えることは知られてはいけない。

 そして……。

「頑張って長生きするわ」

 どうにかして寿命を元に戻す方法を見つけなければ。

 それから……。

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