予知
「シャリアーゼ、どうしてここに!」
「お父様にお伝えしたいことが」
一刻も早く寿命を知りたい。
お父様の元に駆け寄って手に触れる。
え?
0だ。
お父様の残りの寿命は0のまま。そして……。
私も0。
背中が続々とする。
ここに来たことで0になったと言うことは、この場所が危険だということだ。
立ち去らないと。
がくがくと恐怖で足が震えだす。
「未来予知とは、どういうことだ!」
殿下がミミリアの前に立った。
「え?嘘っ!アーノルド様が、どうしてここに?」
ミミリアが目を輝かせて殿下の腕を取る。
ちょ、今、アーノルド様って言ったよね?ってことは皇太子殿下だと分かっていて、腕を取るとか、正気か?
許可なく話しかけることも十分正気なのかと思うけれど……。勝手に触るなんて、暗殺しようと手を動かしたと思われて切られるぞ。
あ、切られそうになっている。
「殿下の質問に答えてもらおう、ミミリアと言ったな。未来予知とはどういうことだと殿下は聞いている」
マーカスが剣を抜き、刃先をミミリアの喉元へと持っていっている。
「ちょ、な、なんで?マーカス様がどうして私に剣を向けるの?っていうか、どうしてマーカス様までいるの?」
マーカスのことも知っているのか。
「答えろ」
マーカスの迫力に、ミミリアは殿下の腕から手を離して、後ろに下がり剣から距離を取った。
「そうだったわ。まだ学園入学前……だものね……失敗、失敗」
何かをつぶやきながら胸に手を当てると、ミミリアは再びかわいい笑顔を殿下に向ける。
「あの、失礼いたしました。その、未来を夢で見ることができるので、えっと、夢で見た学園生活でのことと現実がごっちゃになって混乱してしまって……」
学園で殿下やマーカスと会話をする未来を見たってこと?
「未来を夢で見る……?それは本当なのか?」
殿下の声が擦れている。緊張している?
「はい、信じてください。……この先で起きる土砂崩れに宰相様たちが巻き込まれる予知を見たので、止めるために来たのです。もうすぐ崩れるはずです」
ミミリアが道の向こうを振り返り、指をさした。
「この向こう。私の予知ではあと半刻もしないうちに崩れます。ですから、あと半刻お待ちください」
ミミリアの言葉に、殿下がお父様に言った。
「半刻くらいいいだろう?こんな場所だが早めの休憩にすれば」
殿下はこの謎の少女の言葉を信じたのだろうか。いや、元々殿下はお父様の出立を遅らせようとしていたのだから、少しでも足止めができればいいと考えたのかもしれない。
だけど……。
「ミミリアさん、それは確かな情報なの?」
びくりとおびえたようにミミリアが私を見た。
「う、疑うのですね、シャリアーゼ様は」
何なの?殿下には不敬なほど近づいたくせに。私に対してはちょっと声をかけただけで怯えたように後ずさるなんて。
「いいえ、もう少し話が聞きたいの。なぜ、この先だと分かるの?私には山の間の道なんて、何処も同じに見えるわ。土砂崩れが起きるのは、この先なの?この先ではなく、ここという可能性はないの?」
寿命が0。