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好きということ?!

「そういえば、レモンティーもあまり世間では広まっていませんでしたわね?当たり前のように私は飲んでいましたけれど。もしかして殿下が飲むところは見たことがありませんか?」

「あー、ないな。レモンが嫌いみたいだ。苺もそうだが、酸味に弱いのかもしれないな。酸っぱいのが嫌いなんじゃないか?」

 マーカスの言葉にメイが続けた。

「苺もレモンも、ほんの一部の人の楽しみであまり口にする人もいませんからね。嫌いであればにわざわざ仕入れるような物でもありませんし……お茶に添えたりしないのでしょう」

 なるほど。わざわざ手配しないと入手できない様な物だね。確かに。あまり一般的な物ではない。好きじゃないものを手配はメイの言う通りしないか。ジャガイモくらい皆が食べる物であれば逆に手配などしなくても決まった量が決まった日に届くんでしょうけど。

 それにしても。苺も甘いだけでなく酸っぱいですもんね。酸味が殿下は得意じゃないんだ。

 でも、殿下が食べられるといっていた苺のムースはどんな味だったんだろう。結局一度も食べたことがないけれど。

「ああ、レモンの汁が飛んでしまいましたね」

 メイが白紙の手紙に飛んだレモンの汁をふき取っている。

 マーカスは申し訳ないとメイに誤りながら、力加減を間違えて絞ったレモンをソーサーの上に置いてから私を見た。

「なぜ、お礼を言われたんです?」

「ああ、殿下に手紙を書くように言ったのは、気を紛らわせようと思ったのでしょう?書くことに悩んでいる時間は、他のことを考えずに済むから」

 ジェフのことを考えて落ち込む時間が少なくなるように。

「いや、違う」

「え?違うの?」

 マーカスの気遣いだと思ったのに。

「じゃあ、いったいどうしてマーカスは殿下に私に手紙を書くように言ったの?」

「どうしてって、だから、ラブレターに意味はないでしょう!婚約者に手紙くらいこまめに送るのが誠意ってもんだって普通のことを言っただけですよ」

 ぽんっと、手を打った。

「なるほど。物語に出てくるような、婚約破棄され廃嫡されざまぁされるような皇太子の地位にある人物は、確かに婚約者をないがしろにしてますしね。そうならないようにってことですか。私と婚約破棄や婚約解消したときの、外聞というものもありますよね」

 マーカスがぶるぶると震えた。

「だから、なんでシャリアーゼ様と殿下が婚約破棄するってことになってるんですか。も、もしかして、シャリアーゼ様は、殿下と結婚したくないんですか?き、嫌いなんですか?」

 結婚したくないわけでも嫌いなわけでもない。

 政略結婚の相手として問題があるのは、寿命のことだけ。いや、その寿命がねぇ。世継ぎが必要な殿下との結婚では非常に問題がある話だし……。

 マーカスが、考え込んでしまった私に懇願し始めた。

「シャリアーゼ様、お願いします。殿下の嫌いなところ、直してほしいところを教えてください。それとなく伝えて、必ず直させますからっ!殿下のこと、嫌いにならないでください。レモンが嫌いなところを直せというなら、毎日レモンを口に突っ込んでも直させますからっ!」

 レモンを口に突っ込まれる殿下の姿を想像して思わず吹き出す。

「どうして、そういう発想になるか分かりませんが……。この白紙の紙ですが……」

 レモンの汁が飛び散った殿下からの手紙を持ち上げる。

「私は婚約破棄を暗示していると勘違いしたでしょう?それを受け取れませんと言ったことがすべてです」

 私の言葉に、マーカスが顔を上げた。

「あ、そ、そうですよね。婚約破棄したくないってことは、殿下のこと好きなんですよね?殿下に、必ず伝えます。シャリアーゼ様は殿下のこと好きだって!」

 え?

 ま、ま、待って!


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