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狙われているのは誰?


 ガゼボの騒動から3日。

「お父様、結果が出たそうですね」

「ああ、やはりムースに毒が入っていたよ。それも、一口で死に至るような強い毒だ」

 お父様が私を抱きしめる。

「シャリアーゼが狙われたのだろう」

 そうだろうか。

 お父様がかすかにふるえている。

「殿下はあまり苺が好きではないと聞いている。一口も食べなかった可能性もある。そんなものに毒は入れないだろう」

 お父様の主張ももっともだ。確かに嫌いだと分かっている食べ物に毒を混入したところで無駄だよね。

 ジェフも殿下は苺が好きじゃないと言っていた。

 逆に私は苺が好物だ。どれも一口ずつは食べるだろうと思ったのだろう。

 ……いったい、誰が毒を?

 そして、何故私に毒を?

「どう考えても、シャリアーゼが皇太子妃になることが気に入らない勢力の仕業だろうな……」

 だったら、毒殺なんて手段なんてやめて、正攻法で来ればいいのに!寿命が戻るならいくらでも殿下との婚約は解消でも破棄でもするよ。

 でも、本当に私が邪魔な人間の犯行だろうか。

「今回は殿下が口に入れることを防ぐことが出来ましたけれど、いくら苺が嫌いだからと言っても口にする可能性がゼロではありませんし……下手したら皇太子殿下まで亡くなっていたかもしれないですよ?」

 私が皇太子妃になるのが気に入らないというのが動機だったとしても、私を排除しようとして皇太子を排除しちゃったら本末転倒じゃない?

 私の代わりに誰か皇太子妃になりたいというのが、犯行の動機だとしたら……私が一人の時に狙った方がいいわよね?

「……確かに、シャリアーゼの言う通りだな……。どちらが死んでも得する人間の犯行ということか……?」

 そんな人いる?

 快楽殺人犯?

「それとも、王家であれば小さなころから毒に慣らされている。解毒薬も準備されているだろうから……二人とも食べたとしても殿下は生き残るとでも思っていたか……?」

「でも、お父様、ムース食べようとした殿下の……」

 慌てて口をふさぐ。

 ダメだ。お父様も寿命が見えることは知らないんだ。

 ムースを食べようとした殿下の寿命が確かに0年になったのを見たなんて言えない。

 うーん。頭を抱えた私を慰めるようにお父様が口を開く。

「……今回の騒動後何人か王宮で不審な死を遂げた使用人がいる。背後にいる人物にたどり着くのは難しいだろう。もしかしたら、また別の方法で狙われるかもしれないからね、しばらくは慎重に行動した方がいいだろう。陛下もそのあたりは承知している。王宮で出されたものを口にしなかったとしても不敬とは言われないから安心しなさい」

 お父様の中では私が命を狙われているというのはほぼ確定なのかな?



 王宮で再び殿下との顔合わせ……お茶会があり呼ばれた。

 婚約したら月に1回は親睦を深めるために会うことになっていたが、毒事件もあり、3カ月後となった。

「殿下、すでに聞いていらっしゃいますか?」

 今回は、お茶会といいつつお茶もお菓子も出ていない。

 そして、護衛しやすいという理由から、王宮の一室だ。部屋のドアの前、窓の外に、騎士がずらりと並んで物々しい。

 部屋の中にも侍女や騎士が壁際に通常より多く並んでいる。

「何をだ?」

 ポケットの中からハンカチを取り出して開いて見せる。

 スプーンと、すでにカラカラになって小さく縮んだ苺のムースだったものが姿を現す。

「なんだ、これ」

 声を潜めて殿下に話かける。

 私と殿下は一つのソファに隣り合って腰かけているため、心持ち体を殿下に寄せる。

 他の人に会話が効かれないようにだ。幸い部屋は広く、壁際に並んだ者たちと距離は取れている。

「このあいだの、苺のムースです。器はいつの間にか誰かに持ち去られてしまいましたが、私がスプーンですくって放り出したものはそのままでしたので、拾って鑑定させました」

 私が毒の名前を口にすると、殿下が驚き立ち上がる。

「まじかっ、そんなの食べたら死ぬじゃねーか!」

 ちょっ、せっかく声を潜めてるのにぃ。

 空気読め!


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