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誤解

「殿下は真実の愛を見つけたのですね?」

 震える声でマーカスに問う。

「あ?もうとっくになぁ」

 ニヤニヤとマーカスが笑う。

「真実の愛だと気が付いたのは最近かもしれないし、もしかしたら無自覚かもしれないがなぁ」

 そうなんだ。

 学園でずっと一緒にいるマーカスがそう感じるなら、そうなのだろう。

「この何も書かれていない手紙は……私と婚約破棄をするということなのですね?」

「はぁ?婚約破棄?」

 マーカスが素っ頓狂な声を出す。

「……婚約を白紙に戻すという意味でしょう?婚約破棄ではなく婚約解消かもしれませんが」

 ひぃっ。

 私の寿命、3年?

 待って、待って、待って。

「シャリアーゼ様、いや、どうしてそんな発想に」

「だ、だって、毎日届けられている手紙の暗号文に……」

 マーカスがメイの顔を見た。

「暗号文?」

 メイがこくんと頷く。

 なぜ、マーカスはメイに確認したんだろう。

 あ、もしかして、マーカスは殿下から手紙の内容を知らされていない?

「ちょ、待て待て、暗号文なんて送ってないだろ、ただのラブレターだろ!」

 ラブレター?

「いえ、ラブレターのような内容ではありませんでしたよ。初めの手紙には朝食で苺を食べたということのみだったと思います」

 メイの言葉にマーカスが口を大きう開けてあんぐりしている。

「毒苺ムース事件のことを暗示し、好き嫌いが毒を入れる料理を狙い撃ちできる原因になっているので、好き嫌いをなくそうという暗示ですわよね?」

 マーカスが何も言えずに口をはくはくと動かす。

「それで、私は好き嫌いを逆手にとって、毒が混入される料理をこちらが誘導することができるんじゃないかと、返事をしましたわ。もちろん表向きはそう分からないように」

 マーカスが顔を抑えた。

「苺が嫌いでも好きだって意味だよなぁって殿下は言ってたのは……ラブレターじゃないってことか?」

 ラブレター?

「えーっと……もしかして、殿下はマーカスにも手紙の内容は……秘密にしていたのですか?」

「知ってる。何を書いたらいいだろうって机の前で毎日考え込んでるから、今日あったことを書けば?って言った。だから、殿下は朝食で苺のことを書いたんだ……婚約者に向けた手紙だ。もっと他に書くことあるだろう!と思ったが……思ったが、シャリアーゼ様から返事が来て殿下は嬉しそうだったのに……。まさか……暗号だと思っていたとは……」

 ぶつぶつとマーカスが何か呪文のようにつぶやいている。

 マーカスは顔を覆っていた手を退けると、青ざめて私に尋ねた。

「殿下に好きになってもらえるように頑張るとか、あれも……」

「ええ、暗号ですわ」

 マーカスが天井を仰いだ。

 そんなショックを受けるようなことは言っていないと思うんだけど。

 ショックなのはむしろ、白紙を渡された私だ。

「……マーカス、今日のこの……婚約解消を案じする白紙……」

「いや、シャリアーゼ様、それは、違うんです、その」

 3年。寿命が3年。

「受け取れません。殿下との婚約を解消することは……私……」

 寿命が3年になってしまう。絶対無理!さすがに無理!剥げる呪いくらいじゃ死んでも死にきれない!

 さすがに受け入れられない。

 マーカスに手紙を着き返すと、私の手に15の数字。

 ほっ。っと息を吐きだすと、同じように息を吐きだす音が聞こえた。

「ほーっ、ああよかった。シャリアーゼ様が殿下と婚約解消するとか言い出したら……どうなっていたことか……」

 マーカスが両手を床に付いた。

 ちょっと大げさすぎやしない?

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