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暗号解読

「命が狙われないように警戒を深めているということでしょうか?」

「うーん、なるほどねぇ……好き嫌いが原因で命の危険があるのはねぇ……」

 メイがハットする。

「そうでした、マーカスさんが待ってます、お嬢様。そのまま返事を持って学園に戻るそうなので」

「え?すぐに返事を書かなくちゃいけないの?ちょ、ちょっと待って」

 メイが慌てふためく私に棘のある声を出した。

「いえ、慌てなくとも大丈夫ですわ。シャリアーゼ様。マーカスさんはお茶とお菓子を要求し、食べながら待ってると……のんびりしています」

 お茶くれって言ったの?

 ふ、ふふ。マーカスは本当に裏表のないというか。まぁ、相手がメイだから言ったのかもしれないけど。

 メイがずうずうしいと怒るのも分からなくはない。サボっているように見えるのかもしれないし。

「ふふ、分かったわメイ。早く返事を書かないとね」

「はい。すぐに学園に戻るようにマーカスを追い出……手紙をお渡しします」

 少し考えてから、こう書いた。

『私は苺が好きだけれど、苺が嫌いな人を嫌いません』

 伝わるかな、この暗号というか、裏の意味。

 嫌いなものはむしろ嫌いだと公言していれば、その食べ物に毒を入れないから安全なのでは?と思ったのだ。

 だから、好き嫌いは嘘でも大げさに周りに伝えたほうがいいのかなぁと。

 殿下からの手紙。

 万が一、人に見られて暗号を解読されてはいけない。

 破ってから暖炉に入れる。

 火が着きすぐに燃えて炭になった。

 うん、これで良し。


 次の日に、またマーカスが手紙を届けに来た。

『シャリアーゼと、同じものを食べたいんだ』

 この言葉の意味する裏の意味は……。

 あ!なるほど、そういうことね。

 殿下だけ別メニューになれば、毒を入れやすいものね。お茶会にしろ晩餐会にしろ、皆が同じメニューであることで毒を混入しにくくなる。

『好きな物を増やしましょう』

 茉莉茶や桂茶のように、異国の珍しい物を晩餐会やお茶会に出したらどうだろう?

 毒を入れようにも、食べたことも飲んだこともないものに混入して、味や匂いに変化が起きてしまえばすぐにばれる。

 初めて見たものには入れにくいんじゃないだろうか。

 今日は昨日よりも早く返事を書いて渡すことができた。マーカスは大きな口にお菓子をたくさん突っ込んでお茶で流し込んで学園に戻っていったらしい。

 メイが楽しそうに話をしてくれた。

 うん……お茶もお菓子も出さなければいいのに、出してはあげるのね?

 次の日もまた手紙が来た。

 ……ジェフが犯人だと分かる前はこんなに頻繁に手紙のやり取りをすることなどなかったのに。

『シャリアーゼの好きな物を、俺は好きになるよ』

 こ、これって……。

 私に、いろいろな食べ物の情報を集めろと言っているってこと?

 た、大変!

『殿下に好きになってもらえるように、頑張りますわ』

 急いで書いたため、少しダマになってしまったけれど構うものか。マーカスに返事を託しながらメイにお願いする。

「チャンを、いえ、リンちゃんでもいいわ。呼んでくれる?」

 東の国の珍しい食べ物についていろいろ話を聞かなくちゃ。

 他の国の商人とも話がしたいわね。商人同士の繋がりみたいなものはチャンはもってないのかしら?

 もしあれば紹介してもらいたいけれど……。

 なければ、お父様に探してもらう?どこかの貴族とつながりがある商人だとその貴族を通してとかになるとちょっと面倒なのよね。


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