届いた手紙
「俺が他の女にうつつを抜かすわけないだろう」
ドヤ顔されたけど、真実の愛に目覚めそうにないことにがっかりだ。
ん?がっかり?
胸を押さえる。ちょっとほっとしてる?
えーっと。
そうよね。知らない間に愛をはぐくまれるよりも、知ってた方がいいものね。ほ、ほら。相手がちゃんと殿下を任せられる女性なのか見極めたいし?
おし、ハニートラップ系とか、単に皇太子の地位に目がくらんだだけの女だったりとかで、再び殿下が傷つけられるようなことになったら困るし。
困る……よね?だってすさんだ心の王様が治める国じゃ、先行きが不安になっちゃうし?
「殿下、私は嫉妬したりいたしませんので」
殿下がショックを受ける。
「どうぞ女生徒にも目を向けてくださいませ」
「な、なぜだっ!側室を持てと言うのか!」
はい。そうですけど。何か問題でも?
真実の愛に目覚めたら、私との婚約を解消して結婚してくれてもいいし、私と結婚して側室として迎え、私が死んだ後に正妃にしてもいいし。
「将来、子供たちの乳母や教育係や世話係……信用できる者を作っていく必要がありますでしょう?」
「こ、こ、子供、シャリアーゼと俺の……」
殿下が顔を赤くする。
「そ、そうだな。うん、そうだ、シャリアーゼは、そんな先のこともちゃんと考えているんだな」
そんな先か。
私が死んだ先のことを考えれば、後継者争いでもめるのもいやだし、子供ができないうちに真実の愛を見つけてほしいところ。そして、私が、真実の愛とのお相手の子供の乳母や教育係になってもいい。
そうしたらどう寿命に影響するか分からないけれど。
「ちゃんと、シャリアーゼは俺とずっといることを考えてくれてる……子供の教育係のことまで……」
本当は違うんですけど。
女性に目を向けることで真実の愛を見つけられるかもしれないからね。
政略結婚するより幸せになれるよ。ただ、私は……婚約者として口出しさせてもらうから。
いくら真実の愛だからって、早死にする人は許さないし、殿下を利用しようとしてるだけの人も許さない。
……この翌日には少し心を落ち着けた殿下は学園へと戻って行った。
あとは、時が心を癒してくれればいい。
店長から聞いた、ジェフは庇ってくれただけだと言う話はジェフが捕まってから伝えようと思って伝えていない。
ジェフが嘘をついていたのか、真実なのか……私には分からないから。
「殿下からお手紙が届いております」
ん?
次の日には学園にいる殿下から手紙が届けられた。
手紙のやり取りは、メイとマーカスが直接間に立ち、他の者の目に触れないようにしている。
いったい何があったの?
慌てて手紙を開く。
『シャリアーゼ、朝食に苺が出たんだ。好きではなかったけれど、食べて見たらおもったよりも食べられそうだったよ』
ん?
んんん?いままで、こんな日常の一コマを書いたような手紙をもらったことがない。
苺が出た?食べて見たらそれほどまずくなかった?知らんよ、そんなこと書かれても。
はっ!もしかして!
「メイ、これは何かの暗号かしら?」
手紙に書かれた暗号の意味が分からなくてメイに見せる。
「え?暗号ですか?」
「そう。苺といえば、毒苺ムース事件があったでしょう?あの時は苺が嫌いで食べられなかった。ムースなら食べられた。それでムースに毒が混入されたわけで……」
メイがああとつぶやく。