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流れ

「……その話は取り調べでは言ったの?」

 もし、言っていたとしたらもっと開放までに時間がかかったはずだよね?

 誘拐された被害者だからと特に問題がないと判断されたのだろうし。

「いいえ……あの……」

 店長が口ごもると、チャンさんが熱量のこもった声で訴えた。

「ワタシたち、悪いことしてない、でも、これ言うと、疑われるかもしれない……シャリアーゼ様、ワタシたち信じてくれるか?」

 信じられるかどうか……って。

 付き合いは短いし、店長に至っては初対面だ。

 だけど、自分たちが疑われるかもしれないと思いながら、私にジェフは自分を庇ったと言いに来た。

 このまま誰にも言わず黙っていれば済む話なのに。

 信じるよ。話の内容が本当のことかでたらめなのかは分からないけれど。真実だと思って話をしてくれるのだと信じる。

 騙そうとして作り話をしようとしていないというのは分かる。聞いた後で内容の真偽を判断するのは、聞いた私の仕事だ。

「……信じましょう。ですが、あなた方は私を信じていいのですか?」

 聞いた話によっては、店長たちにとって悪い結果になってしまうことだってある。

 店長がうんと頷く。

「ジェフ様が、シャリアーゼ様なら必ず殿下を救ってくれるはずだと。そればかりか自分も救ってもらえるかもしれないとつぶやいているのを耳にしました」

 私がジェフを救う?

 最後にジェフが私に「ありがとう」と言ったのを思い出す。

 何がありがとうなの。救った?

 違うよ。私がジェフの犯罪をあらわにして殿下と引き離したんだっ。

「ですから……ジェフ様を助けてくださるかと……。シャリアーゼ様を信じてお話しします」

 店長の言葉に、違うと叫び出したかった。

 私は、確かに殿下の命を守ることはできたかもしれないけれど……。もっと他に上手くできなかったのかと思う。

 ジェフは裁かれるべきだろうけれど、それでも……。

「荷物を受け取りに国境へと向かいました。荷物を受け取り、王都へと向かって馬車で4日ほど進んでいたときです。王都の2つ先の街でジェフ様に引き留められました」

 店長が順を追って思い出しながら、なるべく事実を正確に伝えようとしてくれるのがわかる。

「荷物には、ジェフ様に頼まれた玉露や、玉露に関して記述のある書物を何冊かもありましたので、1日も早く受け取るために来たのかと初めは思ったのです……。シャリアーゼ様からの注文の品は殿下とのお茶会に使う予定だとも聞いておりましたので。そういった、日にちの決まっている行事に玉露が必要なのかと」

 それは違うとすぐに分かる。玉露は苦いから出せないとジェフが言っていた。

「とても焦った様子だったので、すぐにでも渡そうとしました。ところがジェフ様は馬車に乗り込み、人払いをさせて私と話がしたいと」

 そこで店長は額に浮かぶ汗をハンカチでぬぐった。

 呼吸が少し早いようだ。よほど話をするのに緊張を要する内容のようだ。

 いったい何があったの?

「ジェフ様は、玉露が到着する前に、どのようなお茶なのか調べるうちに、玉露からは宿茶という毒を作り出すことができると知ったとおっしゃいました」

 ん?

 知っていて玉露と作り方を記した本を店長に仕入れさせたわけではない?それとも知らないふりをしていたの?

「……それで、毒の材料と毒薬の作り方を記した書物を運んでいるとばれれば、私はおしまいだと。王都に持ち込もうとした罪で罰せられるだろうと……知らせに来てくれたんです」

 ……え?



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