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「食べられそうならどうぞ。体調が悪いと聞いたわ……大丈夫なの?」

「ええ」

「そう、それを聞けば、殿下もホッとするわ。原因は分かったのよ。遅延性の毒が夕飯に混ぜられていたの。ジェフは味見をしていたからその毒を摂取していたのでしょう。今、毒を調べているところだから。種類が特定できれば解毒剤も……」

 クッキーをつまもうと一つつまんで、すぐに取り落とした。

 どういうこと?

 今の今まで……寿命は、私の残りの寿命は15年だったのに、急に65年に増えた。

 私の寿命が65年になったとき、殿下の寿命は……1年になる、あれがぶり返したの?それとも私の寿命が戻っただけ?それならいいけど。

 殿下の寿命がもし、また1年になっていたら……。

 なぜ?

 考えるんだ。

 原因は、ここに来たこと。いえ、違う。

 ジェフに毒のことを話したこと?

 なぜそれで……?

 先ほど目にした東国の本。慌てて隠した理由は?

 待って、待って……。

 嘘だよね。

「ジェフ、そういえば玉露を飲んでみたいと思っていたの。出していただいても?」

 いつジェフは玉露を注文したの?

 工芸茶を私が頼むよりずっと前に玉露を手に入れていた?違和感はあった。

 玉露をそんなに昔に入手して取引しているなら、工芸茶だってジェフが先に手にいれてお茶会の席に持ってきても不思議じゃなかったのに。

 玉露を注文したのが私が工芸茶を注文したのとそれほど変わらない時期だったら……?

 いや、ジェフは私より前に店は利用していたのだから、私よりも少し前……。

 そう、思い出した。チャンさんが、玉露はそろそろ届くかもしれないと言うようなことを言っていた。

 あれは、……店長が行方不明になる少し前だったはず。

 もし、奪われた荷物の中にジェフが注文した玉露があったんじゃない?

 奪われて手に入らなかったとすると、どうしてジェフは玉露を飲むことができたの?

 ベットに近づき、ジェフが布団で隠した本を手に取る。

 ジェフは一歩も動かず抵抗を見せない。

 本には、訳した言葉が書いてあった。

 東国の本。

 忍者……。捕捉で説明してある。この国でいうところの、間諜、スパイ、密偵、殺し屋、暗殺者のような存在。

 ドキリと心臓が波打つ。

 間諜、密偵、暗殺者……不穏な言葉が並んでいる。

 パラパラとめくると、様々な忍者の道具についての説明があった。

 変わった形の道具……武器がたくさん描かれている。これも、あれも、それも。見慣れない武器。一見すると武器だと分からないようなものもある。

 そして、あるページに目が止まった。

 その瞬間、私の目からは涙が落ちる。

 ジェフの顔が見られなくて、本のあるページを睨み付けるように見続けて口を開いた。

「毒の入った苺ムース……。アーノルド殿下は毒に慣らされているけれど、毒の種類によっては耐性がないと言っていました。苺ムースにはその耐性がない毒が入れられていた。そして、毒を入れた苺ムースは、苺嫌いな殿下が唯一食べられる品。両方の情報を知っている人間はそう多くはないでしょう」

 ジェフの声が静かに耳に届く。

「ええ、そうでしょうね。両陛下ですら毒の種類に関してはご存知でも、苺ムースことは知らなかったと思います」

 じゃあ、誰なら知っていたの?

 殿下のそばに居ていつも一緒に過ごしている人物なら知っていた?

 例えば、側近……とか。


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