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食事

 部屋の中に戻ってソファに腰かけるとメイがお茶の準備を始める。

「メイ、今日は工芸茶はやめにしましょう。お代わり用に持ってきたお茶があるでしょう、そちらにして頂戴」

 メイが首をかしげる。

「せっかくです、工芸茶はジェフが戻ってからの楽しみにとっておきましょう」

 私の言葉に、メイがふっと微笑む。

「そうですわね。ジェフさんにも見せてあげないと。では、帝国産の茶葉にリンゴの香りを付けたアップルティーを」

 メイがてきぱきとお茶の準備を始める。

 部屋の中には護衛に侍女、それにマーカスが控えている。

「メイ以外は出てもらっていいかしら?」

 殿下の手を握ってお願いする。

 その様子を見たマーカスが笑った。

「邪魔しませんよ、どうぞどうぞ、仲良くやってください。全然気にしないんで」

 ありがとうマーカス。そういってもらえば、私と殿下が二人きりになりたいから人払いをお願いしてるって印象付くわよね。

 本当は、毒対策の相談をするためなんだけど。

 ……聞かれてしまえば意味がない。だって、誰が犯人の仲間なのか分からないのだから。

「メイ、控えの間にも同じお茶とお菓子を準備して頂戴。用があれば呼ぶから、皆さんは休んでいて」

 メイに命じると、お菓子という言葉に侍女たちが一瞬目を輝かせた。しかし、さすが王宮の人間。すぐに表情を引き締め、控えの間へと移動した。

「殿下、分かってるでしょうが、キスは駄目ですよ、ええ、キスしちゃうと、歯止めが効かなくなりますからね!」

 ニヤニヤとマーカスが殿下に耳打ちして控えの間へと消えていく。

 キ、キ、キス?

 ちょっと、何を言うのよっ。するわけないわよ。私たち、婚約してるけど、恋人同士とは違うんだからっ!

 顔を赤くして殿下もそうだよねと顔を見たら、私以上に顔を赤らめていた。

「あの、殿下……ま、ま、まずは、お茶をいただきましょうか……」

 キスなんていうから、殿下もめちゃ意識してるじゃないの。

 マーカスの馬鹿っ!もうっ!足の小指を椅子の脚にぶつける呪いをかけてやるっ。

 リンゴの香りを胸いっぱいに吸い込みながら、お茶を口に運ぶ。

 はぁー、美味しい。癒される。

 ……ああ、でも、少し気持ちが落ち着いたかもしれない。殿下の寿命があと1年と見えて心臓がつぶれそうだったけれど。

 マーカスのからかいが少しは役に立った?……呪いは解除。

「どうしましょうか、殿下」

「そうだな。ちょっと考えたんだが、もし、料理に毒が仕込んであるのならば、夕飯だと思うんだ」

「それはなぜですか?」

 殿下も落ち着きを取り戻したようで、分かりやすく話をしてくれる。

「朝食はパンに生野菜とフルーツにベーコンだから、混ぜにくいだろう」

「確かにそうね。パンやフルーツやベーコンが苦かったらすぐに分かるわね。……でも生野菜は?ドレッシングに毒を混ぜることだって」

 殿下が視線をそらした。

「……残してたのですね……」

「いや、だから最近は食べてたよ。でも、特に苦い野菜はなかったと思う」

 なるほど。野菜嫌いな殿下に、生野菜のサラダで苦い野菜を使うとは考えにくいか。余計に食べなくなるだろう。

 一流の料理人なら、食べやすい野菜……苦みの少ない野菜を選んで出すか。

「昼食はどうなのですか?」

 殿下がうんと頷く。

「昼食は学園の食堂で取るんだ。大鍋で作られた料理をカウンターで器に注いでもらう。肉料理は並べられたものを好きに生徒が取っていくセルフ方式だ。皇太子だからと特別扱いはされない」

 ちょっと想像してみる。

「並ぶならば、あと5人で殿下の順番だと分かるわけですよね?あらかじめ器に毒を仕込んでおくことはできるのでは?」

 殿下が首を横に振った。

「器は、自分でお盆に載せてカウンターに行くんだ。同じお玉をつかい、順に注いでいくだけ。怪しい動きをすればすぐにばれるだろう」

 なるほど。目の前で料理を提供するのに怪しげな動きはできないか。

 ……となると。

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