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おじさん

「殿下……コンラート様の言葉をよく思い出してください」

「え?」

「コンラート様はこう言っていましたよ?ジェフをないがしろにするなと。ジェフを大事にしろって忠告しに来たんですよね?返してくれと言いに来たわけじゃないですよね?」

 いらないなら返してもらう、ないがしろにしたら返してもらうと言っていたから、間違いないだろう。

 王弟殿下は、ジェフを大事にしろと。

 ちゃんと休ませろと言いに来たに違いない。

 殿下の側近として働くことを辞めさせるつもりならば、むしろ殿下には何も言わずにジェフに「私のところへ戻ってこい、陛下には私から話をつける」とでも言うだろう。

 まぁ、それにしても、分かりにくい言い方をなさる方だ。

 あれ?もしかして、私に対する「誘惑するつもりか」みたいな言葉も、言葉通りではなく深い意味が?

 ……ああ、あの言葉で男性の手に触れるものじゃないと遠回しに忠告してくれたのかしらね。実際失敗したと思ったわけだし。

 手相を馬鹿にするような言葉も、あれも忠告かな。

 ほんっと、分かりにくい言い方をなさる方だ!

 ……まさか、殿下はそんなめんどくさい血は引いてないですよね?「婚約者はおまえでいい」って言葉に裏の意味なんて……。

 あるわけないか。

「ああ……そう言われれば……、確かに、そういうことか……。あんなに疲れさせるまで働かせるなと苦情を言いに来たんだな」

 苦情……。

 殿下の表情が晴れ晴れとしたものに変わる。

 よかった。

「ありがとうシャリアーゼ。やっぱり俺のシャリアーゼはすごい!」

 いやいや。気がつくでしょう。アンドリュー殿下が、いろいろ気にしすぎて気が付かなかっただけで。

「しかし……俺のシャリアーゼが自分を誘惑しているなど……言っていいことと悪いことがある」

「殿下っ!私は誘惑していませんし、コンラート様も、そう思われることもあるから、手相を見るなどと社交の場でするなと忠告してくれただけですよ!あまり堅苦しく忠告すると口うるさいおじさんだと思われるかもしれないと思って、あのような言い方を……」

 殿下が目を見開いて驚いた顔をする。

「口うるさい、おじさん……ぶはっ。おじさんって、ははははっ」

 あ。

「ということは、同じ年のジェフもシャリアーゼにとってはおじさんに見えてるってわけか!お兄さんじゃなくて、おじさんっ!あははは、この場にジェフはいなくてよかったよ」

 腹を抱えて笑い始める殿下。

「いえ、あの、殿下が叔父上と呼ばれるので、その……立場としての叔父さんであって、年齢的なものでは……えっと」

 メイがにやりと笑っている。笑いをこらえているの?

「メイ、おじさんだなんて私思ってないわよ?」

「お嬢様、思ってなくても事実ですから」

 はぁ?

「ジェフさんは28歳でしたか?29歳でしたか?平民では15,6で子供を設ける人も多くはありません。15歳で子供を作れば、29歳ともなれば14歳の子供がいても不思議ではないのです。つまり、シャリアーゼお嬢様とジェフさんは親子ほど年が離れているのですから。おじさんというのは事実なのですわ」

 ……メイ……。なにかジェフに恨みでも。

「ああ、そうか。貴族は学園卒業してから結婚するのが普通だからなぁ。男の場合はそれから数年仕事の修行をしてからという場合も多いから20代半ばが多いか?そうか。平民じゃ、そのころには立派な父親か……ぷっ。おじさん年齢なのは事実……ぷぷぷっ」

 殿下はそのあともしばらく笑い続けていた。

「あ……」

 自分の手を見ると、あと6年と激減した寿命が15年になっていた。

 いつのタイミングでどうして戻ったのか。謎ばかりだ。

 手相が駄目だったのか。何だったのか。

 そういえば、手相に意識を集中していたから王弟殿下の寿命を見逃してしまったわ。



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