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玉の輿線

「わ、私、手相はそ、その、恋愛運が知りたいだけで、そ、そんな意図は……け、結婚線とかその……」

 少女らしい理由で占いを楽しんでいるだけなんですアピールをする。

「私の運命の人にでもなりたいのかな?」

 王弟殿下がクスリと笑った。

 あれ?恋愛運が知りたくて王弟殿下の手相を積極的に見たってことになる?

 またもや失敗してる!

 もう、私の馬鹿!

 もっといい言い訳思いつかなかったの?

 どうしよう、どうしよう、

「いいですよ、アーノルドに愛想が尽きたら、いつでも私のところに来るといい。そうそう、ジェフも必要ないと言うなら、私がもらいますから。それを言いに来たんですよ。ジェフをないがしろにするなら、いつだって、返してもらいますから」

 王弟殿下が、殿下の肩をどんっと力を入れて叩いて部屋を出て行った。

 殿下がのろのろとした動作でソファに座った。

 メイが慌てて王宮の侍女たちと一緒になって、お茶とお菓子を入れ直してくれた。

 私は、すぐに手を付ける気になれずに毒味がすまされたお茶の湯気をぼんやりと見ていた。

 私の寿命が残り6年になってしまった。どうして……。手相が原因なのだろうか。恋愛運を見たかったという言い訳は通じなかった?

 これから手相を一切しなければ問題ないの?

 私もショックを受けているけれど、殿下もかなりショックをうけているようだ。

「殿下……その」

 まさか私が王弟殿下を誘惑しようとしているなんて誤解はしていないだろうけれど。

 それでも、何か寿命が戻る糸口にならないかと、必死に言葉を続ける。

「殿下、見てください。これが私の結婚線……。1本だけなんです。結婚を意識する相手は生涯一人なんですよ」

 もちろんそれは殿下ですと口にはしないけれど笑顔で伝える。……まぁ、相手が殿下とは実際は分からないんだけれど。手相を知らない人相手なら適当なことを言っても勝手に解釈してくれるだろう。

「それに、これ。この線まで伸びた結婚線は玉の輿線というんですって。公爵令嬢の私の玉の輿の相手は、殿下しかいないでしょう?」

 私自身がメイに、玉の輿っていうほど生活が向上する相手じゃないと否定したことは内緒だ。

 殿下が私の手を取って、結婚線を指でなぞった。

 それから自分の手の結婚線を確認する。

「俺も……シャリアーゼ一人だ」

 うん、それも私とは限らないんだけれどね。

 ……このまま寿命が回復しなければ私は20歳で死んでしまうし。

「シャリアーゼしかいない……だから、離れて行かないで……」

 今にも泣きそな顔の殿下の両手を握る。

 ああ、そうか。タイミングが悪いんだ。

 私が王弟殿下を誘惑しようとしているなんて、普段なら信じることもないだろうけれど。今この時は……ジェフが辞めると言ったことにショックを受けている殿下にとって、人が離れて行こうとしているという少しの不安も大きくなっちゃうんだ。

「大丈夫。手相を見たでしょう?」

 メイは結婚線がなかった。だけど、殿下にはしっかりした線が出ている。

 私じゃなかったとしても、運命の誰かはいるから。

「それに、ジェフだって、しっかり休んで体調が回復したらケロッとして戻ってきますよ」

 自分で毒味役をするなんてよほど殿下のことを思っていなければできない。

 寝る間も惜しんで文句ひとつ言わずに仕事を続けるなんてできない。

「ジェフは……」

 殿下が下を向いたまま口を開いた。




私には、なかった。玉の輿線……( 一一)

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