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いろいろなお茶

 3日後。

 チェンが再びやってきた。

「頼まれた、お茶……今いろいろと取り寄せているところ。店にあまり種類はないけど、いくつかお持ちした」

 チェンがテーブルの上に小さな蓋つきの陶器の器を2つ置いた。

「この国のお茶と違う、好み別れる、こっちは茉莉花茶。もう一つは桂花茶」

 2つとも聞いたことが無いお茶だ。

「試飲してもよろしいかしら?」

 私の質問にチェンが頷いたので、メイにお茶を入れてもらう。

 茉莉花茶をメイが入れると、チェンがまず毒味をし、次にメイ。

「どうぞ、シャリアーゼお嬢様」

 そして、やっと私の前にカップが置かれる。

「花の香り……?」

 まずは立ち上る香りにびっくりする。

 ハーブティーの類もいろいろと飲んでことがある。すっきりした香りに、フルーツの甘い香りのする紅茶もあった。

「マツリカの花の香。ジャスミン茶とも呼ばれる」

 チェンが見守るなか、ジャスミン茶を口に運ぶ。

「ん?」

 拍子抜けとはこのことだ。

 強い香りはするけれど、苦みもなくあっさりして飲みやすい。

「おいしい」

 ただ、どんなお菓子に合うのかは分かりにくい味だ。飲み馴れていないからかな。

「そうですよね。思ったよりおいしいですよね?ジェフは東の国のお茶は苦くて駄目だったと言っていたのに」

 メイの言葉に、チェンがフォローの言葉を口にした。

「ジェフさん、高いお茶飲んだのかも。高級茶の一つ、玉露や、抹茶は苦い」

「高くはないお茶?」

 メイが眉根を寄せた。

「ち、違う。誤解。公爵家に、安いお茶、王室には高いお茶を選んだ違う」

 チェンが慌てた。

「ジャスミン茶、味問題ないなら、工芸茶を勧めるつもり。女性に人気、今、国から取り寄せてる手配した。ジェフに頼まれた玉露と一緒かその後に届くはず」

 メイが、表情を緩めて首をかしげる。

「女性に人気のお茶?……となると、お茶会で提供するには殿下の口に合うか分かりませんね……」

 チェンが首を横に振った。

「味は、ジャスミン茶。見た目が違う。工芸茶は綺麗で可愛い」

 綺麗でかわいいお茶?

 さっぱり分からないという顔で私とメイが顔を合わせる。

「チェン、ありがとう。値段だけで品を選ぶ人間も多い中、ちゃんと相手が好みそうなものを選んでくださるのね」

 到着を楽しみにしてくださいと言われたので、それ以上工芸茶について尋ねるのはやめた。

 そして手相の翻訳を進め、間の休憩でもう一つチェンが持ってきた桂花茶を試飲する。

 ……飲む前に、もう心は決まった。

「メイ、次のお茶会にはこのお茶をお願い」

「はい。わかりました。ではこのお茶に合うお菓子を探します。チェンさんも心当たりがあれば教えてください。2か月ほど先になります。いえ、次はジェフさんが準備するんだったから、4か月後……?その次は8か月後?ああ、いろいろなお茶を紹介してもらっても披露する機会がっ!」

 いつの間に、メイはそんなにお茶会のお茶を準備するのに気合を入れるようになったのか……。

「もしかしてジェフさんは次に玉露を出すつもりじゃ……チェンさん、到着は2か月以上かかるということはないですか?」

 チェンさんが、苦笑いしている。

「順調なら、2か月もかからない、到着の予定」

 このまま到着が遅れるのを願いだしそうなメイに声をかける。

「メイ、次のお茶会にその玉露というお茶を出すと決まったわけではないでしょう?苦いお茶を出すとは思えないわ」

 私の言葉にメイがはっとする。

「あ、そうでした。……いえ、むしろ苦いお茶を高いという理由で出すのであれば、私の勝利……くふふ」

 メイ、心の悪魔的声がダダ漏れですよ。しかしさから、いつから勝負になっているのか……。

 メイはなぜそれほど対抗意識を燃やすのか。

 ……ジェフも対抗意識を持ってるのかな?粛々と仕事をしているだけですとか言いそう。

 メイが一人で盛り上がってる姿を見て「フッ」って笑ってそう……。くっ。私のメイを馬鹿にしたら、足が臭くなる呪いをかけてやるんだから!


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