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様子見の1年

 部屋に戻り、どうしたらいいのか頭をひねる。

「お嬢様、大丈夫でございますか?まだ気分が悪いようでしたらお食事はこちらへ運びましょうか?」

 侍女のメイシーが部屋に戻ったきりずっと難しい顔をして考え事をしている私に声をかけてきた。

「ねぇ、メイシー」

 メイシーはお母様が一番信頼していた侍女の娘だ。メイシーのお母さんが亡くなってからは唯一私の寿命が見える秘密を知っている人物。私の10歳上。

「今日、皇太子殿下と婚約の書類を書いたでしょう?そのとたん私の寿命の残りが10年に縮んじゃったのよ」

「なっ、何ですって?お嬢様の寿命があと10年?」

「そう。婚約したのが原因だと思ったから、お父様に婚約はなかったことにしてもらおうと思ったの。でも、婚約を解消すると、どうもお父様も私も寿命があと3年になっちゃうのよ……」

 ひっと、小さく息をのんでメイシーが口元を抑える。

「そんな……あと3年だなんて……」

 今にも泣きそうなメイシーを慰める。

「ううん、婚約解消は取りあえず辞めたから、お父様の寿命はあと40年。私は相変わらずあと10年……」

 ほっと息を吐きだしたメイシーがうんと頷いた。

「それで、考え事をしていたのですね。どうしたら寿命を元に戻せるかと。そうですね……。お嬢様とご主人様の寿命が同じ3年になったということは、同時に亡くなるのでしょうか?」

 ん?同時に?ああ、その可能性もあるのか。

 子煩悩なお父様は、妻に続いて娘の私まで失って傷心で弱って後を追うように亡くなるのかもと思ったんだけど。

「例えば、馬車で移動中に事故に遭うとか……」

「なんで皇太子との婚約を解消したら事故であと3年の命になっちゃうのよ……」

 そんなの理不尽すぎるわ。

「……ねぇ、3年過ぎて改めて婚約解消するとなったら、どうなるのかしら?」

「そう言えばそうですね……。起こるはずだった事故が回避できたあと、どうなるんでしょうね?」

 メイシーが首を傾げた。っていうか、事故決定みたいな言い方したね。

 ……3年すぎてから婚約解消してもらう……なんてできるのかな。

 様子見は1年と言うことにしてしまった……。3年に引き延ばしてもらうか?

 三年後は、13歳か。殿下は一つ上の14歳。

 まだまだ新しい婚約者を迎えるのに十分若いわよね。

 婚約解消してもらっても、殿下に問題はないよね。まぁ、私はその後縁談は難しいかもしれないけど……。

 死ぬよりはまし!

 それに伯爵家の次男だとか男爵家の三男だとか、むしろ政略結婚じゃなくて「真実の愛」が見つけられちゃうかも!

 あら。3年後に婚約解消、これ素敵じゃない?

 まぁ、様子見の1年間に何か変化あるかもしれないし……。


 

 と、思っていたこともありました。

 原因不明、改善策見つからないまま、あっという間に1年が経った。

 もちろん、手をこまねいてただ時間が過ぎるのを待っていたわけじゃない。

 この1年間、いろいろと試したよ。

 様子見を3年に引き延ばしてもらおうとしたら、寿命が縮んだ。

 様子見を伸ばしてもらうのは諦めた。

 婚約解消を、こちらからじゃなくて皇太子殿下の方からしてもらおうと、病弱のふりをしたら寿命が縮んだ。

 この手も諦めた。

 国外に逃亡しようとしたら、寿命が縮んだ。

 諦めた。

 影武者でも用意しようかと思ったら寿命が縮んだ。

 諦めた。

 八方ふさがりとはこのこと?

 


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