対決!
「シャリアーゼお嬢様、どうですか?その……あちらの方は」
屋敷に戻り、ドレスを脱ぐのを手伝いながらメイが尋ねた。
「増えたわ」
メイが、寿命のことを聞いているとすぐにわかったので返事を返す。
「本当ですか?」
「1年増えて13年」
補足説明をすると、メイはがっかりしたような声を出す。
「……そうですか……」
でも有能なメイはすぐに気を取り直す。
「ですけど、減ったわけじゃないんです。このままちょっとずつ……そうですね、1年で1年増えれば、ずっと死にませんよね!」
「確かに。1年で1年延ばすことを目標にすれば100歳でも200歳でも……って、それは生きすぎでしょう!」
私の突っ込みにメイが笑った。
私もおかしくなって笑う。
メイの言う通りだ。減ったわけじゃないし。
「ありがとう……」
メイに聞こえるか聞こえないかの声でつぶやく。
本当に、私はジェフにだって負けないいい侍女を持った。
「そういえば、お茶とお菓子が用意されていましたが、王宮では念のため何も出さない方針から切り替わったんでしょうか?それとも、犯人がつかまったから心配がなくなったんですか?」
メイもお茶会にはついてきて壁際に控えているから、見ていたんだ。
「いえ、あのお茶とお菓子は側近のジェフが自分の足で王都の有名店に買いに行き、誰にも触れさせずに出してくれた物だったのよ。殿下と私のために……有能よねぇ」
メイがふんっと鼻息を吐き出す。
「次のお茶会では私が買いに行って、私が毒見をいたしますわ!」
メイ?いきなりどうしたの?
「どこのお店のお茶とお菓子だったのですか?私はそれよりもおいしい物を準備いたしますっ!」
興奮気味にメイが宣言した。
「どこの店か聞き忘れてしまったわ。確か有名なカフェと、その前にあるお菓子屋だと言っていたけれど……」
「なるほど。それならば、候補は2つに絞られますね」
「え?それだけで分かるの?」
メイが胸を張った。
「侍女のお菓子情報ネットワークを侮ってもらっては困ります」
侮るも何も、そんなものがあるのすら知らないけれど。
「見た感じ、シンプルな色味のクッキーのようでしたから、きっと北通りの店の物でしょう。まずくはありませんが、王都にはもっとおいしいお菓子を売っている店はいくらだってありますわ!」
メイがふふっと勝ち誇ったように笑った。
かなりおいしかったんですけど。
今さらメイにお店の名前を聞き出して、買ってきてほしいなんて言えそうにない雰囲気……。
「お願いするわね?殿下には次回はお菓子をこちらで用意させてもらうと手紙を書くわ」
……こうしてなぜか、お茶会は王室VS公爵家の使用人によるおいしい物紹介タイムとなっていった。
私と殿下が食べる前の、毒見と称して……メイとジェフ。
それから選ばれた使用人たちがお茶会のたびにお菓子を堪能するようになるとは……その時の私は知る余地もなかった。
いやいや、毒殺を警戒した緊迫した事態じゃなかったんですかね?
どうして、そうなった。