表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/79

何か理由を

 そういえば、殿下と婚約したあとにすぐに始まると思っていた王妃教育なんだけど、公爵家で学んだことと重なる部分がかなりあるようで、新しく増える教育内容は国の機密にも関わってくることや、王妃から次代の王妃へと直接伝える特別なことなどで、婚姻1年ほど前から行うそうだ。

 ってことはよ、私が殿下と婚約解消したとしても、新しく迎える婚約者の王妃教育は最短1年で終わるわけよね。

 だったら、殿下が例えば25歳で新しく婚約者を迎えても殿下が26か27になるころには結婚できるってことよね。

 別に遅くないよねぇ。だって王弟殿下はまだ婚約者もいらっしゃらないんですよね。

 ってことはよ?私の今の寿命は残り11年。22歳で死ぬ。この運命から逃れたあとに婚約解消したとしても、アーノルド殿下の人生を壊すようなことはない。

 まぁ、私は完全に行き遅れになるから、新しい殿下の婚約者……のちの王妃付きの教育係や助言役などの仕事をするのもいいかもしれない。そうすれば殿下の寿命チェックも続けられるだろうし。

 あ、でも新しい婚約者に不審な目で見られるかな?

 殿下にべたべたしたりしたら。べたべたするつもりはないけど……触れる理由が必要だわ。

 ……そうだ、本で読んだ東の国に伝わる手相とやらを勉強してみようかしら?

 そして、手相占いが当たると評判になれば、病気の兆候などないか定期的に手相を見させてもらうという言い訳が立つのでは?

 確か手相で分かることは「性格」「経験」……そして「運命」らしい。

 手のしわの長さや位置を見れば長生きできるかどうかが分かるとか。しわの状態から健康状態を見る「手相診」というのもあるそう。ああ、これ以上は専門書を取り寄せて勉強しなければわからないけれど。

 もしかして、寿命が減って死にそうになってるから気を付けてとは言えないけれど、「そういう手相をしているから気を付けて」と言うことなら自然よね?

 うん。いいんじゃない、手相!

 東の国の手相の専門書を取り寄せよう。残念ながら東の国の文字でかかれた本を読むことはできないから、翻訳してくれる人も探さないといけないわね……。上手く見つかるといいけれど。

 お父様に頼もう。命を狙われるのなら、手相で運命を知るようになりたいとでも訴えてみれば大丈夫のはず。

「シャリーアゼ、シャリーアゼ」

「え?どうかなさいましたか、殿下?」

「いや、本当に大丈夫なのか?名前を呼んでもすぐに反応が帰ってこなかったが」

 しまった。考え事していて気が付かなかった。

 また緊張していると思われているかな。

 逃げられる前に寿命をチェック。

 よし、今日も殿下は長生きさんと出ている。

「ああ、申し訳ありません殿下。私が乗馬を始めたころのことを思い出していました。初めて私を乗せてくれた馬は、ベテランの牝馬。バーバラという名前でしたわ」

 過去形で話をしたことで、殿下はすべてを察したのだろう。

「そうか。……辛いことを思い出させてしまったか」

「いいえ、1年前にバーバラは死んでしまいましたが、素敵な思い出をたくさん残してくれました」

 寿命は見えていた。見えていた通り、老衰で死んでいった。

 悲しかったけれど、でも。寿命だったのだ。十分長く生きて死んでいった。

 いっぱい撫でて、お話して、最後まで思い出をたくさん作ることができた。

 できることは全部した。

 だから……。

 突然の事故だったわけではない。防ごうと思えば防げたというわけではない。

 バーバラも……病気で亡くなったお母様も。

「最後の、最後まで……後悔のないように一緒にいることができたので、私は……満足して……」

 あれ?おかしいな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ