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助言を受けた殿下

 ソファから立ち上がるふりをして、そのまま床に手をつく。

「ああっ!」

 スカートのすそを踏んづけて転んだふりをした。

「だ、大丈夫かシャリアーゼ!」

 慌てて殿下が戻ってきて、私に手を差し出す。

 うん、うん。やっぱりね。

 殿下は婚約者なんて誰でもいいと、私に対して冷たい言葉を口にするけれど、決して冷たい人ではない。

 婚約したからには、ちゃんとエスコートをしてくれたり、私の命が狙われているかもと思ったら、危険から遠ざけようと婚約解消を提案してくれたりもした。

 だから、こうして倒れれば、手を差し伸べてくれると思った。

 作戦がうまくいき、思わずニヨニヨしちゃう顔を引き締め、膝をついたことを恥ずかしがっているような表情を作って、殿下の顔を見上げる。

 にこりと笑って、殿下の手を取ろうと手を伸ばしたところ。

「シャリアーゼを助けてやってくれ」

 殿下がすっと手引っ込めて、壁際に控えていた王宮侍女に声をかけた。

 な、なんで?

「だ、大丈夫ですわ、殿下……」

 演技だもの。侍女の手など借りなくても立ち上がれる。

 立ち上がって、殿下の顔を見る。

 気のせいなんかじゃない。

 私は、殿下に距離を置かれている。突然どうして?

 まさか、触れると寿命が見えるということがバレた?

 サーっと青ざめ、背中に冷たい汗をかく。

 お母様に言われた。あと何年で死ぬ、あと何年しか生きられないなど、人は知らない方がいいのだと。

 人は死を恐れる。だから、死が見えるシャリアーゼは人から避けられるだろうと。死神だと噂されてしまうようになるかもしれないと。

 だから、お父様すら知らない。

 お母様の命があと1年だと分かった時にも。お母様に口止めされた。

 絶対に言ってはだめよと。ちゃんとあとどれくらい生きられるかはお医者様がお父様に伝えるから……それまでは死んじゃうなんて言ってはだめ……と。

 そして、お母様以外で私の能力を知っている侍女のメイには、見えた寿命は言わないようにと言われている。

 メイにもお母様は絶対シャリアーゼに尋ねてはだめと念押ししているので、メイもきかない。……まぁ、メイは安定の長生きな数字で変化はないので、言う必要も感じないんだけどね。もし、突然0とかになったら流石に「今日は家にこもって絶対に外に出ないで!」くらいは言っちゃうかもしれないけど……。

 ……そう、もう知っているのはメイだけなのに。

 どうしてバレたの?私とメイの会話を盗み聞きされた?

 公爵家では、自室でしか話をしていないけれど……。

 あの毒苺ムース事件の後、私の命が狙われている可能性を考えてお父様が部屋の前に立つ護衛を増やしたのは確かだけれど。

 ドアの外に声が漏れてた?

 まさか……。でも、それ以外に考えられない。メイが誰かに言うわけないし。

「だ、大丈夫なわけないじゃないか。やっぱり叔父上の言っていたことは本当だったんだな……」

 は?

 叔父上って、王弟殿下?

 なぜ、王弟殿下が私の秘密を……?

「シャリアーゼとあまり親しくするなと……」

 へ?

「俺のことは苦手だけど無理をしている……無理をさせるなと……」

 あ。

「初めて会った時のように突然意識を失うようなことはないからと、お前のことが好きになったわけじゃないんだから、いい気になって近づきすぎるなって……」

 そうでした。初日、寿命が短くなったことにショックを受けてぶっ倒れたんです。

 その理由がアーノルド殿下と会って緊張したからってやつだ。

 いやいや、何てこと言ってくれるの、王弟殿下!

 私がまた倒れたりしないかと身を案じての言葉だとは分かるけれど……。

 言い方!

 そういえば殿下は前も、王弟殿下の「美人」だという言葉に傷ついていたことがあるけど、王弟って言葉選びがへたくそなタイプ?


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