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婚約する?しない?

短編でフラグ置いたのにそのままになっちゃったやつ回収しつつ話を広げます。

 10歳の誕生日の1か月後に事件は起きた。


 私は、どういったわけか、残りの寿命が見える。余命と言った方が正しいだろうか。

 あと生きられる年数が見えるから、現在の年齢と足せば死ぬ年齢が分かるので寿命と言っても差支えない?

 と、そんな些末なことは置いといて。

 寿命が分かることは事件ではない。まぁ生まれた時からなのでね。

 事件は……。

「これで婚約が成立した」

 公爵令嬢の私と、皇太子殿下との婚約調印書に署名したその瞬間……。

「ひゃぁーーーっ!」

 思わず、白目をむいてぶっ倒れた。

「シャリアーゼ、大丈夫か!」

 お父様が慌てて駆け寄ってきた。

 だ、大丈夫じゃないです……。

 口から泡をぶくぶく吐かなかっただけでも偉いと思ってください。

 私、皇太子と婚約したら、残りの寿命があと10年に減ってしまいました!

 まだ、あと70年……80歳まで生きられるはずだったのに。

 署名したとたんに、残り10年……20歳の若さでこの世を去ることになってしまいました……。

「なんだこいつ?病弱じゃねぇよな?だったら婚約破棄もんだぞ」

 皇太子の声が聞こえてきます。

 婚約破棄、是非ともお願いします!

「いえ、シャリアーゼはいたって健康でございます。きっと、皇太子殿下との婚約ということで緊張していたのでしょう」

 ち、違うわ!お父様!そうじゃないの!

「そんなに俺と婚約できたことが嬉しいのか?そりゃそうか。王妃になれるんだもんな」

 王妃になんてなりたいなんて一度も思ったことがない……それよりも……。

 死にたくなぁぁぁい!


「お父様、やはり私に王妃など無理ですわ!婚約を解消してくださいまし!今ならまだ婚約発表もしておりませんし、そこまで大事にはなりませんでしょ?」

 意識を取り戻してすぐ、お父様の執務室へと足を運んだ。

「大丈夫だよ。シャリアーゼは優秀だ。王妃教育も難なくこなすだろう。心配しなくても大丈夫」

 お父様が私を安心させようと笑顔で抱きしめてくれた。

 ……いや、そう言うことじゃなくて。

「ち、違うんです、殿下と私、合わないと思うんです、だから、婚約は無理です!」

 寿命が見えることは言えない。亡くなったお母様との約束だ。

 人は死を恐れる。

 人の死を予言するかのような行いは、悪魔だとか死神だとか言われて苦労するだろうと。

 お父様も知らない話だ。

 ……私自身の寿命と、触れている相手の余命が見えて寿命が分かることは。

「なるほど。シャリアーゼは殿下が好みじゃないということだな。……うむ……」

 お父様がちょっと考える顔になった。

 よし、もう一押しだ。

「どうしてか、その、殿下の近くに行くとぞわぞわとしてしまって……」

 お父様が私の顔を見た。

「生理的に受け付けない……というやつか?」

 こくこくと慌てて頷く。そうそう、そういうことにしよう。

「それで、あの、我慢していたのですが、倒れてしまって……」

 本当は、寿命が減ったのが見えて、ショックで気絶したんですけどね。

「なっ、なんということだ。シャリアーゼ……そこまで我慢させてしまったなんて……。分かった、殿下との婚約は解消するよう陛下にお願いしよう。何、病弱を理由にすれば問題にならないだろう。目の前で倒れたのだからな」

 やった!これで、寿命が延びる!いや、元に戻るだけだけど!

 残り10年に減ってしまったものが、残り70年に戻る! ふふふーん!

 浮かれて自分の手を見ると、寿命が表示された。

 3。

「ひえぇっ!」

 さ、さ、さ、3ですとぉ!

 どういうこと?10年だった寿命が、さらに縮んで3年になっちゃったわ!

 お父様が突然叫び声をあげた私の頭をなでる。

「大丈夫かい?」

 触れた相手の寿命も見るので、お父様の寿命が目に飛び込んできた。

 ひえぇ!お父様の残りの寿命も、40年あったはずなのに3年になってしまっている。

「ま、ま、ま、まってください、あの、お父様……婚約解消は……その、もしかしたら……」

 どうしよう。

 歯がガチガチと鳴ってかみ合わず、うまくしゃべれない。

「待つ?いや、これ以上シャリアーゼが辛い思いをすることはないんだよ?」

「いえ、もしかしたら、緊張してぞわぞわしてしまった……だけかもしれないので、しばらく様子を……その、陛下にはお試し期間ということで、えっと、発表や何やらを待っていただいて……あの……。会ううちにぞわぞわもなくなるかもしれませんし……」

 お父様が首を傾げる。

「本当に、それで良いのかい?無理をすることはないんだよ?」

「大丈夫ですわ」

 強張る顔で必死に笑顔を作る。

「わかった。シャリアーゼがそう言うのであれば、陛下に婚約お試し期間を1年設けてもらおう。まぁ、突然倒れてしまったので緊張で倒れるようでは王妃は務まらないだろうと。今後様子を見るのも必要だと言えば分かってもらえるだろうからな」

 3の数字が10に戻った。

 お父様の3の数字も40へと戻る。

「ありがとうございます。お父様」

 よかった。

 ……って。

 全然良くないわ!

 70年の私の余命が、たった10年になっちゃったのよ!

 皇太子と婚約したことが理由だってはっきり分かってるから、婚約を解消すれば元に戻るかと思ったら。

 婚約を解消すると余命が3年にさらに縮むってどういうことよ!

 ど、う、い、う、ことよっ!

 うぐぐぅ。

ご覧いただきありがとうございます。

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