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少年の旅立ち

 神楽島が出現し続けて現在。


 ある家の一室。

 セットした目覚ましより目を覚ました少年。しばらく天井を無心に見続けて、布団から体を起こす。朝のせいなのか、それとも別の気持ちなのか、その表情は暗い。


「……今日、ですか」


 少年の名は白尾 真白。

 白尾神社の息子で今年で10歳になる。

 白が混じった艶のある黒髪。小学生の平均よりも背が低く、無垢な瞳と可愛らしい顔と肌をしているが、れっきとした少年男子である。


 しかし、その表情は沈んでいた。まるで今日と言う日が来て欲しくなさそうだった。


「……」


 やがて布団から出て、毎日やっている日課を行おうとしたが、


「……あ、そうだった。神棚は向こうに送ったんだ」


 真白はいつも布団から出ると、神棚に一日の無事を拝んでいた。その神棚は今はなく、この部屋にあるのは真白本人と布団と大きな旅行カバンだけ。それ以外あった物はある場所に送った。


 そのことに気付いた真白は仕方ないと言う顔で布団を片付けて、朝の身支度を始めた。


「まだ時間がありますね」


 身支度を終え、壁に備え付けられている時計を見て、本来起床する時間より一時間早いことに気づく。


「……何と言うか、長く感じます」


 ふと、視線を落とし、己の手の甲を見る。そこには白い紋章が浮き出ていた。


 この紋章は数年前に突然現れた神楽島にそびえ立つ神の塔に挑戦する者の証。

 真白は史上初の最年少の挑戦者に選ばれたのだ。

 これから行く場所は周り全てが年上の人達がいるため、心細く不安であるが自分が行く行かないを選んでも結局はあの島に行くことは決まっている。

 そうように国が決めたのだから。


「……考えても仕方ありません。とりあえず案内書の確認をしておきましょう」


 そう言って、カバンから以前届いた『神楽島案内書』と書かれた本を読み始めた。


 ☆


 読むことに集中しているといつの間にか予定していた時間近くになっていた。

 旅行カバンを持って部屋を出る真白。向かった先は家族が集まる食卓のある部屋。辿り着き部屋の戸を開けると、そこに先客の貫禄のある祖父、白尾 緑と人のよさそうな顔の白尾 蒼太がいた。


「おはようございます」


 二人は真白が入ってきたことに気付き、返事を返す。二人の表情はあまり良くなかった。

 そんな二人とは別に真白は食卓を挟んで蒼太の目の前の座布団に座った。


「……昨日は眠れたかい?」


 蒼太がそう尋ねる。

 寡黙な祖父はともかく、いつも明るくさわやかな父なのだが、今日は表情が涼んでいる。今日は自分たちの子が神楽島に行ってしまうからだ。


「……いいえ。夜中に何度か目を覚ましてしまいました」


「……そうか。そうだよね。今日が神楽島に行く日だから、ね……」


「……はい」


 これ以上会話は進まなかった。二人の間にいる緑もチラチラと真白を見ているも喋ることはなかった。

 家族なのに謎の気まずさが居間を支配する。


「皆、おはようございます。朝食の準備が出来ましたよ」


 そこへ入ってきたのは朝食を乗せたトレイを持った、若々しい容姿の母、白尾 朱音だった。

 赤音がトレイに乗せた分の朝食を食卓へ移すと、すぐに別のを取りに部屋を出ていく。


「お母さん、僕も手伝います」


 そう言って、真白は朱音の後を追って部屋を出る。

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