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5.異世界人に会う

「マリン。今日は授業を休んでもらって悪いね。私の予定の関係で今しか時間がないんだ。」


サンライは、いつも忙しい。

なぜかは、よく分からない。

でも大体は、出張に行っていて、学校に来るのは月に一回あるかないかだ。


たまにしか会えないのは寂しいけど、帰ってきた時はいつも私に会ってくれるし、お土産もくれる。

だから、大丈夫。


月曜の午前中、他の生徒たちは授業中だ。

学校を出て寮の方へ向かう。


異世界人は、寮にいたのね。

知らなかったわ。


寮のロビーには転送機と呼ばれる、魔法で作られた装置がある。

装置といっても、床に魔法陣が書かれているだけで、その上に乗って魔力を使うと緑色に光り設定されている場所に瞬時に行くことができるものだ。

その転送機で最上階の3Fまで行くと、一番奥の部屋に向かった。


ノックをして中に入る。

部屋には外から鍵がかけてあった。


魔法の鍵なので、入出許可がある人物がノックすると、鍵が開くシステムになっているようだ。


部屋の中に入ると、結界が張ってあることに気づいた。

普通なら結界は外からの攻撃を防ぐためにあるものだけど、これは中からの攻撃を封じるものだった。


この厳重な部屋の管理。

異世界人は、どんな人なの?


私は、不安な気持ちを押し殺して、先に進むサンライの後に続く。


寝室へ入ると、その異世界人がいた。

その異様な状況に驚いた。


異世界人は、ベッドに座り、窓の外を見ていた。

ただ、その手足には枷がつけられていた。

枷のくさりは、ベッドの横にある大きな鉄球に繋がっていた。

その鉄球はおそらく私の腰の高さくらいあると思う。

これじゃ、重くてあまり移動ができないだろう。

そして、その枷と鉄球には、ドラゴンにつけるものと、同格の拘束魔法がかけられているようだった。


異世界人の頬はこけ、髪がぼさぼさだった。


異世界人は、茶色い髪をしていた。

ナッツ色の髪の毛の私より、深い茶色だ。

そして、肌の色も同じように茶色かった。

でも、髪の毛の茶色よりも薄い。


人間の受ける扱いじゃない。

ひどい。


「サンライ。これはどういうことなの?

この枷を取ってあげなきゃ。」


私は、サンライに助けてあげてほしいことを伝えた。


「私も取ってあげたいんだ。

しかし、初日にかなり暴れてな。

このままじゃ目を離した隙に、町ひとつくらい破壊しかねないと思って、このような枷をしているんだ。

初めは、帰せと言っていたが、今は諦めたようでおとなしくしている。」


サンライは、表情ひとつ変えずに淡々と話した。


「そんな、こんな状態じゃ説得なんてできないわ!」


私は怖かった。

もし、サンライに拾ってもらわなければ私もこうなっていたかもしれない。


「…なら、まずは暴れないという契約を取り交わしてくれ。

私はそろそろ時間だ。

マリン。少しこちらで話そう。」


サンライに呼ばれ、異世界人のいる寝室をあとにする。

居間に来ると、私をソファに座らせる。

サンライは、私の前に片膝をついて話した。


「魔王を倒せば、女神様からなんでも願いを、一つだけ、叶えてもらえるんだ。

もちろん、魔王を倒すことは、ほどんと不可能で雲を掴むような事だが、あの異世界人がいればかなり可能性は上がる。

…君は両親と島で、また暮らすことだってできるんだ。」


サンライは、訴えかけるように言う。


「私のお父さん、お母さんと?」


もし、この世の中が、もっと平和になって、また一緒に暮らせるならなんだってするだろう。


「そうだ。

私は君の幸せを一番に想っている。

…異世界人のことも無理にとは言わない。

ただ、一度召喚すると、もう元の世界には戻れないんだ。

彼がこちらで暮らしていくためにも、君の説得は必要だ。

それに、彼はまだ名前も言っていないんだ。

君の説得で彼の心を開いてあげてくれ。


…申し訳ないが、そろそろ時間なんだ。

また会いに来る。」


そう言うと、サンライは私を残して部屋の外に出てしまった。


私は、彼を説得して、魔王を倒して、また家族3人で暮らすんだ。

でも、本当にできるだろうか。


正直、失敗したことを考えると怖いが、やってみる前からあきらめられるほど、簡単な願いではなかった。

私は、やってやる。

それ以外に、道はない。


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