4.新しいパートナーの打診を受ける
昨日は、結局キャサリンたちと別れた後、部屋に帰って勉強をした。
だけど、なかなか集中できなくて、ほとんど進まなかった。
「…で、どうかな?
異世界から召喚した若い男なんだが、勇者として君のパートナーになってほしいんだ。」
学校の一階、一番隅の部屋の教頭室。
教頭のサンライが低い声で言う。
机と椅子だけが置いてある、簡素な部屋だ。
少し埃っぽい。
今日は日曜日。
もちろん、学校は休みだ。
「私は、…。」
ちゃんと、自分の世界を生きたい。
誰かのために我慢するんじゃなく、誰かに支えられるのも嫌。
自分で決めて、その道を歩きたい。
「私は、やりたいです。
パートナーになって、魔王を倒します。」
サンライは、私を拾ってくれた。
お父さんを殺されて、お母さんもどこかに連れられてしまった私を。
「そう言ってくれると思っていたよ。」
サンライは嬉しそうに、口の端を少し上げた。
魔王を倒せば、今の自分を変えられるはずだ。
絶対にやってやる。
「早速だが明日、異世界人に会って、今後について話してくれないか?
彼は、今はまだ現実を受け入れられていないようだから、まずは説得から初めてくれ。」
「わかりました。」
きっと、これはチャンスだ。
明日に備えて、説得する方法を考えよう。
私は、善は急げとばかりに、その場を立ち去ろうとした。
「…ちょっと待ってくれ。
これは、お土産だよ。」
去り際に、何かを渡された。
綺麗な紙の箱だ。
中を見ると、きらきらでいろいろな色の飴玉が入っていた。
「うわー!こんなにたくさん!
いいんですか?」
顔を近づけるとほのかに甘い匂いがする。
宝物みたい!
「もちろんじゃないか。その他にも何か必要なものがあったら言ってくれ。
私は出張ばかりで、あまり傍にいられないから。」
「大丈夫です。これが一番ほしかったものです!」
サンライは、あまり会えないけど、いつも私の好きなものをくれる。
大体はお菓子をくれる。
オルゴールももらったことがある。
部屋に戻ると、机の上にさっきもらった飴玉の入った箱を置いた。
手の平より少し大きな箱で、飴玉が何十個も入っている。
「…もったいなくて、食べられないわ。」
その日は、飴玉を眺めたり、本を読んだりして一日が過ぎた。
この飴玉は、異世界人に説得が成功したら食べることにした。
明日が、とても楽しみだ。
でも、カイのことを考えると少し心が痛い。
だけど、私は前に進もうと思う。
いつまでも、くよくよしてられない。