超ドアホ系美少女Uber eats配達員が家から出て行かないので俺は全力で追い返したい。
ーー俺は、絶賛ニートの二十五歳である。
仕事は探す気が無い。
だらし無いカスでして、毎日日が暮れるまでパチンコ三昧の毎日だ。
社会から見放され、生きる気力を失った俺は、不幸にも哀れなゴミ人間である。
そんな俺、戌亥 草十郎は腹が減ってしまい、いつもの様にUber eatsで焼肉弁当を注文する。
まぁ、毎日こんな感じなんで淡々と操作して配達の時間まで暇を持て余す事にした。
食生活も偏っているし、本当に人間辞めているんじゃないかと危機感を覚えるけど、モテない人生を歩んでるのでどの道、詰んでるんですがね。
「ピンポーン! Uber eatsでーす」
チャイムが鳴り、玄関を開ける。至って普通の日常だ。そうなるはずだったのだけど何やら今日は、俺の日常が壊れていく事を暗示させる不思議なやつがやって来た。
背は小さく、瞳はクリクリしていて黒髪ロングの美少女が、配達員として我が家に到着している。
「綾香先輩!?」
「ん? 違いますよ。Uber eatsです」
初恋の相手、綾香先輩に激似で少々焦ってしまっていた。当時、高校二年の俺は、綾香先輩の事を一目惚れし勝手な片思いをしていたのだが、告白することすら叶わずに卒業していったのである。
ーーまさに、俺の『初恋』だった。
そんな彼女と瓜二つの配達員に、正直可愛いなとか思ってしまって情けなくなりました。
「玄関までどうぞ。こちらの方が広いので」
「ありがとうございます。ご注文のお品をお持ちしました。ハナクソ弁当でよろしかったでしょうか?」
「言い訳ねぇだろぶっ殺すぞお前!」
ーー訂正しよう。こいつはヤバい。
どうしてなんだ。こんなに可愛い美少女なのに、完全に頭がイカれてやがる。誰がハナクソ弁当頼んだんだよチクショーが。
笑い方も独特だし、完全に出会ってはいけない人に出会ってしまったのかも知れないと、俺は自分を呪うしか無かった。
「あれ〜。違いましたか、失敬失敬。」
「俺が頼んだのは焼肉弁当だ」
「そうでしたよね。ちょっと待って下さいね。」
何やら様子がおかしくなってきた。挙動不審になり、辺りをキョロキョロしているのだ。クスリでも切れたのかと想像してしまう。
「あっれ〜。あれれ〜。あれれれれ〜」
「どうしたんだ?」
「すみません。取り違えてしまいました〜」
「何だと!?」
俺の焼肉弁当は、どこかに消えてしまったようだ。悲しみだけが宙に舞っていた。
初めてのこと過ぎて、俺もなんて言っていいか分からずにいると、その美少女は俺にある提案をした。
「よかったら、ご自分で弁当屋さんまで取りに行ってくれませんか?」
「それ、Uber eatsを頼んだ意味無くならないか?」
「あ、それもそうですね。あ、いた。いたた。いたたた。」
「どうしたんだ?」
「すみません。トイレだけ貸して頂けないでしょうか?」
|(ヤバ過ぎだろ!弁当すら持って来てないのにトイレまで?)
急にワザとらしく、お腹が痛いと言い出してきて、俺の頭は困惑状態です。助けて下さい。
本当に痛いのかも知れない程、ワザとらしく腹痛を訴えて来るので、仕方なく俺はトイレを貸し出す事にした。
ーー十数分後。
「いやぁ〜。スッキリしました。ありがとうございます」
「いえ。では早く弁当を持って来て下さい」
「いた。いたた。いたたたた。すみません少しだけでいいんでリビングで横になってもいいですか?」
|(何で家から出て行かないんだー!!)
あまりに、図々し過ぎる。何で見ず知らずの他人を家でくつろがさねばならんのだ。
そんなことは分かっていたのに、俺は彼女の潤んだ瞳の上目遣いにコロッとやられて承諾してしまいました。
「ありがとうございます。いゃ〜、Uberのカバン重くって疲れるんですよね」
「そうなんですか。とりあえず早く帰って下さい」
「すみません。喉渇いちゃったんでお水貰えますか?」
|(お前、人の話し聞いて無いだろー!)
俺はきっと甘いのだろう。普通は怒って追い返したいところだが何故か強く言えずに、俺は彼女に水を持っていってやった。
ここからどんどんエスカレートしていくのが目に見えてはいたが、あの可愛い顔がチラついて、ホイホイ従ってしまっているのです。
「あー、お名前を伺ってもいいですか?」
「戌亥草十郎だ。お姉さんは?」
「草十郎……ですか。私は綾です。よろしくお願いしますね!」
名前まで似てるのかと、頭を抱えて絶望する。追い返したいのに追い返せない状況が暫く続いていた。
「んー、体が重いですー。草十郎さんマッサージしてくれますか?」
「は? 何で俺が?」
「男の人の力で指圧してくれた方が気持ちいいからです」
「そういう意味じゃない」
「ダメ……。ですか……?」
「あー! こんなんでよろしいでしょうか!!」
ヤケクソになり、俺は綾の体をマッサージしてやった。若干の殺意を込めつつ、力強く、丁寧に。
「うっきょょょょ! 気持ちいいです!」
満足したのか、綾はウトウトとしていて今にでも眠りそうであったから、俺は急いで叩き起こす。
「いい加減にしろ! お前腹痛治ってるだろ? 残りの配達もあるんじゃないのか!」
「は!? 忘れてました。ヤバいです。そうだ! 私が焼肉弁当を取りに行くので草十郎さんは残りの配達に行って来れませんか?」
「はぁ〜。行ったら帰ってくれるのか?」
「もちろんですよ! もうお仕事終わりですからね」
急いで外に出て俺は、自転車に跨りUberのカバンを背負って走り出していていた。どうして俺がこんな目に。状況を理解出来ないまま、一件一件順番に回っていた。
「お待たせしました!! Uber eatsでーす! ハナクソ弁当をお持ちしました!」
無事に配達を終えてクタクタな俺は、自宅へ無事に帰宅した。ソファーに目をやると、綾が気持ち良さそうに眠りに着いていて、殺してやろうかと思う程に俺はイライラする。
もちろん、俺の焼肉弁当はどこにも無い。
だけど、そんな寝顔が狂おしく愛おしい。頭さえおかしくなけりゃ、真剣に交際を申し込みたいぐらいだ。
毛布も被らずに寝ている綾がどうしても気になってしまっい、しっかりと毛布を被せてやって、俺は寝室で泥の様に眠った。
朝起きると、あの美少女は居た形跡も残さないまま姿を消している。
だが、ある物がテーブルに置かれていた。手作りの歪なオムライスが一つ。何やら文字が書いているようで、マジマジとオムライスを観察していた。
「ハートが書かれている!?」
ただ一言『愛しています』とセリフ付きのオムライスに心躍らせてしまったのです。
一体、彼女は何者なんだろうか。まさか、俺の事が好きなんだろうか。
腹が減っていたので速攻で食べ終わり、俺は彼女にまた会いたくなってしまっていた。綾は今何してるんだろうな。
会いたいは会いたいが、家には絶対に入れたくない!
追い返すのが面倒だから。
この出会いは、始まりに過ぎなかったんだ。彼女はまた俺の家にやって来て、出て行かないだろうから。でもそんな彼女のことを、俺は少しだけ『好き』になっているのかも知れない。
ーー次こそは!
『超ドアホ系美少女Uber eats配達員を俺は家から全力で追い返したい』
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!
連載版のリンクが評価下の欄にありますので、気に入って頂けたら合わせて評価の程宜しくお願いします。