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一回、投稿での選択を間違えて、続きが、更新できなくなったので、消しました。すみません。
「きゃあああああ!」
王族の遠い親戚にあたり何代も続いた、由緒正しい公爵家の無駄に広い、客間。
今日も、淑女らしかなる声を上げて、この国では、有数の名家の御令嬢の1人が、失神なされました。
これは、当家の主人公爵様が、年頃になる、息子のレオンハルト様に、お見合いの席を設けてから、毎回繰り広げられている。光景で、御座います。
はて…さて、これで何回目でしたか…。
歳をとるといけませんね…。物忘れが酷くて…。
30回を超えた辺りから、数えているのが、アホらしく…ゲホゲホ…。
不甲斐ない私では、覚えていられない程の回数になりました。
申し遅れました。
私は、当家公爵家で、執事長をしております、セバスチャンです。
執事にありがちな名前と、よく言われますが、
ありがち故、よく覚えて頂けるので、幸いです。
さて、先程お倒れになりましたお嬢様ですが、心配には、及びません。
なんせ、レオンハルト様にお会いになり、お倒れになられぬお嬢様は、今までお見かけしておりません。
故に、いつも恰幅が良いが、素早い動きで受け止めれる侍女長が、背後に待機しておりました。
恰幅が有りませんと、か弱い御令嬢のいいクッションになれ…ゲホゲホ…。
何ですかね…。侍女長には、心の悪口が聞こえたのでしょうか…。射殺さんばかりの目付きで、睨まれました。
さて、その侍女長も心得た者です。
直ぐに対処して、既に御令嬢様は、お部屋から運び出されています。
さて、私めは、今日も、同じくおちこんでいる、へたれ…ゴホゴホ。可愛いお坊ちゃまを励まして差し上げねば、なりますまい…。
「レオンお坊っちゃま。ですから、その被り物は、およしになった方が、よろしいと申し上げましたのに…」
「うるさいよセバス。肩が笑っている。
笑うなら笑え。」
「では…。失礼して…!
はははははははははは。ひーひーはははは。お腹が痛みます。はははははは。ぶぐぶぶぶ。」
「セバス、…。」
「ですが、坊ちゃ…の。はははははは。落ち込みが…はははは。その…ひーひーひひひひ…。」
「もーいいよ。戻る。」
パタン。
私は、坊ちゃまが、扉を出て行かれるのを確認して、笑いを治めます。
そして準備されていた、お茶菓子などを片付けます。
私まで、落ち込んで仕舞えば、坊っちゃまはさらに憂鬱になってしまわれます。
“笑い飛ばす程度の事”とした方が、よろしいのです。
私も、少なからず、落ち込みながら、片付けをしています。
御令嬢達が、お倒れになるのは、無理ない事なのです。
坊ちゃまは、なんと豚の剥製の被り物をしています。
それは剥製なので、とってもとってもリアルなのに頭部だけで、気持ち悪いです。
坊ちゃまが、そんな被り物をするのには、理由があります。極度の緊張屋で、被り物がなければ、話せないからです。
被り物をしてない時は、幼い頃からお仕えしている、私にすら、あまり言葉を発せられません。
他人に被り物が無い時に、お話になられる言葉は、
「そう。」「けっこうだ。」「よるな。」
のだいたい3個です。
あとは、聞こえないフリと無視を続けます。
当家の主人公爵様も、一人息子の情けなさに、しっかりした御婚約者様をとお考えですが、なかなか、この坊っちゃまを受け入れて頂ける御令嬢はいません。
私には、文武両道で、優しく努力家で、優秀な可愛い坊っちゃまです。
素敵な女性と出会って欲しいものだと思いますが…。
こんなお見合いを続けた結果、仕方ない事ですが、貴族の間では、豚公爵と呼ばれています。
まだ、お家を継いでみえないので、公爵と、呼ばれるのは、おかしな話なのですが…
逆に、身分の高い、坊っちゃまの事を話しているわけではない。と言い訳ができるためか、その名が浸透し、変態で、怖くて、虐待的、酷いものでは、野獣愛好家などと言う者もいます。
坊っちゃまは、もちろん、社交嫌いで、ほとんど社交場には、姿を見せません。
見せても、まあ、お察しの通り、ビシっとスーツを着こなして、豚の被り物をします。
なんとも残念でなりません。
そんな坊っちゃまの表むきのお仕事は、お城の経理会計士です。
簡単に言えば、お城でのお金の出入が間違っていないか、管理の計算をする人でしょうか?
まあ、あまり人とは、接する事はなく。ずっと書類の精査なので、頭のいい坊っちゃまには、合っていると思います。
チリン
おおっといけません。坊っちゃまが、呼んでいます。
あらかた片付け終えた食器を使用人に託し、坊っちゃまの部屋に急ぎます。
「お呼びですか?」
「上着を…」
「はて?今日は、お休みのご予定では⁈」
「うん。でも、至急で、裏の仕事が入った。
今日、明日の分の仕事をこなさないと、次が大変になるから、行ってくる。」
「賜りました。お帰りは⁈」
「遅くなる。軽食を城に届けて。帰ったらすぐに、裏の仕事に行く。ダレン達に連絡しといて。あとは、いつも通り。」
そんな打ち合わせをしながら、廊下を進み、玄関で坊っちゃまの馬車を見送ります。
そして、今日の裏のお仕事で、坊っちゃまは、とんでもないものを拾ってくるのですが…。
そんな事知らない私は、いつもの様に、坊っちゃまが、仕事をスムーズにこなせるように、手配しに、別棟へ向かいました。
「ダレン。」
「はい。お呼びでしょうか?セバスチャン様。」
シュタ!
と言う音も無く、目の前に急に現れ、跪いた。
細身で黒い服をきた、この身軽で目付きの悪い男が、ダレンです。
「今夜、仕事がある。皆を集めておくようにと、レオン坊っちゃまからのご指示だ。ダリアは居るか⁈」
ダレンは、頷くだけで了解を示します。
跪いたまま顎をしゃくり、ダリアを前に出させました。
「はい、こちらに。」
ダレンによく似て、目付きは悪いが、女性らしい体つきの、髪の長い女は、ダリア。ダレンの妹です。
「夕食を城に届けて欲しいとの事だ、よろしく頼みます。」
「賜りました。」
この公爵家は、本家では無く、王都にある別荘を坊っちゃまのために、改装したものです。
坊っちゃまが、あんなん…ゲホゲホ。
人見知りで、他人を側に置けない事から、屋敷での使用人、侍女は、最小限しかおらず、いるのは、坊っちゃまと一緒に育った影の者達だけです。
影の者達は、屋敷の裏にある別邸にて生活しています。
日向をこのまない、特殊な者達であるため、余り人前に出す事はできないのだが、いかんせん、使用人も侍女も少なく、屋敷は大きい。世話をするのは、坊っちゃま1人ですが、やる事は、沢山あるのです。
そして、侍女に若い娘は居ない。
城までの道のりを歩かせるには、体力的に、ダリアのような若い娘の方が、都合がいいのです。
いつも、仕方なく届けものは、ダリアに頼んでいるのです。
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