譲れない一線
Sランク冒険者は不老不死とされている。
事実、Sランク冒険者筆頭である天竜と契約したゼームスは五百年の暗黒時代を終わらせた英雄であり、
その活躍はおとぎ話や様々な文献に多く描かれている。
魔の森の脅威は人類にとってその存亡に関わってくるものであり、それに対する戦力は恒続的なものが求められた。
天竜と契約し不老不死になったゼームスや、暗黒時代に魔物の血を浴び過ぎて不死になったジルドなど
例外的な存在は数名、存在はしたが、それはすべてのSランク冒険者に当てはまるものではない。
人の最大の敵は老いである。どんな強者でも人は老いには勝てない。
国すら揺るがすスタンピードという魔物の大量発生を、単独で討伐できるとされるSランクの冒険者を失うことは
魔物の脅威に怯える人類にとって大きな損失であり、存亡に直結する問題だった。
そのために大魔法使いムーアは彼の持っている不老不死の秘法を解禁し、
Sランク冒険者に到達した冒険者にその秘法を施すことになった。
その十名しかいないとされるSランク冒険者のうち八名が、今街道町パタフの議場に集結していた。
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「それで今回の敵について教えてもらえるのよね?」
イーリスが腕を組み、足を組んだ状況でゼームスに威圧的に問う。
「そうだな。先に話しておくのも悪くないか。今回の敵なんだが、外部からの侵略者だ」
淡々とゼームスは語る。少しだけイーリスの表情がピクリと動く。
「外からの侵略者ってなんなのですかね?東か西の大陸のどちらかではないのですか」
イーリスの脇にいるトーナがゼームスを追及する。
「いいや、東と西のどっちでもないらしい。
今回のは純粋に世界の外側から来ていて、プラナッタ王国に潜んでいるらしい」
「らしいとは…その情報はどこからもたらされたものですかね」
「依頼元からだよ」
「…ならこの話はどこからの依頼なのかしら?」
「精霊王」
ゼームスの一言に議場がざわめく。
「ゼームス、私たちの仕事の領分は人間たちを魔物から守るで間違えていないわよね」
顔を引きつらせながらイーリスはゼームスに問う。
心なしかさっきよりも機嫌が悪いような気がする。
「ああ。その通りだ」
「全く一番やばいところから仕事拾ってきて。
今回の相手は間違いなく、疑う余地もなく、確実に『侵略者』(インベーダー)じゃない」
イーリスが頭を抱える。
「そんなにやばい話なのか?」
ドリアが横からイーリスに問う。
「やばいなんてもんじゃないわよ。本来ならこれは魔族の扱う案件。
しかも魔神関連の超特大級の地雷。もし『極北』の魔神が動き始めたら…私たちは巻き添えを食ってもれなく全滅よ」
「言い過ぎじゃねえのか」
これにはさすがにドリアも顔をしかめた。
「あんたらは奴らの怖さが分かってないのよ…」
イーリスさんに俺は心の中で全面同意する。イーリスさんも強いのはわかるが、ゲヘルたちは規格外過ぎる。
彼らにとっては『十天星』だろうが人間と大差なく見えるだろう。
「…ただ精霊王が手に負えないと判断したのなら『侵略者』(インベーダー)であることはほぼ確実…。
プラナッタは…なるほど…アルスベルドを抜けてくるなんてにわかには信じられないけど、実際に起きてるしなあ…」
イーリスはぶつぶつと一人でぶつぶつとつぶやいている。
「約半年前の第一皇女アウラ姫の行った精霊下ろしで偶然外界とつながってしまったらしい。
そこで誤って引き寄せてしまったという話だ。ここまでで何か質問はあるか?」
ぶつぶつと一人で考え込んでいるイーリスをほっといてゼームスは続ける。
「…精霊王がなぜ冒険者ギルドに話を持ってきたかってのはこの際後で聞くわ。プラナッタ王国に奴らはいるのね」
イーリスは立ちなおった様子。
「俺なりに調べてはみたが被害はまだ広がっていない。叩くならば今しかない」
「ゼームス、相手の戦力について判明していることは?」
ジルドが低い声く通る声でゼームスに問う。
「相手の戦力は判明しているのは黒ずくめ兵士およそ二千名ほどと七星騎士団の隊長六名。
ちなみに黒づくめの兵士は精兵ほどの力で、七星騎士団の隊長は最低でも精霊契約者クラス以上の力を持ってる」
「精霊契約者と同じでありますか…。なめてかかると痛い目に合うかもしれませぬな」
イーヴァは思案している様子。精霊契約者は単独で相当な力を持っている。
死霊の軍を扱うイーヴァにしてみれば、戦っている雑兵の中に強い個が混じっているのは警戒するべきところなのだろう。
「ちなみに昨日俺の背後にいる冒険者チーム『渡り鳥』のメンバーが交戦し、一名倒している」
「ゼームス。それはあなたの命令?」
凍えるような冷たい声でイーリスはゼームスに問う。
室内の温度がはっきりと変わったのが感じられる。
「いいや」
「作戦前にその相手と揉める馬鹿がどこにいるのよ。しかも仕留めてるし。
悪いけど私、功績目的に先走るガキとは組めないし、組みなくないわ。
ゼームス、どうしてもそいつらを作戦に加えるつもりなら私たちを外しなさい」
イーリスは激昂し、突き刺すような殺気を隠すことなく俺たちに向けてくる。
イーリスの言い分もわかる。今回の作戦はプラナッタの国民の生死も関わってくる。
当然秘密裏に行うべきものである。本来ならば遭遇したとしても逃げるべきところだろう。
その上、突発的なものであれ、敵の一人を倒しているという。
相手に警戒されるのは当然であり、俺たちの起こした行動は作戦の成否に関わってくるものだ。
イーリスがこれを責めるのも当然のことだ。
ただ、オズマと七星騎士団は険悪な状況であり、衝突は回避できなかったのも事実であるのだが。
「それは…」
俺が何か言いかけるとイーリスの冷たい視線が向けられる。
「あなたたちの発言を許可したつもりはないわ。Aランカー」
イーリスがそう言うなり圧倒的な存在感が議場を支配する。
これはイーリスの脇にいる神獣が発したものだ。
寝そべってはいるが金色の獅子は威圧は相当なものだ。
威圧に乗じてイーリスの隣にいるトーナがナイフを二本、投げてきた。
恐ろしく早い。だが、魔神たちほどではない。
トーナのいきなりの行動に対して俺は比較的平静を保つことができた。
俺はその刹那の間に分析する。
脅しのつもりだというのはすぐに分かった。殺気は込められてないし、軌道を読む限り俺の両脇を狙ったものだ。
俺がどうするか対応に迷っていると、俺の両脇にいるオズマとエリスが動いた。
エリスはナイフを素手で叩き落し、オズマに関しては受け止め、さらにそれを相手に返している。
オズマのは曲芸の領域である。
「…失礼、ついつい手がすべってしまいましたヨ。わざわざ返してくれるとはすみませんネ」
トーナはオズマが返したナイフを素手で受け止め、わざとらしく肩を竦める。
返されたナイフを平然と受け止めるトーナもまた逸脱者。
「そんなに滑るのであれば手に縫い付けておくのがよいだろう」
オズマは殺気を含んだ視線でトーナをにらみつける。
オズマは俺に対し手を出してきたことに相当腹を立てている様子。
俺としては穏便に済ませたいのだが…。
「ヒュー」
一連のやりとりを見て横から茶化すようにドリア。
「ほう、あの距離であの速度のナイフを止め、相手に返すか」
ファイはオズマを品定めしている様子。
「ふむ」
ジルドは少しだけ目を見開いている。
ここでゼームスの圧倒的な覇気が議場を覆う。まるで巨大な竜がその場に現れたような存在感。
「生きがいいのは結構。だがここは俺が借りた議場。…それ以上やるなら俺が相手になってやるぜ?」
ゼームスの覇気に議場にいる誰も怯んでいる様子はおろか気にしている様子すら見られない。やはりここは魔窟らしい。
「ユウたちを擁護するわけじゃあないし、勘違いがあるようだから言っておく。
手を出してきたのは七星騎士団の方で、ここに連れてきたのは個人的な因縁が昨夜の偶発的な戦闘の引き金となった」
「個人的な因縁?」
イーリスがゼームスに問う。
「襲ってきたのは七星騎士団のメンバーで、オズマはその七星騎士団副団長だ。正確には元が付くけどな」
ゼームスのその一言にイーリスは険しい表情を見せる。
「…百歩譲ってそいつらを作戦に組み込むのは許容しましょう。元七星騎士団のメンバーを作戦に加えるって正気?
仲間だった人間をそう簡単に裏切れるものなのかしら?」
「裏切るも何も昨日一名倒したのはそこのオズマだ」
皆の視線がオズマに注がれる中、オズマはその口を開いた。
「奴らは禁忌を犯した。奴らが道を外したのは私の責任でもある。せめて私の手で奴らを処断したい」
オズマは淡々と静かに語る。淡々と話すオズマの声からは覚悟が伝わってきた。
Sランクの冒険者たちを前に少しだけ浮足立っていた俺の心が据わった。
「俺からいいか?」
俺の問いにゼームスは無言で頷く。
イーリスも黙ったままだ。今のナイフの一件で俺たちを少しは認めてくれたということか?
「昨夜、遭遇した際に七星騎士団団長アリオトと今日の夜戦う約束を取り付けた。
これは俺たちと七星騎士団の問題になった。俺たちに奴らとやらせてくれないか」
俺は七星騎士団と交わした約束を持ち出した。これで俺は引くに引けなくなった。
「また勝手なことを…」
イーリスの鋭い視線が俺に突き刺さる。
「不満か?」
ゼームスはイーリスに問いかける。
「私はあえて刺激する必要はないと言っているのよ。
相手は一国の首都の住人、十万人を人質にしているといってもいい。
間違えたら犠牲なんかどれだけ出るかわからない。あなたたちの勝手な行動なせいでね。
もしあなたの行動のせいで何千人も人間が死んだとしたらあなたはその責を負える?」
イーリスの問いかけにここで引いたらだめだと俺は直感する。
「そうならないように俺たちを使えばいい。少なくともおとりぐらいにはなるはずだ。
なんなら俺たちのことは切り捨ててくれてもかまわない。
それに俺たちAランカーが勝手に犠牲になってもあんたたちには何の問題もないはずだろう」
俺はこの相手に小手先ではだめだと感じた。ここで必要なのは怯まずにぶつかっていく勇気。
そして、絶対に引かないと思わせること。
「話にならないわね。もし私たちがその提案を蹴ったらどうするつもり?」
「…あんたらと戦ってでも行かせてもらう」
俺の言葉に議場がシンと静まり返る。俺はイーリスと見つめあう。
背後のオズマとエリスは臨戦態勢に入ったようで緊張しているのが分かる。
トーナは手にナイフを持ち、金色の獅子は静かに立ち上がる。
議場が異様な雰囲気に包まれる。
一触即発。どちらかが手を出した瞬間、間違いなく次こそ戦闘になる。
先に態度を崩したのは意外にもイーリスの方だった。
イーリスは左手を上げてトーナを制し、右手で金色の獅子の頭に触れて座らせる。
「私たちの力が分からないってお馬鹿さんじゃないわね。あなたはどうしてそこまでするの?」
イーリスはどうやらこちらがてこでも動かないと理解したようである。
「オズマには仲間だってことで随分と頼りにしてきた。そんなオズマが初めて何かをしたいと言ってきた。
だから今度は俺たちがオズマに何かをしてやりたいと思った。
俺は、俺たちは仲間であるオズマが納得するまで全力を尽くす。当然だろう」
エリスとクラスタとは直前に話し合って決めている。
フェクダとの戦いでオズマと七星騎士団の絆がどれだけのものなのかを知ってしまった。
だから相手が何者だろうと今回は引けない。引くつもりはない。無理ならば推し通るまでだ。
「主殿…」
「はーっはっはっは」
ジルドの豪快な笑い声が室内に響き渡る。
「悪いがわしは『渡り鳥』つくぞ。同じ武人としてオズマ殿の心意気に共感する」
ジルドはさっきまでの硬い態度が嘘のように、俺たちに微笑みかけてくる。
いきなり微笑みかけられて俺は少しばかり驚く。
「ちょ、ちょっと、ジルド」
「今は目の前に敵がいる。路傍の石など放っておくべきだ」
ファイは俺たちに対する不干渉を宣言したということだ。俺の意見に賛同してくれたらしい。
「クックック、ファイがそういうなら俺も『渡り鳥』側だな」
ファイが立場を決めたのを見て、楽しそうにドリアもそれに便乗する。
「私もであります」
イーヴァも乗ってくれた様子。
これで残るはゼームスとイーリス、トーナだけだ。
ホストであるゼームスは議長のような立場であり、意見のとりまとめ役である。
これでこの場で俺たちの意見に反対するのは実質イーリスとトーナだけになった。
「さて、反対はイーリスとトーナだけのようだが」
ダメ押しのゼームスさん。
「もう勝手になさい」
イーリスは不貞腐れた表情である。
「俺の一方的な言い分を聞いてもらって、すまない」
俺は議場の皆に頭を下げる。少なくとも俺に向けられる敵意は感じられなかった。
俺が頭を下げたことは好意的に受け止められたようだ。
「これから『渡り鳥』と俺たちは別々で動くことにする。
ただユウの契約した竜騎士たちと『渡り鳥』のメンバーであるセリアには
作戦上重要な部分を担ってもらおうと思っている。勝手かもしれないがユウたちには引き続き力を借りたい」
竜騎士と契約したという部分でイーリスの表情がぴくりと動く。
「今回セリアは戦いに連れていくつもりはないし、あっちにはセリアを除いた俺たち『渡り鳥』だけで行くつもりだ。
竜騎士たちにはリューウスまでの移動に力を貸してもらうが、そのあとはゼームスの好き動いてもらうつもりだ」
「そういってもらえると助かる。『渡り鳥』の参加は継続。だが俺たちの作戦とは別に動いてもらう。
これからの話し合いの席は作戦に加わらないものはこの議場から出て行ってもらいたい」
「わかった」
俺たちはゼームスの提案に乗って議場を後にする。
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「…以上が今夜の作戦になる。異論のある者はいるか?」
「「「異議なし」」」
あれから一刻、議場ではゼームスの締めの言葉に全員がそう返した。
「ゼームス、一つ聞いてもいい?」
イーリスが挙手する。
「ああ」
「なんで東の果ての島にいるはずの竜王国の竜騎士があいつらと契約してるの?」
「ああ、竜騎士が今回の件に協力してくれるのは『渡り鳥』が竜騎士たちを決闘で倒したからだ」
「!!!!」
ゼームスの言葉にイーリスは驚きを隠せない。
「人間が竜騎士を倒したって?」
「キャバルで大々的に闘技場貸し切ってやったらしいぞ。一対一のタイマン形式でやってでほぼ完勝したってよ。
ちょっとした興行だったらしい」
横からドリアがイーリスに説明する。
「ちょっと、私の情報網にその話全く入ってきてないんだけど」
「行き違いになったんだろうさ。決闘を行ったのは今から三日前だからな」
「…三日前ならありえますね。魔の森の下見で私たちは遠回りして来ましたから」
トーナが思い出すように答える。
「ファイたちも知ったの?」
「膝元での馬鹿騒ぎなら嫌でも耳に入ってくる。ちなみに馬鹿騒ぎを主導したのはそこにいる馬鹿だ」
ファイはゼームスに目で指す。ゼームスに対してイーリスは恨みがましい視線を向けた。
「…ゼームス、私をダシにしたわね?」
竜騎士たちの協力、ムーアへの協力者の提供。
それらは欠かすことのできない作戦の肝となる部分だ。
あの場でユウはそれらを盾に交渉するという選択肢も取れた。
それはプラナッタの住民をすべて人質にするという行為でもある。
もしその手を使ったとしたらここにいる者たちの心証は確実に悪くなっていただろうが。
「俺はあいつらの覚悟が知りたかっただけだ。あの場でイーリスに流されるんだったら手を貸すつもりはなかったよ」
脅迫などの手段を用いずに、イーリスの圧を前にして引かずに自身の意思を押し通した。
「まあいいわ。今回は彼らに花を持たせましょう。ただ全部あんたの掌の上ってのが気に食わないわね」
「全部ってわけでもないさ」
ゼームスは不敵に笑う。
「それにしても竜族は人間とはかけ離れた存在。しかもその竜騎士は力を持つ竜族の中でも選ばれるのは相当な実力者のはず。
それを一介の人間が倒したと…にわかには信じ難いわね」
竜族の手を借りる経緯についてはゼームスの説明を受けていた。
竜族と人間との力の差は明確である。
竜族は竜の血を受け継いでいるために身体能力は人間の数倍はある。
その上、力のある竜族は竜気という人間の法力の上位版ともいえる能力を有しているという。
一介の人間が勝てる存在ではない。それを彼らはタイマン形式で倒したという。
明らかに異常なことである。
「嘘だと思うなら聞いて確かめるといい。証人ならキャバルにごまんといるぞ」
「…ゼームス、あいつらは一体何者?」
イーリスは神妙な顔でゼームスに問いかける。
「俺もよくわからん。ただ相当な実力者だし、使えるかもと思って連れてきた。
プラナッタ王国には因縁もあるみたいだしな」
「冒険者ギルドの履歴はすべて調査したのよね?」
「一応な。ただ確認はしていない。こっちはお前らがやってくるまでプラナッタの調査や準備でずっとかかりっきりだぜ。
ただ、大まかな情報はある程度は入ってきてる。
信じられないような情報がいくつも含まれてるし、落ち着いたらサルアに飛んで確かめに行くつもりだ。
ああ、ちなみに言っておくと背後に立ってた女は今代の勇者だぜ」
「ほう」
ジルドが目を見開く。
「デリスの勇者がどうして…カルナの崩御が影響してるのか…」
カルナを口に出すイーリスの表情は曇っていた。
「ああ。勇者であることは驚きですが、私が注目したのは勇者よりもオズマという男のほうですね。
底の読めなさとポテンシャルはジルドさんに近しいものかと。
アレは少なくともAクラスではなく私たちの領域に近いですねぇ。
七星騎士団の副団長が相当な使い手だとの評判は聞いていました。
並みの騎士団風情だと思って侮っていましたが、世の中にはまだあんな存在が眠っているんですねぇ」
しみじみとトーナ。
「ナイフも返されたしな。お前のナイフをあそこまで綺麗に返すの俺も初めて見たわ」
茶化すように横からドリア。
「それでイーリスは誰が気になった?」
「…あたしはユウって奴か。奴からはあたしと妙に近しいモノを感じた。
それもどこかで感じたことのあるような不快愉快な波動。あたしがピリピリしてるのもそれもある」
「…なるほど。意見が割れたな。ジルドはどうだ?」
ゼームスは背後にいる腕を組んだ
「わしが注目したのは誰かと聞かれればわしはオズマ殿じゃな。あの男を見たとき久しぶりに滾ったわ。
終わったら一つ手合わせ願いたいものじゃ」
「ちなみに言っておくと、ここに来てないセリアのポテンシャルも相当だ。
何せあのムーアに認められたほどなんだからな」
「ムーアに認められたって?それ戦略級魔法使いの卵じゃない。
私欲しいなあ。うちのユニオンにはムーアやイーヴァの様な戦略級魔法使いいないし。ねえ、ファイ」
「…」
イーリスの問いかけにファイは何も答えない。
戦略級魔法使いはこの世界では希少である。現在戦略級魔法使いに位置づけられる存在は三人しかいない。
魔法使いは回数制限こそあるものの、一度に多くの敵を倒せるために作戦の中核となる場合が多い。
戦略級となれば一度の魔法で多くの敵を葬ることができる。
ただ、カロリング魔導国でもその存在は近年ほとんど排出されておらず、良くても戦術級までである。
「ところでファイはさっきからだんまりだけどどうしたの?」
「どうでもいい。…そろそろお開きにしないか?こちらも準備がある」
ファイはあからさまに不機嫌そうであった。
そんなファイを横目にドリアが目で笑っている。
状況がいまいち呑み込めないイーリスは首を傾げる。
「…そうだな。ここらへんでお開きにするか。長引かせて悪かった。
話した通り決行は今日の明け方だ。ああそうだ。一応聞いておくが、足が必要な奴はいるか?」
ゼームスは皆に問うが反応はない。
「なら、解散としよう。『極北』の魔神共が動き始める前に終わりにするぞ」




