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武器職人対蒐集家

黒の塔 九十階。

部屋は壁から足元のほぼすべてが『光塵』のためにどろどろに溶けている。

部屋の中は熱気に包まれ、赤一色、さがなら地獄のような光景である。


その地獄のような光景の中、対峙する人影が二つ。

二人は数少ない足場の上に立ち、互いに体の節々に切り傷をつけている。

全身の体に致命傷ではないものの、細かな傷をつけているローファン。

一方、ドリアも宙を浮かんでいたはずが、地に足をつけている。

また『光塵』の光も目に見えて少なくなっている。

二人の決着が近いのは誰の目にも明らかであった。


「魔力の内臓量は単体が保有できる魔力量であり、その個体に大きく依存する。

その竜骨は中に蓄積された魔力を使い切ったのです。

その魔道具はもう魔力を外部から補充しなくては使えないでしょう。

取り換えることをお勧めしますよ」

ローファンがドリアに語りかける。


「いわれるまでもねえ」


「やれやれ、頑固ですね。竜骨の強度は竜骨に含まれる内臓魔力に依存する。

魔力を放出し過ぎるとその強度もまた下がってしまうことになるのですが…」


「ああ、だが終わりじゃねえよ」

ドリアがそう言うと、ローファンの足元の溶岩の中から複数の欠片が一斉に持ち上がり。

そこから複数の光線がローファン目がけて一斉に放たれる。


それはローファンの体を貫通した。


「最期はずいぶんとあっけなかったな」

つまらなさそうにドリア。


「…服が破れてしまいました。私以外の魔族なら仕留められていたと思いますよ」

今のでローファンは傷を負ったように見えない。

ただ服の一部は焼け焦げていた。


「…直撃する体の一部を変化させてやり過ごしたそんなところか」


「私の魔力です。魔族は個別に固有の魔力を有します。

戦闘では大して役に立たないものなので、今までそれを使うことはありませんでしたが、

それをこうして戦いで使うのは久しい」

感慨深げにローファン。

ドリアの背後にある三つの『光塵』が地面に落ちる。

それは今の攻撃で浮力に回す魔力がすべて失われたことを示す。


「チッ、力を使い過ぎたか」

ドリアは舌打ちしながら背後の武器の一つに手をかける。

ローファンはそれを眺めるだけで何も仕掛けようとはしない。


「何で今のタイミングで攻撃してこねえ?俺をなめてるのか?」

ドリアは静か怒りを含んだ声でローファンに問う。

内蔵する魔力の無くなった竜骨の強度は思い切り下がる。

今ならばその魔道具ごと俺を容易く破壊できた。ドリアが見せる最大級の隙でもあった。


「今あなたに仕掛ければ背後の武器まで犠牲になる。

それほどの武器を壊すのは私にはできません」


「は?」

ローファンの言っている意味が解らずドリアは聞き返す。


「竜骨を加工し、武器に転用する発想、実にすばらしい。

その曲線的なフォルム。まさに珠玉と言ってもよろしいでしょう・

並みの武器職人ではできる芸当ではございません。

それを作るまでに一体いくつの工程が必要だったのか。

ああ、想像するだけでもそれにかかる手間がかかたのか。感銘を禁じ得ません。


~中略~


ゆえにそのような芸術品を壊すなど私にはできません」

ローファンは最後恍惚とした表情を見せていた。

その一方で(十分以上にも及ぶ)マシンガントークをドリアは神妙な顔で聞いていた。


「…いや、まあ、うん、そう評価してくれるのは嬉しいんだけどよ。

これは意外と不安定なんだぜ。どっかに封印しておかねえとすぐに暴発するんだぜ」


「フム、そうですねぇ。その構造だと制御をする核があれば安定するのでは。

竜骨を削って魔孔のオーブを差し込むのもよいかと?」


「一度俺もそれも候補に挙げたことはあるが、この出力に耐えきるオーブなんてそうはねえぞ?

そんなものがあるのならどこかの国の宝物庫行きだ」


「アザリアの魔孔ならどうでしょう。五十層以下はまだ誰も入ったこともいないと言われております。

魔孔創造以来の手つかずのオーブを手に入れられるかもしれませんよ?」


「あそこかよ。めちゃくちゃ難易度高くねえか?」


「そもそも魔孔というのは創造主が非力な人間たちのために武器の材料となるモノを

提供するために造られた魔素だまり。それを利用しない手は無いでしょう」


「はへー。魔孔ってそういうもんだったのか」


「必要以上の魔素を消費するために一定以上の魔物。

さらに魔素を長く吸った武器や結晶が数多く存在すると聞きます。

私も行ってみたいのですが、口惜しいことに私の様な一定以上の古い魔族は

深層部までは進むことができないのですよ」


「あんたらも意外と不自由してるのな」


「これも魔族に生まれた宿命…。おやおや、少ししゃべり過ぎてしまいましたね。

戦いを続行しますか?」


「…もう戦いの雰囲気じゃねぇって。とんだ品評会になっちまったし、ここでお開きにしねえか。

こっちもこれ以上戦う気のないあんたに手札を見せたくねえ。

その代わり、あの男とは俺は今回は戦わないことを約束してやる」


「…いいでしょう。私としてはその手札というのにも少し興味がありましたが」

心底残念そうにローファン。


「ただし条件がある」


「条件ですと?」


「いくつかの俺の質問に答えろ」


「フム、人間でありながらこの私と互角に戦ったあなたへの敬意と賞賛の意味も含め、

答えられるものは答えましょう」


「獅子の頭で六腕の大柄の魔族を知っているか?」


「…フム…知りませんね。遭遇したのはいつどこでですか?」


「…三百年前にカンザス地方にある俺の住んでいた村を襲った奴だ」

ドリアは怖ろしく冷たい眼差しを見せる。


「カンザス地方…獅子の魔の森の近くですね。それは魔王ではないのですか?

魔王は魔の森の魔物の王。魔物たちを統率するために知性がある個体も生まれると聞きます」

ローファンは思案気に応える。


「その線は三百年かけて調べ尽くした。該当する姿の魔王は過去をさかのぼっても存在していない。

本当に魔族に特徴が似てる奴とかはいねえのか?」


「大柄で腕が複数あるという特徴が合致する魔族は一人いますが、頭部が獅子ではありませんな」


「その特徴が似ている魔族は今どこにいる?」


「その可能性は限りなく低いと言っておきましょう。

ある理由のためにその方は現世には出てこれないゆえに」

どこか遠くを見るようにローファンは語る。


「…そうなると魔族の可能性は低いってわけか」


「私も魔族をすべて把握しているわけではありませんが、おそらくは」


「なら質問をかえるぜ。人を殺すことはあんたらにとって必要なことか?」」


「こちらの領域に踏み込むことがない限り排除はしませんな。

我々のこの星での食事ならば大気中に含まれる魔素で済む。

魔族と呼ばれる存在は現在、魔素の潤沢にある『極北』に集中しております。

人の生命力は魅力的なものではありますが、人の管轄は神であって、

私たちは奴等と積極的に関わるつもりはありません。

誇りを傷つけられ殺戮を行ったことのある私が言うのもなんですが…」


「なるほど。助かったぜ。すげえすっきりした。

ずっと聞きたかったんだが、魔族とは今まで会ったことがねえからよ」


「人間界には魔族はほとんどいませんからねぇ」

ここで上階から塔を震わせるような大きな爆発音が聞こえてくる。

上階ではファイとユウとの戦いが始まったらしい。


「それじゃ最後の質問だ。あのユウって男は何者だ?あんたらの仲間の魔族か?」


「…私の口からは何とも。あなたも冒険者を名乗るのなら自分で調べ上げるべきでは?」

試すような表情でローファンはドリアに囁く。


「かっ、ちげえねえ。まさかそれを魔族に諭されるとはな」

ドリアは頭を抱えながら笑う。


「あなたのことは嫌いではありません。あなたの魔道具の使い方には愛が感じられる」


「愛?よくわからんが、俺の作った道具だ。壊れないように使うのは当然のことだ。

じゃあな、変な魔族。次に会ったらガチの殺し合いか、酒の飲み比べでもしようぜ」


「はは、あなたとはどちらも満足してイケそうですな。

素晴らしい魔道具に殺されるのなら私も本望。良い魔道具を用意しておくことですね」

ローファンはそう言ってステッキを振り回しながら部屋を後にする。


ドリアは今のローファンの一言で感じていた違和感を理解する。

あのローファンと言う魔族、戦いには手を抜いてはいないが、殺気などは感じられなかった。

そのくせ視線は武器から離れていない。

体を変化させるにしても、ドリアは何度か『光塵』で手ごたえを感じている。

あのユウという男に何か命じられていたにしても、少し度が過ぎている。

死ぬことも覚悟の上でこっちの武器を観察していたと考えたほうが正しい。

武器を愛すると言ってもただそれを見る為だけに、自分の命まで賭けるような馬鹿は見たこともない。


「とんだ変態もいたもんだ」

武器マニアにしてもあそこまでイカれている男をドリアは知らない。


「…さてと、上はどうなってるかな」

ドリアは轟音のする上階に足を向ける。

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