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反省会

「キャバルか、ようやくついたぜ」

その男がキャバルにやってきたのはその夜も更けてからだ。

既に夜は更けており城門は閉じられている。

キャバルには十数万と言う人間が暮らしを護るためだ。

理由は盗賊を中に招き入れないため、魔物の襲撃を防ぐためなどだ。


もし城門の中に入ろうとするならば、それなりの理由が求められる。

強引に入ろうとすれば最悪死罪になる可能性もある。


城門を目にして男は馬から降りる。

馬はここまで走らせてきたのか汗だくである。


「よしよし、すまなかったな」

男は馬を撫でながら布をカバンから取り出し、馬の汗を丁寧にふき取っていく。


男が連絡を受けたのは昨日のことだ。

消息を追っていた枝に探していた名前の男が冒険者ギルドでAランクに昇格したと報告を受けた。

Aランクになれる人間など限られている。

冒険者の中でAクラスになるにはそれなりの実績が必要になる。


ましてその男は特例として認められたのだという。

特例で認められるというのはそれなりに実力がある場合に限られる。


男の所属するパーティ名は『渡り鳥』。

その名には心当たりはなかったが、その中にいる男の名前には心当たりがあった。


「今回のは本物だといいんだけどな」

そうつぶやくと男は城門の前に腰をおろし、横になるとそのまま寝息を立てた。




俺とオズマは宿の俺の部屋の中央に二人並んで正座をさせられていた。

目の前には仁王立ちのエリスがいる。


宿に帰った後、鬼の形相をしたエリスが俺たちを待ち構えていた。

昨日襲撃してきた魔族よりも…ラーベのアレよりも強敵だったかもしれない。

俺とオズマは反撃することもできずにエリスに事情を聞かれ、絞られています。


「もし私がセリアを咄嗟にかばってなければどうなっていたことか。

もし相手がユウ殿みたいに投石みたいな手段を使っていたら私もやられていたかもしれないぞ」

そこがエリスの欠点でもある。

純粋な物理攻撃だと勇者の結界では攻撃を無効化できない。


俺としてはあの時魔族に向かって飛び出したのは間違えていなかったと思う。

ただ『天月』で相手の命を刈り取るべきだったとは反省してる。

ラーベの元部下だったこともあるが、俺自身が殺すことを潜在的に嫌っていたのだ。

また殺さなくてもどうにかできると思っていた節もある。

つまり今回のことは俺の甘さが原因でもある。


「私たちのことを知っていたというからにはこのキャバルに来てから目をつけられていたということだろ。

ひょっとしたら狙われる対処できたんじゃないか?」


「無茶言うな。俺たちに向けられている視線の主を一人一人鑑定できるか」

こういう人が多い都市だと視線の数は半端ない。

好奇とも、興味ともつかぬ視線を数千とか浴びせられるこの場所で

それらの中から一つを特定するなんて無茶苦茶である。

特にエルフの先祖返りのセリアや黒一色のオズマは悪目立ちする。


「私もキャバルに入ってから魔族の臭いは嗅ぎ取っていましたが、

我々に害を与えようとしている者なのかわかりませんでした」

オズマが横から援護射撃をしてくれる。


「ぬう…だとしてもだ。引き受けた時点で私たちに報告する必要があったのではないか?」

エリスの言う通りではあるが、連絡する方法も手段もなかった

今後何らかの対策をうつ必要があるのかもしれない。


「ま、いいじゃない。結果としてみんな無事だったんだし」

セリアが横からフォローしてくれる。


「しかし、セリア殿」


「ユウ、仲間なんだしこれからは私たちとも相談してよね」

セリアは仲間の語彙を強調してくる。


「はい…」

俺はうなだれてただそう返事するしかなかった。


女にゃ勝てん。

エリスも基本根はあっさりとした性格でもある。

ここで一段落したかなと思ったところでセリアが何気なく聞いてくる。


「ところでラーベさんの娘さんたちはどんな感じだったの?」


「そりゃすごく綺麗な人(?)たちだったよ。

服装もかなりきっちりしててどこぞの貴族の令嬢と言われても違和感なかった」


ピシリ


「…ふーん、そうなんだ」

何となく空気が重くなった気がする。

オズマとエリスが少し引いているのがわかる。


「ユウはそんな女性をおぶったり、荷物持ちをしたりして一日中エスコートしてたんだ」

セリアからえもいわれぬ圧力を感じる。


「あのセリアさん?機嫌悪くなってません?」


「なんでそう思うのかな?」

俺はごくりと生唾を飲む。笑顔だが何故かセリアが異様に怖い。

状況がなぜか悪い方向へ進んでるような

俺はオズマとエリスに視線を向け助け船を求める。

二人にはふいと視線をそらされた。ものすごく気まずすぎる。

何でもいいから話題話題…。

俺は横にいる体中にけがをしているクラスタに目を向ける。


「クラスタ。俺のベットの上で食べ物をこぼすんじゃない」

尋問中、俺たちの横ではクラスタが体中を包帯でぐるぐる巻きにされながら片っ端から食べていた。

食事を普段より多くとっている。というか普段のエリスぐらい食べている。

食事を魔力に変換し、体を治癒しているのだ。

魔素の濃度が低い人間界において魔族の力の補給、回復手段はほとんど食事からだとか。

そんなわけでさっきから俺たちの横でクラスタは手当たり次第に

俺の収納の指輪にある備蓄用の食料を食べていた。

今のクラスタの食事量はエリスを上回ると思う。


クラスタ曰く、オズマを訪ねてきた奴と喧嘩したらぼこぼこにされたという。

魔族であるクラスタが人間に一方的にやられるなど考えられない。


「そんなに強かったのか?」


「ああ、すげーよ。俺の攻撃を完全に見切ってやがった」

嬉々としてクラスタ。

ぼこぼこにされたことへの恨みは全くと言っていいほどクラスタからは感じられない。

あるのは強敵と戦った歓びだけである。

クラスタをここまで一方的にぼこぼこにする奴がいること自体驚きだ。


「先読みとかそんな能力あるのか?」

俺は小声で横にいるオズマに問う。


「おそらく呼吸を読んだのでしょう。

クラスタの剣速や力は人間と比べ物になりませんが、未だ剣術は覚えたて。

素人であるクラスタを手玉に取るなどそんな人間ならば幼子の手を捻るようなもの」


「おいおい、そんな人間いるのか?少なくともサルア王国には存在しなかったぞ?」

少なくともサルアの騎士団の中で打ち合える人間だけでも数人だけで、

クラスタを一方的に手玉にとれるほどの人間はいなかったはずだ。


「ええ。クラスタの話を信じるならば相手の剣の技術は達人の域にまで到達しております。

到達した人間ならば幾ら剣速が速かろうとも呼吸で攻撃のタイミング等を読むことなど容易いこと。

ただ、そこまでの剣術使いが人間にいることには正直驚きです」

正座しながら真顔でオズマさん。


「そいつはオズマより上ってことか?」


「どうでしょう。例えそうだとしても簡単に負けてやるつもりはありませんが」

オズマは不穏な笑みを浮かべる。負けず嫌いだよね。ホント。

というかオズマさん、すでに戦うこと前提で話を進めている。


「私もできればその男と手合せしてみたいところだ」

エリスもオズマの話に触発されたのか闘気を体から漏らしている。

…もうやだ。この戦闘狂集団。


「とにかくもう夜もかなり更けてるからお開きにする。

今日はいろいろあってくたくたなんだ。

セリア、エリス、まだ何かあるというのなら明日の朝聞くから今日は勘弁してくれないか」

俺はリーダー特権を発動する。


「しかたないな」


「ないわね」

よし、二人とも納得してくれた。


「ほらほら、自分の部屋に帰れ」

俺はここぞとばかりに皆を俺の部屋から追い出した。

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