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幕間1 『北』の魔族の会合

生物の息吹すら感じさせない極北の永久凍土の地にそびえたつ巨大な城。

きらびやかな調度品がそこかしこに置かれている、通路には血のように赤い絨毯がしかれている。

極北または『北』と人が呼び、人の未踏の地とも言われ、

その入口に突如、白の扉が出現し、極北に三人の魔族が帰還する。


「何であの三人組を倒さなかったの?あの三人組、制限のある『北』ではないし、

アルバなら一瞬で蒸発できたのに?」

眠そうな表情でシエル。


「馬鹿言わないで。私が力を出せばどんなに加減してもあの都市の四分の一は消し飛んでいたでしょ。

それに今日一日エスコートしてくれた殿方たちを信じるのもレディの務めですわよね」


「はっはっは。さすが我が娘だ」

ラーベは甲高い笑い声を上げる。

ラーベは娘と一緒にいることにご機嫌のようである。


「…ところでアルバはオズマ君にずいぶん迫っていたが…」

ラーベの一言にアルバは張りつけたような笑顔になる。

シエルはラーベの背後に黙って隠れる。

彼女を知る者からすればこれはかなり怒っているサインでもある。


「お父様?今日一日私たちをご覧になられていたのですか?」

アルバがラーベを笑顔で問いただす。


「す、少しだけだよ。身内に妙な動きがあると話があったはいったものでね。

も、もちろん裏切り者は既に見つけている」

最強の魔神の一角も愛娘にかかればたじたじである。


「父様。この際だから言っておきます。酒の席とはいえ部下に結婚を強要するなど

いつも話しているモラルに反することではありませんか?」


「…どうしてそれを…」

ラーベはしまったという表情になる。


「私も独自の情報網をもっています。

今後酒の席を利用して、オズマ殿に強引に結婚を勧めるというのであれば私にも考えがあります」

腕を組んで笑みを絶やさずアルバ。


「…」


「たとえば父様と一年間口を利かないとか」


「ぶっ、そ、それは…」

愛娘の一言にラーベは世界の終りの様な表情を見せる。

人類最強の一角を簡単にあしらう男にも弱点はあるのだ。


「でしたらオズマ様に今後結婚話はもち出さぬよう。この私に約束していただけますか?」


「わ、わかった」

しぶしぶラーベは納得する。


「はっはっは、ラーベは娘には型無しだな」

ヴィズンが豪快な笑い声をあげて近づいてくる。

彼もまたラーベと同じこの世界を最強の魔神の一角。


「なぜここに?」


「かたっ苦しいところは苦手でな。お主らがやってくるまでちょいと外でひっかけておった」

ヴィズンはくいっと酒を飲むしぐさをしてみせる。


「どうりで」

ヴィズンからは酒のにおいがする。


「お久しぶりです、ヴィズンのおじさま」


「おお、アルバとシエル、二人とも元気そうじゃな」

ヴィズンは二人の頭をくしゃくしゃに撫でる。


「ヴィズン助けてくれ、娘が反抗期なんだ」


「がはっはっは、それは成長したってことだろう。娘の成長ならば親は喜ぶべきだ」


「それはそうだが…」


「後で酒を持って俺のところに来い、酒のついでに愚痴を聞いてやる」

ヴィズンはラーベの肩に手を回す。


「気が向いたらな」


四人が一際大きなドアの前で立ち止まるとひとりでにドアが開く。

ドアの向こうには円卓を囲むように四人の魔神がずらりと座っていた。


中央にはゲヘル・カロリング。

その左右には子供の姿をし腕組みをしているゼロス=クルエルミ。

輪郭がぼやけているクベルツン=アーリア。

黒い翼をつけ考え事をしているネイア・フラトリス。

魔族の中でもそれぞれの部族を代表する顔役たちである。


「来たようだね」


「アルにシル、久しぶりですわね」

二人を目にしてネイアの表情が緩む。


「やっほー、ネイア姐」

アルバもシエルも小さく手を振る。


「遅れてしまったかな」


「三時間ぐらいね」


「これは悪い。少しばかり人間界で絡まれてしまってね」


「別に一日以内なら私たちには誤差ですわよ。それよりあなたに絡む馬鹿って人間界にまだいますのねぇ」


「それなりに腕の立つ男だった。同士に加えれば面白そうではある」

ラーベは楽しそうに語る。


「へぇ、じゃ、生かしておいたの。そりゃ有望株ですわね」


「気をつけなよ。人間ってすぐ死んじゃうからさ」

ゼロスが横から話に入ってくる。


「それには同意しますわ。五十年ぐらい放置してたらもう世代交代していますもの。

…そう言えばゼロスたちはいつからここにいるのでしょう?

ゲヘルとあたしがやってきた時にはすでにもういたみたいですけれど」


「僕とクベルツンは会合の連絡を受けた日からずっとこの部屋に待機してる」


「えっ。連絡来たのって…」


「…通知が来たのって二か月前…」

アルバを捕捉するようにシエル。


「暇人ですわね」

ネイアは大げさに振る舞う。


「暇人とはひどい言われようだね。端末を置いといただけさ。

ゲヘルもあるんじゃないかな。前もって端末置いておくこと」


「あんたの場合、会合を忘れるからですわよね」


「まあね」

下を出し、悪びれるようすもなくゼロス。


「こほん、それでシエル殿、戻ってきたところ悪いが調査のほどを知りたいのじゃが?」

ゲヘルがシエルに話しかける。


「…魔力を同調しようとしたけどできなかった。多分内部から阻害されてる」

眠たそうなシエルが声を出す。


「…なら後者と考えるべきか…しかしパールファダめ。何を考えている?」


「まったく、神族ってのはどいつこいつもわけのわからんことを…」

ヴィズンのおっさんがめんどくさそうに頭をかいた。


「さて今日の議題に移るとしよう」

ゲヘルの声に一同は静まり返る。


「この世界に外部から何者かが侵入した痕跡がある」

ゲヘルの一言に魔神たちのいる部屋の空気が異界に変わる。

人間でも居ようものならばその圧だけで失神してしまうほどの圧。


「ほう…」


「これはこれは」


「久しいな」


「フム、人間界に目立った混乱が少ないところを見ると手馴れているな」

頬杖をつきながらラーベ。


「侵入者の規模が気になりますわね」


「潜伏先まで辿れたのか?」

いつもとは違う神妙な面持ちでヴィズン。


「プラナッタ王国。ユウ殿のいる場所の近くじゃな」


「ほう…以前オズマの仕えていた人間の国か」

思い出すようにラーベ。


「へえ…」


「それも困ったことに反応があるのはプラナッタ国全体からじゃ」


「…うーむ、それは厄介な相手だな」

苦い顔でヴィズンは自身の髭を触る。


「このまま放置ってわけにもいかないだろ。こういう手合いは時間をかければかけるほど対処が面倒になる。

…取りあえず僕が出てってさくっと食べて終わらせちゃう?」


「あんたの場合は国ごとでしょ」

ゼロスの提案にネイアは呆れ顔で応える。


「当然」

ゼロスは不敵に微笑む。


「相変わらず悪食ですわよねえ」


「それはほめ言葉ととっておくよ」


「彼の国は精霊とつながりのある国。もし手を出すようなことをすれば神の園の連中が黙っておらぬじゃろう。

連中との軋轢を出すやり方はできる限り避けたい。

竜王亡き今、連中とのパイプはほとんど無いからの」

ゲヘルが話を戻す。


「ならどうするのさ。このままこの世界が黙って浸食されていくのを放置しておくつもりかい?」


「今回は精霊王の方で動きがあるようじゃ。こちらからは動かずに少し様子をみてみるとしよう」

ゼロスをたしなめるようにゲヘル。傍からみればそれは孫を諭す祖父である。

実体はかなり異なっているが。


「へえ…あの偉そうなだけで何もできない連中がね。ならいいさ。しばらく様子をみるとするよ。

…でもこれは僕に課せられた役割でもある。もし奴等の手に負えないのなら国ごとでもぺろりといくよ?」

ゼロスは舌なめずりをしてみせる。


「その時は好きにすると良い」


この会合の決定がユウたちの今後に大きく関わってくるのだが。

まだ彼ら自身そのことを知らない。

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