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これからの方針と目的です

「ここまでくれば大丈夫だな」

城壁の上に俺は腰を下ろす。

既に日は落ちていて、夜の闇が辺りに下りている。

キャバルの街の灯りがここからは良く見える。


ここまで来るまでに確認したが、街並にも少なからず魔族たちの爪痕があった。

あの建築物はかなり破壊してしまったが、犠牲者がいないだけでも良しとしてもらうことにしようか。


「それにしてもあの三人の魔族の魔力量はかなりあったな」

俺は傍にいるオズマに話しかける。

高位の魔族ならその魔力量を隠すこともできるが、あの三人の魔族は俺からも容易に感知できた。

だがあの三の魔族から感知した魔力量と実力がどうもかみ合わない。

内在していた魔力量の総量はかなりの量だ。

だからこそ警戒していたのだが。

その点がちぐはぐでどうも腑に落ちなかった。


「手ごたえがないと感じるのは封印から解かれたばかりだからでしょう。

それに魔族は魔力に頼った戦い方をするのが一般的です。


「…実はアルバ様は序列には含まれませんが、私よりも実力は上です。

その力を使ったのは千二百年前。アルバ様の不興を買った魔族ごと山が一つ吹き飛びました。

二千年前に封じられたブリオン一派はそのことを知りません」


「…それじゃあなんでオズマは彼女を守っていたんだ?」

オズマはアルバを護るように両手で抱えながら走っていた。


「アルバ様の固有魔力は『爆炎』と聞いたことがあります。

その能力は他の魔族の固有魔力を飛び抜けており『北』での使用は禁止されているほど。

アルバ様が力を使えばここキャバルが吹き飛びます。

もしアルバ様が力を行使した場合、それは主殿の意にそぐわないものと思いましたので…」


固有魔力はその魔族が魂に刻まれた型のようなものだとゲヘルから聞いてる。

魔力が最も変換しやすく、その魔族の戦い方を決定づけるモノだという。

山を吹き飛ばすアルバが街中で力を振るったならば、このキャバルは甚大な被害を被っただろう。


「…よくやったオズマ」

俺は一転してオズマをねぎらう。どうやらアルバは少女の姿をした核兵器だった様子。

オズマの言葉通りならばあの小太りの魔族の使った魔砲をはるかに越えるだろう。

一国の首都を吹き飛ばそうものならばマジで人間社会から排斥されかねない。


「恐縮です」

オズマは微笑み、頭を下げる。


「シエルもそんな感じ?」


「シエル様の能力は知りません。ただ、その力はラーベ様に匹敵するとの噂を耳にしたことがあります」

俺は今更ながらに背筋から冷たい汗が流れる。

核兵器少女二人目。あの三人組の魔族よりも実は身近にヤバい危険はあったのだ。

そして高位の魔族ほど魔力を隠すすべには長けているのだと俺は思い知る。

対応次第ではコルベル連王国が地図上から消えていたと思うと、今更ながら肝が冷えた。


「またこのことは六柱の方々とラーベ旗下のほんの一部の魔族しか知りません」

なるほどだからあの三人の魔族はアルバたちに脅威を感じていなかったわけか。


その上、アルバとシエルは保有魔力量を完全に隠ぺいできていた。

彼女たちを自分たちよりも弱いと錯覚してもおかしくはない。

実際に俺も魔力の量を感知できなかったし、オズマの話を聞かなければ弱いと錯覚したままだっただろう。


「オズマ、襲ってきた連中の背景について教えてもらえるか?」


「今回の三人の魔族はそれぞれボーロン、ゲルゴル、プルエンといい、

三人ともブリオンの配下にいた存在です」


「ブリオンってそういえば話にもでてきてたな」


「端的に申しますと、ブリオン様は二千年前に封印されたラーベ様旗下の魔族です。

魔族至上主義を掲げ、人間排斥による新たな世界秩序を目標にしておりました。

それに同調する者たちも少なくなく一時は魔族の中にも数千人以上の同士を従えていたと。

そして、ラーベ様の統治に異を唱え、魔族統治主義を掲げ、魔族の中で大規模な反乱を起こしたと聞きます。

ラーベ様によって鎮圧されましたが、隠れた信奉者も多く、未だ根強い影響力を持っております」


「魔族統治主義?」

俺は聞き慣れない言葉を耳にし、オズマに問う。


「端的に言えば人よりも優れた魔族が世界を統治し、正しく管理していくという考え方です」


「うーん、わからなくもないけどな」

その考え方はわかる。実際に前にいた世界では人間同士の争いが絶えなかった。

ただそのブリオンって奴の考えは俺には共感できそうもなかったが。


「彼らの反逆した魔族を我々は悪魔族と呼んでおります」


「オズマはその考えについてはどう考えているんだ?」


「私たちはこの世界において構成する一つの種族にしか過ぎません。

それを忘れ、自らをもっともすぐれた存在であり、それらを率いるという考えには

私はとても共感できませんでした」


「なるほどな…」

オズマの考え方には共感できる。


「そしてブリオン今から二千年前、彼らはラーベ様の反対を押し切り、人間社会への過度な干渉を開始し、

ラーベ様たちに罰として封印されたのです。

その期間は一万年。まさか彼らがまた地上で暴れだすことになるとは」

オズマは淡々と


「そのブリオンって奴はその力はどのぐらいなんだ?」


「ブリオン様は二千年前の当時はあのローファンよりも序列が上。

ラーベ様の片腕として活躍されていたお方です」

俺はローファンとの戦いを思い出す。


蒐集家コレクター』ローファン。

魔族でありながら人間界をさまよい、人の作った魔器をこよなく愛する変わり者である。

その実力は六柱を除いた魔族の中で会ってきた魔族では別格だった。

収納の指輪を使い、魔器を自在に操って戦う。

以前戦った際には俺がどうにか退けることはできたが、相手は魔力を一切

魔力の制限のある今の俺が戦うと命がけになるだろう。

A級ランクの冒険者が束になっても勝てるとは思えない。


「そいつらは俺たちでどうにかするしかないってことか」

俺は頭を抱えため息をつく。


「最悪の場合ですが…」

魔族の連中、人の話聞かないんだよなあ。

どうもこの世界にいる以上戦いは避けては通れなさそうではある。


俺は自分のもつ手札を考える。


俺は『始源魔法』を使える。俺の持っている固有魔力だという。

これは魔力に比例した奇跡を引き出せる便利なものである。

ちなみに今回あの魔族の放った『魔砲』の軌道を変えた空間を捻じ曲げるなどはかなり魔力を使った。

女神の呪いのために魔石と言う外部の魔力を頼っている状況では限られたものしか使えない。


現状手札で最強である『天月』の能力は女神の呪いのために最大限力を発揮できない。

もし無視して使おうとしても寿命を削るだけだし、いいところ全力で一振りといったところだろう。


『天の眼』からの宇宙空間からのレーザー砲は、攻撃を放ってから二回目まで一時間ほどのタイムラグがある。

不意打ちに一度使えるぐらいだろうか。


『収納の指輪』は今回活躍してくれたが、空間を把握している上級の魔族ならば、

わずかな空間の歪みから感知し、見切ることは可能だろう。

(一度、試験的にオズマに試してみたが全くと言っていいほど効果がなかった)


『黒蜥蜴』の変身能力は奇襲や潜入には長けているが、強い魔族との戦いにおいては使えない。


もし魔族と戦うのであれば新しい手札が欲しい。

ラーベからもらったネックレスを視界に入れる。

もし特性を理解すれば『収納の指輪』のように戦力になるかもしれない。


俺はオズマにネックレスの能力を聞いてみる。


「魔眼と同じ力があるってラーベは言ってたけど、

具体的に魔眼ってのはどういうことができるんだ?」


「…そうですね。魔眼は一部の魔族の能力です。

魔力を介して直接相手の魂に命令を刻み込むことができます」


「それは後遺症とかはないのか?」


「命令次第でしょう。以前、魔眼持ちの魔族からは簡単な命令であれば影響は軽微と聞いております」


うーん、絡まれたときとかのトラブル回避に使えるかな。

下手をすれば犯罪にも使えそうだし、あまり多用して慣れるのはよくはない。


「それと魔眼にかかっている間の記憶はどうなる?」


「魔眼を使っている最中は記憶があいまいになると言われています」


「力を抑えれば無意識に誘導することも可能ですが、

繊細な力加減が必要になりますし、その


「これはどうやったら使えるんだ?」


「魔力を込め、相手に命じれば」


「ちなみに俺自身にもかけられるのか?」


「それは無理ですね。かける側の術者がかからないようになっています」

オズマの言葉に俺は頭をかいた。

うーん、自分を実験材料にすれば一番良かったんだけどな。


「なら、しょうがないか」

他の人間を巻き込むのは気が引けるが、実害がないものにすればいいだろう。

足元を歩いているおっさんに試しにかけてみることにしよう。



「おい」

声をかけられ振り向いたおっさんは体を強張らせる。

そこには自分よりも大柄な男が立っていたからだ。


「な、なんだあんた?」

俺は念のために顔を覚えられないように『黒蜥蜴』の変身能力でいかついゴロツキに変化しているためだ。

おっさんの表情には明らかな恐怖の色がある。

俺は内心でおっさんに罪悪感を感じながら続ける。

俺はおっさんを壁に押し付け、黒のネックレスを見せる。


「これをよく見ろ」

手には黒いネックレスをおっさんの目の前に出す。


「なにを…」

意味が解らずおっさんは俺に言われるがまま黒のネックレスに目をむける。

俺は魔力を手にしたネックレスに込める。

魔力を通すとネックレスが俺の魔力になじむ感じがあった。


「この場で三回回って家に帰れ」

そう命じると同時に男は目の焦点を失い、三回その場を回り、ぼんやりと歩き始めた。

俺は変身を解き、オズマと一緒に少しおっさんの後をつけてみる。


「お、通りを歩いていたのに何で家の前にいるんだ?」

おっさんが家らしき建物の前にやってくると正気にも戻る。

俺のことも全く覚えていない様子。

おっさんは何事も無かったかのようにそのまま家の中に入っていった。

どうやら都合のいいことにかけられた前後の記憶は飛ぶらしい。

少しだけ俺の中の罪悪感が消えた。


「これは俺だけにしか使えないのか?」


「魔力を始めに通したモノが所有者となります」

拾って使われたらことである。

一日とはいえ王侯貴族を意のままに従えられるとかチート過ぎる。


「ちなみに二回っていう回数制限はいつリセットされるんだ?」


「日の出ですね」


「命令はリセットされないのか?」


「効力は丸一日続くはずです」


「…にしても詳しいな」


「ラーベ様の配下であったときにそれの実験に立ち会わされたので」

オズマさん、かなり苦労してそうだ。


「魔族にも効くのか?」


「魔力のコントロールに長けた者には効きません。

私はともかくクラスタ辺りはひょっとしたらかかるかも知れませんね」



「…ところでエリスには効かないのは当然としてセリアには効果があるのか」

勇者であるエリスには魔力関連が全く効かないのは当然としてセリアはどうだろう。


「セリア様には体内に蓄積する魔力容量が高いために吸収されてしまうために

吸収してしまうために効果はあっても薄いかと」

俺はそれを聞いて安堵する。


「これは封印だな」

セリアに効果がないのならよかった。

あとでこのネックレスの効果を後で知って責められることはないだろう。

セリアたちを信用していないわけではないが、秘密を知っている人間は少ないほうがいい。

それにこれはできるだけここぞというときに使うようにしたい。


このネックレスの命令次第で人を自分の好きなようにコントロールできる能力はちょっとやば過ぎだし、

知られた場合、俺は人間界で危険人物になってしまう。

その上肝心な魔族相手に効かないのであれば意味がない。


「とにかく一度帰ろうか。不本意ながらエリスたちも今回巻き込んじゃったからな」

二人の無事は『天の眼』を通して確認している。


「二人に話すことを考えると少し気が重いです」


「…実は俺もだ」

俺たちは互いに苦笑いを交わすと、帰路についた。


この時の俺は人間の側に魔族に対抗しうる戦力を持つ人間がいることを少しも考えていなかった。

そしてこれから今日の事件でかなり面倒なトラブルに巻き込まれていくのだということも。

キャバルの夜はゆっくりと更けていった。

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