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Aランク冒険者への昇格です

ゲヘルと会った翌日、俺はセリアとエリスを宿の前で見送りに出ていた。

セリアとエリスは二人でキャバルを見て回るらしい。


「ジャックさんとの話が終わってからでも来ればいいのに」

心底残念そうにセリア。

きらきら光る金色の髪、エルフ特有の整った顔立ちに、陶器のような白い肌。

そのエメラルドのような瞳で見つめられれば、大概の男ならば立ち止まり見惚れるほどだ。、

エルフの『先祖返り』であり、その容姿はまさに伝説と違わずと言った感じである。

さらに私服のセリアはとてつもない破壊力をであり、

その容姿は当然老若男女問わず人目を惹きつける。

おそろしいことに最近さらにその容姿に磨きがかかった気がする。


「悪いがちょっと無理だ。今日一日他に買いたいものもあるからな」

セリアと外で話しているだけで周囲からの視線が痛い。


「それの方が私たちよりも重要?」

俺に向けられるセリアの笑顔が怖い。


「必要だろ?」


「フフフ…冗談よ。けど私たちをすっぽかして他の女と遊んでいたら許さなかったかも」

セリアはいたずらっぽく微笑んだ。

その笑みに俺は思わず見とれてしまう。

小悪魔っぽいところもあるがそれを許される美人といのは役得だと思う。


「常識的に考えているわけないだろ。

そもそもこのコルベルににジャックさん以外の知り合いなんていないって」


「まあ、そうだけどさ」

セリアは背を向ける。


「セリアを頼む」

俺はすれ違いざまにエリスに小声でつぶやく。


「ああ。任せてくれ」

エリスは頼もしく頷いてくれた。


セリアの容姿に魅せられて邪な考えで近づいてくる者も多い。

ここまでの旅路で狙われそうになったことも十や二十ではきかない。


セリア自身には俺たちがもつような危機感知能力はない。

セリアは魔法使いであり、大規模な破壊力をもつ魔法を使える反面、

そのために物陰からや人ごみの中などからの不意打ちに弱い。

護身用の魔法はあるが今まで使ったことはわずかだ。

それというのも今までに俺やオズマがそう言った連中を撃退してきたためだ。

過保護ではいけないと思う。


「このキャバルに来てから違和感がある」

エリスは俺の言葉に無言で頷く。


「…気付いていたか」

俺はキャバルに入ってからという者妙な視線を感じることが多々あった。

羨望や嫉妬などの視線はなれているが、こちらをじっと観察するようななめまわすような視線。

それも複数あり、断続的に感じていた。

感覚的にこれは一番厄介なものだ。


「ユウ殿ほどではないが、これでも元勇者だぞ。私は」

エリスは腕を組み少し拗ねてみせる。


「悪い」

俺の場合は修業の成果とかいうのではなく魔族の特性みたいなモノだ。


「…硬い話はそこまで。ユウ、エリスを見て何か言うことはない?」

セリアがエリスの背後に

もじもじとエリスは上目づかいにこちらの表情を伺う。

セリアばかりに目を奪われがちだが、エリスも相当な器量の持ち主である。

癖のない長く伸びた銀色の髪は日の光に反射して煌めき、

意志の強さを物語るような真っ直ぐな瞳に整った顔立ちは美人だと思う。

それでいてすらりと伸びた長い脚。

まさに前の世界でいうところのモデルである。


「似合っているよ」

俺の一言にエリスの表情が少しだけ変化した。


「及第点。エリス、行きましょ」


「ああ」


二人はまるで歳の離れた姉妹のように話しながら俺から遠ざかっていく。

セリアはエリスを姉のように慕っている。

エリスならば相手が軍隊だろうと問題なく守りきると思っている。


念のため本人の承諾を得て、『天の眼』で座標は緊急時にわかるようにしてある。

『天の眼』というのは魔族の作った人工衛星であり、

俺の耳に着けたイヤリング『ルート』を操作できる。

俺が指示を出せば上空からの映像や、自身の指定した人間の居場所を教えてくれる便利なものだ。

魔族からもらったものだが完全にオーバーテクノロジーだろと思う。



「さて。ジャックさんとの待ち合わせの時間はもうすぐだな。そろそろ宿を出るとするか」

俺は二人を見送った俺は反転する。


「オズマ?」

気が付けば黒い影が俺の背後に立っていた。


「今日はお前の好きにしていいんだぞ?」

仲間たちには今日は好きにしていいと言ってあるはずだ。

ちなみにここにいないクラスタは朝の稽古の後、宿のベッドでのんびり寝ている。


「我が主に付き従うのが至上の喜びなれば」

オズマさんのこの言い回しどうにかならないものか。


「まあ、オズマがいいなら別にいいけどさ」

俺が承諾するとオズマはわずかに表情を緩める。

幻覚か、オズマのしっぽを振っているように見えた。

いつも思うけどなんでオズマはこんなに忠誠が高いんだろう?

俺、何かしたっけ?思い当たることはないが。



俺はオズマを連れ立ってジャックの居る冒険者ギルドまで出向く。

ギルドの受付カウンターに声をかけると奥からリティさんが現れ、

俺たちを奥のジャックの居る部屋まで案内してくれた。


「まあ、適当に座ってくれ」

部屋に入ると書類にサインをしながらジャック。

さらさらと気持ちの良い筆の音が部屋中に響く。

ジャックさんが座って仕事をするさまは様になっている。

…この人絶対仕事できる人だ。


しばらくしてジャックは立ち上がると俺たちの前に大きな袋をいくつか出してきた。

袋の先から金貨が垣間見える。


「先ずは今回の件の討伐報酬だ。ノルド金貨二千枚。確認してくれ」

ジャックはそう言って金貨を俺の目の前のテーブルに出した。


「ノルド金貨二千枚?」

俺はそれを口に出して固まる。

日本円にしてよそよ四千万円ぐらいだろうか。前にこの人が言っていた額の倍はある。

個別に分けたとしても一人あたり一千万近く…。旅費にするには少し大きすぎる金額である。


「それだけの評価をされたと思えばいい。むしろその倍を払ってもいいぐらいだ。

ただし、やはり急なこともあり、国庫の予算の都合もあってその額になった。

その上、オークは魔石ぐらいしか売り払える部位がないのもな…。

もう少し担当と増額を交渉してもいいが…」

俺が固まったのを躊躇したとジャックは考えたらしい。


「…あ、ああ。大丈夫だ。コルベルにはあまり長居するつもりはないしな」

俺の金銭感覚が狂ってきてる。一度の仕事でこれだけ稼げるとかシャレにならん。

さてどうやってこの金額を皆に公平に分配するか。

俺はとにかく目の前の金貨を収納の指輪にしまう。


「君らはそれだけの仕事をした。まさかオーク・キングが発生していたとは思わなかった。

が、その上でオークの集落を一匹も取り逃がすことなく討伐することができた。

加えて君らがいてくれたおかげで周辺の村々へ被害を最小限に抑えることができた。

ユウ君たちの機転に感謝している」

ジャックはそう言って俺に深く頭を下げた。


「仕事内容としてみてSランクの仕事内容だった」

言われて確かに。俺たちはギルドマスターのジャックの目の前でオークの一団を討伐している。


「Aランクの冒険者証だ」

ジャックが金貨のあったテーブルに五つのゴールドのカードと小冊子を置いた。


「これがAランクの冒険カードか。金なんだな」

俺とオズマはジャックに渡されたカードを手に取り、しげしげと見つめる。

俺は冒険者カードからかすかに漏れる魔力を感じ取った。


「ちなみにSランクはプラチナだ。興味が湧いたか?」


「いや別に…。これ、魔力が使われているんだな」


「気づいたか。偽造防止だよ。偽造して悪用しようとする輩が後を絶たないからな」


「偽造?偽造してどうするんだ?」


「その小冊子にも書いてあるが、Aクラスになれば冒険者ギルドのある国への入国がフリーパスだ。

加えて滞在する宿の割引や仕事の斡旋。旅費の一部負担が免除される。

さらにギルドと提携している国々ならば公共機関を自由に使うことができる。

ちなみに昨日俺が紹介した宿にはすでにそれは適用されているからな」

俺は唾を呑み込んだ。旅人としてはかなり魅力的な内容である。

コルベル連王国からカロリング魔導国に至るまでに、

これから少なくとも三つ以上の国を越えていかなくてはならない。

以前アネッサから聞いた話では国によって審査で足止めを食らう場所もあるのだという。


「他にも一定以上の貴族も護衛などを引き受ける場合、Aランク以上は優遇される。

実際、貴族お抱えの冒険者もAランク以上が条件というところもある。

さらにAランクの報酬はBランク以下の冒険者の報酬よりも高くなる」


「キツイ仕事が増えるってことか」


「報酬がいいんだ、当然だろ」

ジャックがぴしゃりと言い放つ。


「ちなみにAランクにいることが冒険者の中ではステータスになってくる。

Aランクは高額の仕事も請け負うこともできる上に、

街にAランクがいるという事実だけで安心感につながるからな。

田舎の街とかでは長期滞在するだけで金銭を払ってくれるところもあるぞ」

珈琲を飲みながら当然のようにジャック。…それ遊んで暮らせるってことだよね。

偽造防止って確かに必要だと思う。

今更だけど俺たちがそんなAランクになってよかったのかと思う。


ちなみにサルアにいたときにウーガンのおっさんに聞いた知識によれば、

冒険ギルドのランクはS、A、B、C、Dとわけられているらしい。

それというのも厳密にランクを分けてしまうとそのせいで仕事を受け負えなくなることもからだ。

Dは駆け出しの冒険者や負傷などの原因で魔物と戦えなくなった者。

Cは小型の魔物討伐や素材集めが中心で、Bランクは単独で一般の魔物を狩れるのが条件になる。

大概の冒険者はBかCであるという。


ただAランク以上となると話が違ってくる。大型の魔物を狩ることが視野に入ってくるためだ。

命の危険もかなり跳ね上がるし、失敗すれば被害が大きくなる恐れもある。

戦場において連携も取れなくてはならない。

そのためギルドはAランクへの審査を厳格化しているという。

そのためAランクの冒険者となれば冒険者ギルド全体で現役なのが五百人ほどだという。

成り行きとはいえそんなエリート集団に俺たちがいきなり入ることになるとは思ってもみなかった。


「なるほどな。それでこっちの小冊子は?」

紙とまではいかないが、この世界においてはかなり貴重である。

それが小さくぽんと置かれている。


「そっちの小冊子は少し貸すから目を通しておくといい。Aランクからは少し勝手が違ってくる。

まあ、目を通す冒険者なんてほとんどいないが」

俺はその小冊子をぱらりとめくる。

何やらかなり細かく書かれており、小冊子ながらぎっしりと文字が並んでいる。

文字はある程度読めるようになってきているがここまでくるとさっぱりだ。

セリアに見せて説明してもらうとしよう。

俺は冒険者カードと小冊子を収納の指輪にしまった。


「降格とか失効期限とかあるのか?」

ゴールドのギルドカードを見ながら俺はジャックに問う。

魔導国に着いたらある程度放置して降格されそうだ。


「実績が伴わないとか、依頼を受けないとかBに降格されることも稀にある。

失効はAランクに上げるための審査は厳格化されてるし、それは本当に稀なケースだな。

それとAランク以上のギルドカードは裏社会でそれなりの値段で取引されてる。

紛失した場合、再発行の手続きはかなり煩雑だ、最悪の場合、冒険者ギルド永久追放処分になる」

俺はそれを聞いてカードを落としそうになった。

無くしたら大変だし、俺のカードは収納の指輪に入れっぱなしにしておいていいかな。


「Aランクの義務とかはあるのか?」


「大規模な討伐戦には強制参加させられるぐらいだろうな」

まあ、大規模な討伐戦とかなら報酬もかなりあるから願ったりではあるが…。


「それと二か月音沙汰なしだと何処に滞在しているのかギルドに勝手に調べられる」

ギルドにとって数少ないAランク冒険者がどこにいるのか、

そして生死を把握することは重要なのだろう。何せギルドの主戦力でもある。

報酬の多い大規模な討伐戦とかの情報も入るから俺たちにはプラスと考えられなくもない。



「…勧誘は少し多くなるがな」

ぽそりとつぶやくようにジャック。


「勧誘?」

それはなんか聞き捨てならない。


「…Bランクはうじゃうじゃいるが、Aランクになれる人材となれば限られてくるからな。

いろいろなパーティやユニオンから目をつけられる」

それ一番ダメなやつじゃないですか。

人間の社会で目立つ行為はちょっとしたくない。


「このぐらいの些事、あんたらなら面倒事にもならんだろう」

ジャックが俺の表情からこちらの気持ちを読んだのか、俺の肩をポンとたたく。


「それにオークの集落を単独で壊滅させるパーティBランクにおいといちゃ、

上のほうから俺の評価方法を査問にかけられかねない。

納得できないというなら事故にあったと思って諦めてくれ」

にこやかな笑顔でジャック。ちょっと怖い。こっちがジャックさんの本音だろう。

…まー、そうなりますよね。


「オーク・キングを倒した君らならSランクにも引き上げてやれないこともないが…」


「それは全力でお断りします」

これ以上変な方向にもっていかれてたまるか。

それなりの立場を得るということはそれなりの厄介ごとを引き受けるということでもある。

ただでさえ悪目立ちしている現状でこれ以上の厄介ごとはマジで勘弁してほしい。


「ははは。冗談だよ。Sランクは審査もあるし、国への申請もあるからな。

どんな優秀な冒険者でもまずはAランクで様子見するのが定例になってる」

ジャックにからかわれた感じだが、俺からすれば冗談に聞こえません。

ちなみにSランクはの条件は単独で大型の魔物を撃破できること。

個人だけで戦術級から戦略級の力を保有している者がなるものらしい。

ちなみにSランクは冒険者ギルドの中でも現在十人しかいない。

それらは『十天星』と呼ばれているという。

少し前に俺たちと出会ったイーヴァもその一人だ。

ちなみにその連中とはこれから連中の方から積極的に俺たちに関わってくるのだが。


そのあとジャックからAランクになるにあたっての形式的な説明を受けた。

そんなわけで俺たちは正式にAランク冒険者に昇格したのだった。

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