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尾行されました

「にしてもすごい視線だった」

ヒューリックの街を出て人目がつかない場所までくるとセリアが吃驚したようにそう言う。


「セリアは目立つからな」

セリアは輝くような容姿をしている。

成長期なのか初めて会った時よりも全体的に丸みを帯びている気がする。

最近はそのしぐさに俺ですらドキッとさせられることもしばしばある。


「私、フードでもかぶろうか?」


「いいや…」

多分セリアだけじゃない。

俺はともかく、オズマもエリスもクラスタもかなり目立つ容姿をしている。

全員フードつきで行くとか…。どんな怪しい集団だろう。村や街に入る前に呼び止められそうだ。


「…馬車があればな」

小さく俺がつぶやく。もし馬車があればもう少し穏便に通過できそうな気がする。

一応車の部分はすでに買って収納の指輪に入れてある。だがそれを使うには致命的な問題があった。


「引ける馬がいねえんだから仕方ねえって」

クラスタが笑いながら言ってくる。そうそこなのだ。

馬がオズマを怖がって馬車をひかないのだ。

オズマの正体は巨大な狼の化け物である。馬はそれを本能で知っているのか逃げ出そうとする。

一日二日ならばいいのだが数日となればストレスでおかしくなる。

こればかりは本能的なものがあると思う。

馬車の旅に憧れて用意はしたものの、まさかこんなところで問題にぶち当たるとは思わなかった。


「ならば私が引きましょう」

オズマが声を上げる。

オズマは魔族であり、『ルプスティラノス』という巨大な狼が本当の姿である。


「『ルプスティラノス』って言ったら伝説級の化け物と聞くけど…。

そんなのが馬車を引いていたら村の人間が警戒するんじゃない?」

セリアの言葉通りである。


「というか、この国の軍や騎士団が総出でやってくるな」

エリスは苦笑いを浮かべながら指摘する。

…軍や騎士団総出って…何それ怖い。


「オズマさんは騎士団にいたと聞きました。その時に移動はどうされていたのですか?」

セリアがオズマに問う。オズマは七星騎士団と言う場所にいたらしい。

その中でも『黒獅子』と呼ばれる最強の騎士だったと。

たしかに馬に乗れない最強の騎士とかあり得ないな。


「…そうですね。昔七星騎士団にいたときは愛馬がいました」


「まじ?師匠を恐れない馬なんているのか?」

クラスタが大げさに反応して見せる。これはさすがにオズマにごつんと槍で頭を叩かれた。

よほど痛かったのか、クラスタは道端で頭を抱えながらうずくまる。

オズマさん、加減はしているんだろうけど、かなり重い音でしたよ。


「こればかりは相性でしょうか…」

何事も無かったかのようにオズマさん。


「オズマを恐れない馬か…」

俺は以前にいた世界の知識を思い返していた。

三国志の呂布みたいな感じだな。あの馬は赤兎馬だったか。

むしろオズマの場合は呂布というより関羽に近い気がするが。


「主殿」

オズマが小声で話しかけてくる。

先ほどとは声のトーンが違うことにオズマの言いたいことを察する。


「オズマも感じるか?」

先ほど立ち寄ったヒューリックの街以降妙な視線がずっと付きまとっている。

この付きまとうような視線は人間特有のものだ。


「ええ」

どうやら気づいているのは俺とオズマだけのようだ。

他の仲間はいつも通りにしている。エリスやクラスタは気付いていない様子。

二人が気づかせないということはかなりの使い手らしい。そこが問題だった。


俺は移動しながらさりげなく『ルート』を触り、『天の目』を使って視線のくる方角を探る。

ちなみに『天の目』というのは人工衛星であり、『ルート』はそれのコントローラーになる。

とある事情によりある魔族から頂いたものだ。

俺はかなり離れた場所からこちらを監視している男を見つける。


こいつだ。


俺は念のために『ルート』でマークしておく。

注視していると俺たちの後を一定の距離を保ちながらつけてくる。

正直、尾行されるというのはあまり気持ちのいいものではない。


「相当な手練れですね」


「だよなー」

それには同意する。オズマは文字通り鼻が利く。

俺も視線を感じられるという能力がなければ見逃していたと思う。

エリスやクラスタの注意をかいくぐれる


「許可していただければ私が屠ってきますが」

オズマは一瞬、ひやりと冷たい殺気を纏う。


「それはやめてくれ」

駆除する手段はいくつかあるが、相手の目的がわからない以上、あまりその手段は使いたくない。

というか付け回しただけで殺されるってどこの極道だっての。

かといって相手はかなりの使い手である。このまま放置って言うのも気持ち悪い。


「みんなちょっと歩いたままで聞いてくれ」

俺の声に注目が集まる。


「俺たち、どうやらつけられてるようだ」

エリスとクラスタが驚いた表情を見せる。


「本当か?いつからだ」

エリスが少しだけ目を細める。


「さっき立ち寄ったヒューリックの街からだ」


「気づかなかったぞ」


「俺もだ」

エリスもクラスタも表情には出さない。さすがに二人とも場馴れしている。

ちなみにセリアはそう言った感知能力は無い。


「私が行って見てきましょうか?」

カラスのアタが俺に聞いてくる。


「アタ、申し出はありがたいが大丈夫だ。

このまま尾行されたままってのも気持ち悪いし、俺が直接行って話をつけてくる。

オズマ、一瞬だけ奴の注意を惹きつけてくれるか?」


「わかりました」

オズマは頷くと手を握ると横にある木を叩いた。

ドンという大きな音が森の中に響き木が揺れ、鳥が鳴き声を上げて飛び立っていく。


俺は同時に思い切り地面を蹴り、その男の見える場所まで跳躍する。

景色が一瞬で森の上空に出る。魔族である脚力は人間のはるか上をいくためだ。

空に飛び上がった俺は『天の目』の指し示す場所に向かう。

そこには俺たちの後をつける一人の男がいた。上空から見れば一目瞭然である。

魔石を使って足場を作りながらその男のいる場所に近づいていく。

着地の際に魔石を割って魔法を使い衝撃を打ち消す。俺は男背後に着地した。


「こんにちは」

背後から声をかけられ男はびくりと反応する。


「さっきの村を出てからずっとつけてましたよね。どうしてか教えてもらえます?」

俺は出来るだけ丁寧に男に語りかける。男は驚いて声も上げられない様子。


「…」


「教えていただけないのなら敵と判断しますが?」

この手の相手は多いので既に日常化してしまっている。

セリアの容姿のせいで言い寄ってくる男どもが多すぎるためだ。

俺は収納の指輪から『天月』を取り出す。


「収納の指輪?そんなものまで…」

男が驚こうが知ったことではない。


「…こっちの質問には答えてくれないようなので強制排除させてもらいますね。

…二三本骨は折れるでしょうが、人を尾行してはいけないという教訓に対する授業料だ

と思ってください」

俺は嘆息し、鞘のついた『天月』を振りかぶる。


「まてまて。俺は怪しいモノじゃない」

そう言って男は両手を上げ降参のポーズをとった。

俺たちを尾行しておいてどの口がいうのだろうと思った。


「俺はキャバルのギルドマスター、ジャック・リート」

俺は男の語るその肩書から厄介ごとの臭いを感じ取る。

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