同行することになりました
例のいざこざの後、俺はエルゴと言うギルドマスターに会った。
後からやってきたヒューリックのエルゴはオズマ達の力をみたらしく、簡単な質問で済んだ。
あれならオーク・キングを殲滅してもおかしくないと思われたらしい。
ジャックが証人になってくれたことも良かった。
その後でヒューリックでエルゴから紹介してもらった宿に一泊した。
オーク・キングを退治した英雄待遇で貴族が泊まるような宿を紹介されたんだが…。
…まあ、とにかく信用してもらえてよかった。
ヒューリックからキャバルの道中、昼食を取るために休憩に入っていた。
「それにしてもヒューリックの件は凄かったな」
ジャックはセリアの作ったサンドイッチを頬張っていた。
パンに切り込みを入れ、チーズに野菜やベーコンの様なものをはさんだものだ。
セリア特製のマーガリンがその味を引き立てる。
俺がセリアに話した前の世界のサンドイッチを再現したものらしい。
これは前に一度作ったものであるがパーティ内では好評であり、
うちの定番のメニューになっている。ちなみにエリスはもう十数個食べている。
エリスさん、大食い大会に出ても負けないと思う。
「ああいう手合いには体でわからせるに限る」
オズマが当然のようにスープを片手に語る。
「にしても歯ごたえねえな。アレがAランクかよ」
クラスタが不満をこぼす。
「彼らは別に弱くはないさ。君らが強すぎるだけだ」
「互いに訓練していたほうがまだ身になるな」
横からパンを頬張りながらエリス。
「違いない」
一同頷く。
「…それでジャックさんはなんで俺たちと一緒にいるんですかね」
実はあの後、ジャックはずっと俺たちと行動を共にしている。
第三者がいるとちょっとやりにくいこともある。
第三者のいる状況ではおちおち魔族のゲヘルとも連絡を取れない。
相手はギルドマスターでもあるし、こっちが魔族の関係者であると知られるのはできるだけ避けたい。
それにアタとか、ずっとカラスのふりをしてもらっていた。
「成り行き上だ。旅は道連れと言うじゃないか。それに君らもキャバルに向かっているのだろう。
丁度いいじゃないか」
スープでサンドイッチを呑み込みながらジャック。
「俺たち以外にもキャバルに向かう冒険者チームはいたはずですがね」
特にあの赤い冒険者のパーティとか。
「いやあ、ここで食べたセリアちゃんの作った食べ物を忘れられなくてね。
このサンドイッチというのも絶品だな」
ジャックは舌つづみを打つ。
「ありがとうございます。おかわり要りますか?」
嬉しそうにセリアは微笑み。
「ああ。すまない。頼むよ」
にこやかにジャックが言うとセリアが空の皿とともに料理を取りに戻る。
「なんかねぇ」
ちゃっかりパーティに溶け込んでいるジャックを俺は頭を抱える。
「それに俺が一緒にいるといろいろと便利だと思うぞ?」
ジャックは自身の有用性を解き始める。
「職業柄こういう旅には慣れている。よい旅には案内役は付きものだろう?
それに俺はコルベルの警備隊にも知り合いが多い、旅のトラブルもある程度回避できるだろう。
コルベルは俺のホームでもあるからね」
ジャックの言うとおりである。
仲間の中で見ればオズマとクラスタは旅慣れしているが、
戦闘狂であるために道は知っていても旅の愉しみ方を知らない。
エリスはデリス聖王国とその周辺でほとんど活動していたために、
コルベルの西方にはあまり来たことがないのだという。
ちなみに旅の経験のない俺とセリアは論外である。
「…まあ確かに」
ジャックはギルドマスターだけあって交渉術に長けている。
自分が同行するメリットをつらつらと並べ立てられ思わず頷いてしまう。
「早く帰らないと部下が納得しないんじゃないですか?」
食事を手渡しながらセリアが心配そうに声をかける。
「オークの後処理ってことで誤魔化すさ。
正直オーク討伐は後処理も含めて最低でも二週間以上はかかると見積もっていたからな。
部下にもそう言って出てきてはいる」
あの数のオーク、普通の冒険者にとって倒すのも困難の上に、
オークの死体処理も含めれば相当な人手と時間がかかったと思われる。
それが一日足らずで終わるのはさすがに誰も想定していなかっただろう。
「そうだ、キャバルについたら君らには今回のオーク討伐の報奨金を支払おう」
「え?あれの討伐の報奨金なんて出るのか?」
ジャックの言葉に俺はついつい反応してしまう。旅で稼げるときに稼いでおきたいのだ。
この先、立ち寄る街に運よく依頼があるとは限らない。
特に食費が…結構かかっている。誰とは言いませんが、一人食いしん坊がいるのだ。
サルアで冬の間稼いだ金は四分の一ぐらいはすでに使ってしまっていた。
ちなみにエドワルドからもらった白金大金貨(一枚二千万円相当)は五枚そのまま残っているが、
アレはセリアの学費に充てたいと思っている。
「当然だ。ああいう災害への対応として国家はあらかじめ予算枠を定めている。
それに対応した君らにはそれに見合った報奨金が支払われるというわけさ。
今回討伐したのは君らだし、報奨金は君らがほぼ総取りだろうな」
総取りって…Aランクの冒険者チームが束になる相手だという…。
Aランクの冒険者チームを呼ぶだけでもかなりの金額が必要になってくるだろう。
それを総取りとか…。ちょっと怖ろしいんですが。
「ど、どのぐらいになる?」
「ざっとノルド金貨千枚はくだらないだろう」
「ノ、ノルド金貨の相場を聞きたい」
今までどうにかカルネ金貨圏だったために支払いはすべてカルネ金貨で行ってきた。
街道沿いだけあってその点では融通が利いていた。
現在持っているカルネ金貨はサルア王国の通貨である。
サルアから離れるにつれてだんだんその融通が利く場所も少なくなってきている。
サルアの力の及ぶ地域から離れてきているのだ。
そのためそろそろ通貨を交換しなくてはならないと感じ始めていた。
「なるほど、君らのいたサルア王国はカルネ金貨が主要通貨だったな。
コルベル連王国で使われる主要通貨はノルド金貨。
ちなみに交換比率はノルドとカルネ金貨とほぼ1:1だな。若干カルネの方が低いか…。
金の質は鉱山を多く持つサルアのカルネの方がいいのだけどな」
さすがギルドマスター。ジャックはそう言うことも知っている様子である。
ちなみにカルネの相場は前に住んでいた世界で二万円ぐらいと見積もっている。
この場合少なくとも二千万の大金になるということだ。
一回の仕事でこれだけもらえるとか最近じゃ当たり前になってきてはいるが、どうも慣れない。
「両替の場所もなかなかないし、両替の際にボったくられる可能性も高い。
俺ならいくつか良心的な交換場所を教えられるが?」
ジャックはすかさずこちらの足元を見てきた。その言葉に俺はかなりぐらっときた。
「それにこの先の街では顔見知りの宿もいくつか知ってる。コルベルの特産物もかなり知ってるぞ」
エリスとセリアがこれにはぐらっと来たようだ。
二人とも俺に訴えかける眼差しを向けてくる。
セリアは純粋な料理への好奇心、食いしん坊のエリスはもちろん言わずもがな。
これが決定打になった。女性陣を味方につけられてはもう打つ手なしである。
アタが何か訴えるような眼差しをこちらに向けてきている。
…アタには悪いがもうしばらくただのカラスのふりをしてもらおう。
「わかりましたよ。降参です」
俺は観念し、ジャックを受け入れることにした。
「よろしく頼む」
こうしてキャバルまで俺たちに一人同行することになった。




