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面倒事になりました

決闘はヒューリックの冒険ギルドの修練場で行われることになった。

遠目から大勢の人がこちらを見守っている。

ジャックとセリアはユウから少し離れた場所で二人並んで立っていた。


「ジャックさん」


「セリアちゃんなんだい?」


「こうなると思ってユウのことを誘ったのでしょう?」


「驚いたな」

ジャックは素直に驚いていた。

それも年端もいかない少女に自身の胸中を見抜かれるとは思わなかったからだ。


「私は皆と違って気配を読むとかそう言うのはできません。

ただ人の表情とかには常に気を配っているんです。

ジャックさん、今日になってからずっとユウのこと何度も見てましたよね」

セリアはジャックに問い詰める。


「…やれやれ、君もとんだくわせものだな」

観念したようにジャック。


「相手は強いんですか?」

セリアがジャックに問う。


「『熱穿』のフレッグ。Aランク冒険者でも中堅といったところだろう。

あれで喧嘩早くなければユニオンやら国から誘いがくる人材だ」


「そんな彼をけしかけた目的は?」

あの場を穏便に済ます手段ならあった。だが、ジャックはあえて相手を煽る手段を取っていた。


「…正直俺が見てみたいんだ。他のメンバーの能力ならある程度見させてもらった。

だが彼だけはわからない。その戦法すら…ね。オズマは彼を自分は足元に及ばないと言っていた。

だとすれば俺の物差しで測れない存在。その彼が一体どれほどのものなのか」


「…なら、驚かないほうがいいですよ?」

セリアはくすりと微笑んだ。


修練場の真ん中に俺は連れてこられた。

周囲には俺たちを見ようとかなり多くのギャラリーが遠目でこちらを見ている。

彼らにとっては見世物のようで囃し立てる声が聞こえてくる。


「あのー。こういうのやめにしませんか?」

俺は相手の男に出来るだけ丁寧に語りかける。暴力反対。

そもそも戦うことに何の意味も見いだせないんですが。


「おいおい、荒事も自分で処理できねえ腰抜けが冒険者名のるんじゃねえよ」

眼つけられた。オズマとは違った意味で迫力がある。

ちなみに前の世界ではこういうのに絡まれた経験はない。

前の世界でいうところヤンキーといったところか。


「いえ、そうではなくて平和的に解決しませんかね」

俺の言葉に赤い冒険者は青筋を立てる。…なんかすごいめんどくさい。

俺は嘆息する。


「なんならあの嬢ちゃんとでもいいんだぜ?」


「セリアと?」

俺の一言に少しだけほんの少しだけ苛立ちを感じた。

何か感じとったのかフレッグの表情ががらりと変わる。


「…そう来なくっちゃな」

フレッグは抜刀し、斬りかかってきた。

俺の前を剣が空を切る。俺はそれを紙一重で躱す。


「本気で来い。この俺に実力を見せてみろ」

相手の斬撃が俺の目の前にまで迫る。俺は刃を手でつまんで受け止めた。

相手の剣圧が風となって俺の頬を撫でる。

この程度、魔族の動体視力と力があればなんてことはない。


「おお」

俺が剣を片手で受け止めたことにより周囲から声が上がる。


「…あの速度の剣を片手で受け止めるか」

ジャックはそれを見て目を丸くする。


「もういいでしょ?」

俺はフレッグに再度語りかけた。


「い、今のは油断してただけだ。こうなりゃ本気だ」

俺の言葉にフレッグが動揺する。なんか二流の相手っぽくなってきた。

フレッグは後ろに飛び、間合いを取ると魔剣の力を解放させる。

修練場を熱気が包み込む。この男、今度はかなり本気っぽい。


「バーニングレイピア」

剣が火を宿し、弾丸のように鋭い突きの連打で俺に迫る。

さっきと違い触れば熱そうなので俺はそれを後ろに跳び、避ける。


「逃げるだけじゃ戦いにならねえぞ」

そう言ってフレッグは前かがみになって俺に向かってくる。


「そうだな」

相手がこちらに踏み込んできたのを見計らい、

俺はちょいと前進し、間合いを詰め、剣の柄を前に引っ張り、足払いをかけた。

勢いがついていたためか、相手は凄い勢いで転がっていった。

うん、我ながらうまく決まったと思う。これならばフレッグさんもけがはしてないだろう。


それをセリアと見ていたジャックは顔を青ざめさせていた。

「驚いたな…。まさかこの俺がこの距離で動きを見失うとは…」


ジャックは大概の事が起きてもそれを見逃さないようにしていた。

距離を取って躱していたユウの一瞬だけ姿が消え、気が付けば男の前にユウがいた。

格闘戦においてある程度距離が離れていればその動きを目で追うことができる。

もし直に戦ったとすれば相手の動きすら見えずに一方的にやられるのだ。

それはつまり戦いにすらならないことを意味する。


「でしょ?」

セリアが横でなぜか得意気にしている。


「まだだ。今のは俺が躓いて転んだだけだっ」

フレッグは激昂し、立ち上がる。

足場が砂場なのでそれほど大きな怪我は負っていない様子。


「おいおいまだやるつもりなんですか?」

別に煽ったわけではない。俺は純粋にこの面倒なことをやめて貰いたいだけだ。

だがフレッグと言う男、煽られたと感じたらしい。


「うるせえ。こうなりゃこっちも全力で相手してやるよ」

全身に炎を纏わせフレッグさん。あの火って熱くないのかな?

困ったことにこっちはオズマたちのようにうまく加減ができない。

相手は生身の人間だし、うっかり殺したりしたらシャレにならならん。

いきなり人殺しの犯罪歴とか本当に勘弁してほしい。


「止めないんですか?」

さすがにセリアがジャックに声をかける。


「うーん、そろそろ頃合いだな…」

ジャックはそう言って一歩踏み出す。


「はあ…」

俺はため息をつく。こうなれば骨の二三本は覚悟してもらうとしよう。

殴ったらまた内臓に損傷を与えてしまいかねないので、鞘のついた『天月』を使った方がいいだろう。

俺は『天月』を収納の指輪から取り出そうとしたその時、聞き慣れた威圧的な声が背後からかかった。


「…ジャックさん、止める必要もなくなったみたいですよ」

セリアが肩を竦める。


「我が主になんの用か?」

一人の男が黒い槍を片手に仁王立ちで修練場の入り口に立っていた。

黒い鎧を纏い、怖ろしいまでの存在感を醸し出している。

その場にいる冒険者たちの視線がその男に釘付けになる。


「ユウ殿は少し目を離せば妙なことに巻き込まれているな」

少し笑いながらエリス。言い方は丁寧だが剣の柄に手をかけ臨戦態勢である。


「おー、また厄介ごとか?」

嬉々としてクラスタ。こっちは今にも戦いたいとうずうずしている。

オズマは俺の臭いを追いかけてやってきたのだろう。彼の脇にはクラスタとエリスもいる。

奇しくもこの修練場に俺のパーティが揃ったわけだ。


「なんだあの黒騎士?」

ざわめきがその場を支配する。オズマが入ってきただけでその場の空気が変わった気がする。

さっきまで俺に絡んできた奴も一瞬でオズマの雰囲気に飲まれた模様。

うん、やっぱりオズマさんすごいわー。いるだけで説得力がある。


「…なるほど。我が主に負け、まだそれを納得していないと?

ならこの私がその性根ごと存分に叩き直してやろう」

状況を見てオズマは今の状況を察する。オズマからは物騒な殺気がだだ漏れになる。

修羅場を何度も経験しているであろう冒険者たちはそれを察し完全に委縮してしまっている。


「あー、俺もやるわ」

わくわくしながらクラスタ。二本の剣を抜いた。


「うむ、食後の運動にはちょうどいい」

エリスはすでに準備運動に入っている。言い回しから食事もしっかりと食べてきた様子。


「よく来てくれた…って、おーい」

俺の方は無視のようです。うちの人たちって人の話を聞いてくれません。

…皆さんやる気ですよ。どうしてうちのパーティにはこう好戦的な奴が多いのか。


この後のことはあえて言う必要もないだろう。

オズマたち三名に冒険者集団はぐうの音も出ないぐらいに徹底的に打ちのめされましたよ。

そのあと不完全燃焼のオズマやクラスタ、エリスは戦闘訓練し、皆の度肝を抜きました。


…途中で何度も止めたんだけどね…。…リーダーってなんだっけ。

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