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鏡の中  作者: 霞合 りの
第十六章
126/154

126 報告と手紙

「今、カーターをやって、お呼びしようと思っていたところだったんだ」


ノアが不思議そうに私を見た。すごく言いにくくなってしまった。


「何かあったの?」

「うん……うーん……」

「ソフィア?」


心配そうに私の様子を伺ったノアは、手元にあった封筒をスッと掲げた。


「気がかりなのはこれ?」

「それは……何?」


聞きながら、なんとなくわかった。あれはきっと。


「隣国のウルソン王子からの手紙です」


やっぱり。私が視線をそらすと、ノアは手紙に視線を落とした。


「先日のお見合い、ウルソン王子から、魔力の判定の話をされたのは知っているよ。でも、アンソニー殿下がうまく止めてくださると言っていたんだ」


冷静な口調に育ってきた当主らしさを感じられて、私は少しホッとしていた。まだ若いけれど、ノアならきっとやっていけるだろう。そんなこと言って、もともと、その予定だったわけだし、私が心配することでもなかったかもしれない。


「そうなの?」

「うん。……でも、できなかったみたいだね」

「えぇ、できないと思うわ。先日、私、王宮に行ったでしょう。その話をしてきたのよ」

「そうなの? てっきり、リアンの話をしに行ったのかと思ってた」

「なくはないけど、それは一部に過ぎなくて、メインは魔力鑑定の話」


ノアは少し視線を上げて私を見ると、不思議そうに首を傾げた。


「でも……あの鏡は、まだ呪いがかかっているんでしょう? どうするの? ソフィアも呪いの影響で、魔力がついているんだったよね? ……でもそうか、もう呪いは解けたから、なくなったんだっけ?」


だんだんとノアの声が明るくなっていったが、私は反面顔を曇らせていたらしい。ノアはふと口を閉じた。


「そうね……そのことなんだけど……」

「何か……言いたくないことなの? 悪いこと? いいこと?」


私はノアに、鏡に魔力がないと嘘をついたことを、正直に伝えた。私自身には魔力がないため、鏡に影響を受けている時しか魔力を検知できないことを利用して、ウルソンを誤魔化してしまった。そのことは、アンソニーも知っていて、口裏を合わせてもらっていると。


「鑑定に来たらバレてしまうのでは……」

「その前に、”ただの鏡”に戻すわ。協力してほしいの。鏡の魔力をなくすのは、私の務めだと思ってる」

「でも……それは危険なんじゃないの? 魔力は暴発する時もあるというし、あの鏡の魔力はとても強いって。リアンはなんて?」


私は首を振った。


「言ってないわ」

「どうして?」

「どこから話していいかわからないから」

「あぁ、……」

「呪いのことから、リアンの望みを叶えることまで、言わないとならないかもしれない。そうしたらリアンは……」

「溺愛が増すかもしれないね……!」


ノアは悩ましげに眉をひそめた。弟によく似た姿。今度こそ、見届けたかったんだけどな。諦めちゃいけないけど、なんの代償もないなんて、うまくいきそうにない。


「それだけならいいけど……」

「他に何か? 幻滅されないかって? いやぁ、リアンはどんなソフィアでも大好きだと思うよ。この二年、ずっと一番近くで見てきたんだから」


それならなおのこと言いにくい。だが、それなら余計にノアにはしっかり伝えて、協力してもらわなければ。


「ノア。私は鏡の力でここに存在してるかもしれないの。だから、鏡の力がなくなったら、私も消えるかもしれない。その時に、リアンの力になってほしい」

「それはダメです」


間髪入れず、ノアが驚いた顔で言った。


「無理というか……消えるかもしれないのなら、なおのこと、鏡が残っていてもいいのでは?」


私はそこで、何度も説明した理由をまた繰り返し、最終的に納得してもらえはした。が、みんなと同じように、非常に不本意そうなノアだった。


「まだわからないよね?」

「そうね。でも、覚悟はしておいて」

「……早すぎるよ」

「葬るのが一番よ。ウルソン王子がくるのは、いつ?」


ノアがポツリと言った。


「……三ヶ月後」


鏡の魔力判定は、三ヶ月後。その前に、私は鏡と再び向き合って、話し合い……というべきか、私は鏡に、魔力を消す”呪い”をかけるのだ。


「準備をしなくちゃね」


私が言うと、ノアは仏頂面で頷いた。





第十六章、終わりです。


次の章では、ソフィアがもっと動く予定です。


思ったよりも書くペースが落ちていて、なかなか更新ができていませんが、よろしくお願いします。



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