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一年後の今日君は、死ぬ。  作者: ハコベラ
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さようなら日常、はじめまして不審者

ーー去年高校を卒業し、俺は、大学生になった。

大学生になったからといって、父の元を離れ、一人暮らしを始めた事以外、特段何かが変わったわけでもない。元から一人を好む性格だった為、大学でもバイト先でも空気の様な存在で、どんなところにでもいる関わりにくい奴。それが俺ーー蕺 水仙だった。


学園生活に価値を見出せず、家に帰ってソシャゲをする。ただそんな意味の無い毎日が過ぎていったある日のこと、俺は、今一番ハマっているソシャゲのイベントを文字通り、三日三晩飲まず食わずで攻略していた。イベントが終わり、好成績を残せた事によるやり切った感と、何やってるんだろうなぁ、と突如訪れる虚無感。


こんな毎日に何の価値があるのだろうか、毎日ただ生きていることに意味があるのだろうか。

今やっていたソシャゲもそうだ。いつかこのゲームもサービス終了して、何も残らない。


俺の人生もきっと同じだ。惰性で生きて年を食って死んだら、誰も俺のことなんて覚えていない。次の日には、誰の記憶にも残っていない存在になるんだろう。


だがそんな事を考えて居ても腹は、減り続ける。いつか来る未来なんて知らない。俺は、開き直り、今腹を満たす為だけに行動をする。


絶望だーー冷蔵庫に食料がない。買い溜めしていたカップ麺もポテチも、もう底を尽きている。蛇口をひねりコップいっぱいに水を入れるとそれを一気に飲み干し決心する。

ーー買い物に行こう。


ふらふらとした足取りで家を出る。ここから最寄りのスーパーまでは約五百メートル、いつもなら自転車で行くのだが、生憎今はタイヤがパンクしたっきりバイト先に置きっ放しだ。今更ながら自転車を押して帰り、修理しなかった事を後悔する。


久しぶりに浴びる春の日差しが眩しい。紫外線に晒され三日間何も食べていない体が根を上げる。元から覚束ない足取りが更に怪しくなる。そしてやはり栄養補給を怠ったことが災難をもたらした。

大きな音を立てて俺は地面に突っ伏してしまう。冷たいアスファルトが気持ちいい。


意識が朦朧とし始める。誰かが近くに駆け寄ってくる。どうやら俺に声をかけてくれている様だ、優しい女性の声、肩を揺さぶられる。


俺の記憶は、そこで終了した。


そして眼が覚めて、ゆっくり上半身を起こすと、一つの人影があった。眼鏡が無く、正しく把握できないが挙動がおかしい。不審者だろうか?不確かな意識の中、不審者らしき人物が大きく息を吐き、俺に向かって断言する。


「一年後の今日君は、死ぬ!」


不審者らしき人物というのは、訂正しよう。こいつは、紛れもない不審者だ。

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