06話 帰宅、そしてゾンビ村
おれは洞窟の入口に立ち一息つくと、戦闘で出来た傷がどんどんと消えていることに気がつく。
『自然治癒』かと思うが俺はまだ発動していない。
そうか、俺の魔力保有量が増えたから余裕が出来てスキルが常時発動しているのか。
そんなことを考えながら歩いていると夜が明けた。
綺麗な朝日に照らされながらゾンビ村へと着いた。
「おお!ご無事でしたか!」
「あぁ、だいぶ手強かったよ」
「そうでしたか。我々のためにありがとうございました。」
「だが、頂いた剣は無くしてしまいました」
「そんな物はどうでもいいです。本当に感謝しています。」
「もう行ってしまうのですか」
「ああ、行くよ」
「お待ち下さい。お礼にこちらをお持ち下さい。
我々にはこんな高度な魔法の魔導書は扱えないので」
「そうか、ありがとう」
俺は『浮遊』の魔導書が薄かったから、その場で読んで返そうとおもった。
「やっぱりちょっとここで読んでくわ」
「どうぞごゆっくり」
5分ほどで読み終える。
そして体を浮かせる。
《スキルを習得しました》
《スキル『浮遊』が魂に刻まれます》
「おお! やはり貴方はすごいです」
「いや、イメージを強く持てて、感覚を掴めれば誰でも出来るさ。
俺はここらで帰らせてもらう。何があったらあの山の上の家まで来てくれ」
「ありがとうございますリベル様」
俺は少し照れながら『浮遊』と『送風』で飛んでアルベルトのいる家を目指す。
《スキルを修得しました》
《スキル『飛行』が魂に刻まれます》
どうやら空中移動が出来るようになったらしい。
あいつはさぞかし驚くだろうな。
そんな思いを胸にワクワクしながら飛んでいる。
「ただいま。俺はだいぶ強くなったぞ?
1回模擬戦でもしようぜ。」
家に入るなり俺は開口一番言うも返事がない。
寝てるのか?
そう思ったが家に居る気配がない。
机の上に手紙そして魔導書が置いてある。
(リベルへ
俺はしばらくここを空ける。だからこの家はお前が住んでいいぞ。
あとこの魔導書はだいぶ使えるから読んでおけ。それで1度人界にでも帰ったらいい
心優しいアルベルトより)
なんだよこれ、というかどこ行ったんだよ。
まぁいいや、とりあえず一休みしたら読むか。
風呂から出て俺は『転移』と書かれた魔導書を読み始める。とても分厚い。ものを違う場所に移動させることはそう簡単なことではないらしい。
ひたすらにイメージをふくらませて読み進める。外はオレンジの光に包まれる。
読み終えた。
コトン
本が床に落ちる。
俺はそれを今まで座っていた椅子の後ろで見た。
《スキルを習得しました》
《スキル『転移』が魂に刻まれます》
やったぞ。これが所謂瞬間移動と言うやつだろう。
試しにあそこに行ってみるか。
俺は脳内で場所をイメージする。
「は! 今どこからいらしたのですかリベル様」
「成功か。これは『転移』というもので家から来た」
「そんな高度な魔法を覚えられたのですね、流石です」
「いやいや、そんなことは無いよ」
(ゾンビは魔法に疎いのか、魔物なのに…)
「あの、突然なのですがリベル様。断っていただいて良いのですが、もしよろしければ我々の村をリベル様のお力で守っていただけないでしょうか。」
聞くところによるとこのゾンビ村は元々中々の大きさの町だったらしい。そしてその町長としてタイラントゾンビというオーガさえも凌駕する魔物がいたという。けれどある日タイラントゾンビが領土拡張を狙ってオーガのの郷へ攻め入った時に囲まれてやられてしまい、それからオーガに逆襲されてしまって町は壊滅。なんとか生き残った者で村程度までには回復したという。
「大体の話は理解した」
「それで、守っていただけるのでしょうか。噂によるとオーガの群れが再建した村の存在を聞き付けて進行中との事なので、出来れば...。」
(おお、それはとても断りにくいな)
「分かったよ、」
「ありがとうございます!」
その夜はとても盛大な宴が開かれた。
だが。
ドドドドドドド
何かが迫ってくる音で目が覚める。
直ぐに外に出ると、遠く続く平地に砂埃が舞っている。
オーガだ。こんなにも早く攻め込んできたか。
「リベル様!」
「任せろ」
俺には実の所勝てる見込みがない。
けど任せろとか言っちゃった。
困った。