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魔界の勇者の改世記  作者: さかこり
序章
3/9

02話 家主と呪い

 軽く絶望を味わってから俺は少量の木の実を持ちただひたすらに家を目指した。

 暫く経つとすっかり夜になり、星の明かりを頼りに歩くしかなくなった。


 ザザザッ


 川の音に紛れて右の森から複数の足音がする。

 俺は急ぎ足で頂上を目指す。だが足音はとても素早く、ついの俺の前に足音の正体が現れた。


「クッヒヒヒ」

「くそ、ゴブリンか」


 現れたのは三体のゴブリンだ。身長は俺の半分もない子供のようだが、手には棍棒らしきものを持っている者が2体、リーダーらしき者は先のとがった石をはめ込んだ木製の槍を持っている。

 まさか魔物に出会うなんて思ってもいなかった俺は武器など持っている訳もなく、持っているのは木の実だけ。


「くそっ! これでも喰らえ!」


 俺は木の実を投げつけた。

 だが。効果は全くと言っていいほどなかった。

 顔面にあたり、一瞬怯んだが逆上させてしまい飛びかかってきた。

 俺はすぐさま走り出す。

(やばい、死ぬ。こんな所では死ねないのに!)

 そう思った俺は川へと向かう。俺を追いかけてきたゴブリンは、傾斜がついてきて少し深く速くなった流水に阻まれ身動きが取れなくなっている。そこに俺は川底の石を拾い投げつける。

 効果は覿面。

 倒れた棍棒持ちゴブリンは流されてゆく、もう一体も同じだ。それを見た槍持ちゴブリンは俺に槍を投げてきた。髪を少し掠めて川底に刺さる。

 チャンスだ!

 俺はその槍を拾い上げ眉間を貫く。


「やったぞ...」


 俺は呟き、頂上に向けて歩き出す。

 そこからの道はそう長くはなかった。スライムや1人で休んでいるゴブリンなど、俺が倒せそうな魔物を槍で殺す。

 そんなことをしながら夜通し歩いていたら、ようやく平坦な道になった。

 そこは木々は切り倒され、畑には珍しい植物が。

 そして中心にある大きな煙突のある古民家らしきものからは未だに煙が登っている。


 俺は疲れが限界を越えそうだったのでドアが見えるなり叩いて尋ねる。


「すみませーん、誰かいませんかー?」


 すると中から足音が近付いてくる。


 ガチャッ


 開いたドアから出てきたのは髪の毛がボサボサの、40歳位で高身長痩せ型の男だ。


「なんだ、遅かったじゃないか」

「俺のことを知っているのか?」

「ああ知ってるさ、自殺志願者だろ?」

「まさかオッサンが俺を? というか自殺したかった訳では無い!」

「じゃあ俺も言わせてもらうがオッサンじゃねぇ! 俺の名前はアルベルト・クレイスだ」

「俺はリベル・リーロスだ。で? 結局俺を助けてくれたのはあんたか?」

「そうだ。通りかかったらお前が落ちてたから仕方なく助けてやったよ。あとあんたと呼ぶな、アルでいい。」

「そうか、ありがとう。アル」

「ほら、入れよ。こんな所で突っ立ってるより中のが良い。」


 アルは俺を家に入れてくれた。

 中は外見からは予想もできないような綺麗に整理整頓が成された部屋だった。


「風呂に入ってこい。そんな汚れた格好じゃぁ許せねえ」

「ありがとう」


 俺は湯船に浸かりながら考える。

 あれだけの魔物の量。山から見えたオーグの群れ。

 やはりここは魔界か?

 だとしたら早く人界に帰らないと。


 風呂からあがるとこっちを見て座っている。


「少し話そう」

「俺も今言おうとした」

「好きなとこに座っていいぞ」


 俺はアルベルトの向かいの椅子に座る。


「改めて、助けてくれてありがとう。だがひとつ疑問があるんだ。」

「なんだ?」

「助けてくれたならここまで連れてきてくれてもよかったんじゃないか?」

「あー、それはめんどくさかったからだ。だから近くの比較的魔物の少ない森に転移させた。それに、うちに来れるように煙も上げてやったじゃねぇか」

「うん、有難いんだけど。ここに直接転移させることは出来なかったのか?」

「そんな事は滅茶苦茶簡単だ、だが弱っちいお前を長距離転移させたらお前に負担がかかると思ったからな。」

(なるほど、転移魔法も無負担という訳にはいかないか)

「お気遣いありがとう」


「ところでお前はなんで呪いなんてかけられているんだ?」

「分かるのか?!」

「あぁ、俺をあまり舐めるなよ? その呪い解いてやろうか?」

(呪いを解くのはそんなに簡単なものなのか?)

「あぁ、できるならば頼みたい」

「だがその前に一つ確認したいことがある。お前は人間ではなくなるのは嫌か?」

「どういうことだ?」

「そのままの意味だ。」


 アルは呪いについて説明してくれた。

 そもそも呪いというものは人間が扱って良いものでは無いらしい。

 呪いは魂を直接侵すもので、精神力によって防ぐことも出来るという。

 だから基本的精神力の低い人間が扱うのは、かける方もかかる方も危険だから良くないという。

 そして1度侵された魂はその呪いが解ける時に傷がついた状態になるという。そこに解除魔法の魔力が入り込み魂は魔に飲まれるという。

 魔に飲まれたものは人間では無くなるのだ。


「解呪するか? 決めるのはお前だ」

「・・・、あぁ頼む」

「よし」

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