01話 落ちた先
「ん...。 何処だ」
俺は目を覚ます。
決して心地が良い目覚めとは言えない。未だに体には浮遊感が残っている。
あたりは薄暗く、木々が生い茂っている。
ここが峡谷の底かと思ったがそれは無い、なぜなら俺にそんな魔力はないからだ。もしも地面に安全に降りれる魔力と魔法を持っていたなら落とされて直ぐに戻っている。
ともかくだ。今生きているということは誰かに助けられたか、なにか不思議な力が働いたかだが・・・。後者はないな、それは分かる。
となると、俺を助けてくれた誰かに感謝するまでは死ねないな。
よし!
ホントだったら死んでたんだから、生きていけるところまで頑張ってみるか。
と、意気込んだものの・・・。
取り敢えず状況の把握は重要だ。
あたりを散策してみるとしよう。
「疲れた」
つい弱音が出てしまう。
それも仕方が無い。俺はひたすらに歩き続けていた。空腹と喉の乾きと、足の疲れと戦いながら。ひたすらに。
すると川の音がかすかに聞こえた。
軽くなる。軽くなるぞ!
今までの疲れを塗り替えるように体が喜びを感じている。
しばらく進むとやっと森が開けた。
目の前にあるのは向こう岸まで5メートル位の緩やかな流れの川だ。川の周りには花が散りばめられ、川岸に点々と生える木には木の実がなっている。
「よっしゃーっ!」
おっと、俺ともある者が喜びのあまりつい叫んでしまった。
「さて、ひと休みするか」
何時間ぶりの水だろうか、喉を通る水は瞬間的に体にしみ渡る。
何時間ぶりの食事だろうか、胃に入る果実は弾けて筋肉を癒す。
森を抜けたため、眩しすぎるくらいの陽を避けるように木陰の草むらに体を預ける。
歩き疲れたのか少し目を閉じると意識が闇に吸い込まれる。
眩しい夕暮れの陽で目を覚ます。
寝床を探さなければ。
そう思いながら川の上流の方を見ると山があり、その頂上に煙突から立ち上る煙が見えた。
「まじか・・・」
俺はそう思いながら再び歩き出す。
もちろん木の実をもてるだけ持って。