プロローグ 『はじまり』
「はぁ はぁ」
傷だらけの男は赤ん坊を抱いて森の中をただ、全力で走った。
その森はとても暗くもう何も見えなくて、霧に覆われ、ひんやりとしている。
後ろからは、複数の影が走って追いかけてくる。
「くそ、このままじゃ・・・・・・」
「水木様、私が足止めをします。そのうちに早く」
そばにいる若い女が話しかける。
「何を言う! それではお前が・・」
「その子だけは死なせないで、私達の最後の希望ですから・・・」
「わかった・・・」
男は静かに頷いた。
女は笑顔を見せ「任せましたよ」と言って敵の方へ、突っ走っていった。
そして、やっと森を抜けたところに・・・
「お待ちしておりましたデス。氷結の魔術師。」
「何故・・貴様が…」
そこには、黒装束をまとった長身の男が立っていた。
「貴方の考えることなどお見通しなのデス。さあ、その子を渡していただきますデスよ。」
(これは、もう…仕方がない・・・)
男はボロボロの服から、何かが書かれた紙切れを取り出した。
「これが何か分かるかな?」
「何デスか?それは?」
その男は紙切れを赤ん坊の上におき、その上に手をのせた。
「まさか、それは・・・」
「もう、遅い!」
「時空転生!!」
その瞬間、森全体が眩しすぎる光に包まれた。