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プロローグ

基本的に不定期となりますのでご了承ください。

薄暗い洞窟。天井には蝙蝠がぶら下っており地面には様々な怪物がうようよしている。その先を進むと大きな扉が見えてくる。何十人もの人が押してやっと開けることができるくらいの大きい扉だ。その扉を開くとまず目に入るのは巨大な怪物。それは伝説や御伽噺で出て来るであろう生物―――




――ドラゴンだ。




そのドラゴンが石畳が敷き詰められた円形の部屋の真ん中に鎮座していた。そして、その周りには十人の人達が倒れている。歳も種族も千差万別。鎧を身にまとっている人もいれば、に露出の高い服を着た、踊り子のような姿をした人もいる。しかし、その殆どは息絶えており辛うじて一人だけ、生きている人物がいる。十人の中で一際目を惹く美貌、戦いには似合わないであろう純白のドレスを身に纏い、神々しい光を放つ宝石が埋め込まれた杖を待っている。少女は逃げもせず、戦おうともせずにただただ目の前の惨状を見つめている。


「......何で、此処はゲームの世界のはずなのに。イベントの唯の企画のはずなのに、カイザー、エイジス、ブラック、サトウ、......何でみんな目を覚まさないんだ...私が、私が、うァァァァアァァァアァァアアッッッ!!!」


恐らく仲間だった物の遺体を抱きしめ部屋中に響き渡るほどの大きな声で叫ぶ。それに呼応するかのように怪物も叫んだ。そして、怪物の手が少女に―――





loding......





『タンクにヒールかけます。コラそこあんまり広がらない。相手のHPもあと少し、みんな最後まで気抜かないようにね』


『了解』


『おk』


外は炎天下で気温三十六度を叩き出した猛暑真っ只中。僕は平日朝っぱらからゲームに勤しんでいた。

こんなクソ暑い中、サラリーマンなんかは電車なりバスなりに乗って働きに出てると思うと少しだけ同情してしまう。が、今は画面の中に集中したいのでその思いは直ぐに霧散してしまう。


『ワンダーランド』それが僕が、いや、世界中がいま熱狂的に盛り上がっているゲームの名前だ。


名前の通りまるで不思議な世界に迷い込んだようなゲームだ。今まで出てきたゲームも魔法や物語や伝説でしか見たことがない生き物が出てきたりはするが、それとはまた根本的に違う。まずこのゲームを始めるにあたってしなくてはいけない事はキャラクターメイキングだ。どのゲームもそうだって? まあ聞けって。

このゲームの売りは『本当に異世界に来たと錯覚させる』と言う点だ。そのためか、運営に身体の詳細なデータと顔写真を送らなければならない。実質自分で決めれるのは名前、目、髪、肌の色、後は種族ぐらいだろう。因みに種族はニューマン、ドワーフ、エルフ、デビル、エンジェル、ヴァンパイヤ、ワービースト、ホビット、フェアリーの九種類だけだ。レア種族とかはない。

それが終わると数時間後にデータを元に作られた自分のキャラクターが送られてくる。確認して規約に同意すると『ワンダーランド』をプレイする事が出来るのだ。

いざ世界に入ってみると感動で時間を忘れてしまう。広大なフィールド、様々な職業(ジョブ)。畑や家畜を育てたり、店を自分で開くことも出来る。遊び方は文字通り無限大である。


キーボードとマウスをまるで自分の手足のように動かし残り僅かな敵の体力を着実に削っていった。


『お疲れ様』


『やったー! 武器ドロしたよー!!』


『あー疲れた...』


数分後ようやく敵の体力を削りきり撃破する。ポリゴンとなり消滅したそして画面に浮かび上がる『congratulations!』の文字。自然とマウスを握った手の力が弱まり、椅子の背もたれに背中を預けた。

これだ、この敵を撃破した時の達成感が心地いい。だからこのゲームは止められない。

やってもやっても見えてこない底、気付けばもう四年と言う歳月が経っており。今や世界ランキング一位のギルドのマスターをやっている始末。

そのおかげで莫大とは行かないまでも生活できるだけの賞金を手に入れ、色んな会社がスポンサーになってくれた。だから家族も何も言ってこないしこうして気兼ねなくゲームを楽しむことができる。正に『ワンダーランド』さまさまだな。


「......疲れた」


町に戻り、手早くドロップしたアイテムを自分の倉庫に放り込む。そして、一通り挨拶してからログアウトした。PCの電源を落とし部屋の照明を切る。そして、ベットに直行しそのまま眠りについた。流石に二日徹夜は眠い。






loding......zzz.......






「もう昼か...ふぁ~」


目を覚ました時は十二時丁度。昼ごはん時である。


『ワンダーランド』の話に夢中になりすぎて自分の紹介を遅れてしまった。おっほん...僕の名前は神無月智広。歳は十七歳でお察しのとおり現在進行形で引き篭もりで不登校児。いわゆるニートである。

よくある話だろ? いじめが原因で不登校になる生徒。余り思い出したくないから説明は省くがそのいじめが原因でこの部屋に引き篭もるようになった。ここまでは良いかな? 家族は両親と姉と妹がいる。仲は...まぁまぁ悪くもなく良くもなくだ。実際それが一番良いと思うから僕からすれば家族関係は概ね良好、つまり俗に言うリア充。だってそうだろ? 賞金があるから働かなくても良いしもしお金がなくなってもまた適当な大会に出場すればいい。つまりもう職には就いている。そして、家族関係も良好。っとその話はまた今度にしよう。自己紹介はこれくらいで良いかな? 


ベットの寝心地のよさに少し目を開けるのをされるが。自分の体に鞭を打ち、ベットから起き上がった。もう一度、大きな欠伸をしてから段々と意識を覚醒させていく。極端に寝起きに弱い智広は十分経ってやっと寝癖のついた髪を手で解かしながら一階にあるキッチンに向った。


「寝癖が治らない...いいかここままで」


どうせ家から出ないんだしと呟くと冷蔵庫を開きラップがかけられてた皿を一枚と棚の引き出しから箸を一膳取り出し、箸は机に置き、皿はラップを取り、電子レンジに入れスイッチを押す。それが終わると椅子に座りボーっとどこかを眺めていた。その姿は正にニートのそれだった。


「今日は七月一日...あ、今日新しいイベントあるんだっけ......」


調べようとポケットから携帯を取り出し慣れた手つきでワンダーランドのホームページを開く。欠伸で大きく開いた口を片手で押さえながら気だるそうに画面をスクロールしていく。


「えーと何々...新しいダンジョン、強力なフロアボス、一番最初に撃破したギルドにはレアアイテムを送ります。アップデートは午後―――」


言葉を遮る様にレンジの音が鳴る。徹夜で何も食べていなかった智広は目の前の情報より空腹を満たすことを優先した。子供の時に厳しくしつけられた性で携帯を見ながら昼食を食べると言う発想を思い浮かばなかった為、智広は携帯を一度閉じ、レンジから温めた昼食を取り出した。


「食べてから調べればいいか」


今は昼。つまり学生は学校に、社会人は働きに出ている。何が言いたいか言うと今調べて張り切ったところでギルドの皆が集まらないようじゃ意味ないってことだ。ついさっき朝まで徹夜し撃破に勤しんだメンバーでさえ、撃破して直ぐにログアウトし学校に行った。今の所直ぐにアンダーワールドを始めることができるのは僕だけ。加えてイベントが開始されるのは夜の九時だ、イベントの事なんて食べた後でゆっくり考えればいい。今は取り敢えず何か食べたい。





loding......





昼食を食べ、後片付けを済ませると再び二階にある自室に戻った。


「アップデートは午後九時から。みんな集まるかな」


素早くワンダーランドを起動し、ギルドのホームに向う。クランを結成したら様々な恩恵を受けることが出来る。ホームもその一つだ、さっきも言ったがワンダーランドは自由度が高いのが売りだ。だからプレイヤー同士の戦いも起こりうる。他のプレイヤーに倒されるとその時自分が所持しているアイテムをランダムに倒した敵に渡るのだ。その為プレイヤーはアイテムを持ちたがらない、誰だって苦労したアイテムを敵に奪われたくないからな。


「えーと、これでもないあれでもない。何処に入れたっけかなー」


そこでみんな使うのがギルドにあるアイテムボックス。一つのアイテムボックスに最大1000個、それがギルドメンバー全員に一つずつ使えるのだ。


「あったあった」


そこで何故僕が普段ドロップしたアイテムを放り込むだけのアイテムボックスをあさってるかと言うと今回のイベントはあの武器(・・・・)が使えるからである。


「せっかく世界大会の優勝商品なのに使えないなんてもったいないよな...」


そう呟きながらアイテムボックスの中から一本の杖を取り出しメインアームをその杖に変更した。

『天空杖剣ウラノス』それがこの武器の名前だ。元々世界大会で優勝した時に優勝賞金とは別に運営から記念として大会で使用したステージに関するストーリで登場した伝説の武器が僕達メンバー全員に送られたうちの一本。伝説の武器と言うだけあって性能もすさまじく。例えばこのウラノス。使用者に常時HP回復状態が付与、敵からの状態異常を無効化。に加えこの武器には特徴があり杖形態と剣形態があり、杖形態時はINT VIT HP が大幅上昇し。剣形態時はSTR DEX AGI が大幅上昇する。こんなぶっ壊れ性能の武器がギルドのメンバー一人一人に送られたのだ。結果運営は炎上、優勝した次の日に大会、イベントでの武器使用禁止のお知らせのメールが僕達に届いた。


そんな運営が炎上するほどの性能を持つ武器がなぜ今回のイベントで使用可能なのかは疑問だが運営が使って言いと言った以上有難く使わせてもらおうじゃないか。


「まぁ、これで僕達が一番になってもみんな恨まないでね?」


中心に埋め込まれた宝石が光り輝きが智広を包み込む。自分のHPバーの下、状態を示す欄に幾つものアイコンが表示された。それを見た智広は思わずチートだなぁと呟いてしまう。回復薬等の準備も整え、後はイベントが開始されるのを待つだけだ。


僕達はまだ知らない。このあとどんな事が起こったのか。


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