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生まれて御免  作者: 古泉
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さて何故にも私がここまで自分と母を蔑んできたかと言いますと、それは長い話になるのですが事を辿れば、母が幼い私と兄を置いていったあの晩から全ての直線が歪み始め、見事なまでに湾曲し始めたのではないかと考えます。


申し遅れましたが、私には五つ上に兄がおります。これの名もまたしかり「幸」と言った漢字が使われており、字画は悪くはないのですが皮肉めいたものを感じるのです。


兄の名を矛盾した形に仕上げたのは、紛れもなく私と母であるのですが、此処はお咎めなく頂きたい。名付けが悪かったのです。名前負けなんてよく聞くじゃない。名前の最初に「不」とでも付けてあれば決してこの様な事にはならなかったはずなのです。


余談は置きまして、その頃の母はと言いますと、家庭の金銭状況が悪いのか、父との関係が悪くなり始めたからなのかは定かでないのですが、家族団欒で過ごしていた横浜市の小さなアパートから越して、姉達の住む県西の小さな町に勤めを始めたのです。

その勤め先の町には私たち兄妹も連れて行かれて、慣れない小集団の中になんとか馴染もうと四苦八苦しながらも母と共に過ごしました。

月に一度は父親が仕送りがてらに顔を出してきて、それとなく新しい形で暮らしが始まったのです。


兄はもう数えて十くらいの歳になっていたもので、旧友との交流を断たれた寂しさからあまりぬけだせていないような雰囲気はありました。

妹の私は考え無しに、慣れない毎日の疲れから母に甘え、出掛けの前には嵐の如く泣き叫び登園拒否。

そんな姿を見ていたらきっと兄なりに我慢をせざるを得ない状況なのだと勘付いたのでありましょう。


子供二人を働きながらに育てる事に関しても、元来この母には向いてない事は明白であり、見るからにしてママゴト遊びに飽きたような素っ気のない態度を露骨に出すようになり、部屋は汚れ、飯は出来合い、毎晩遅く帰っては煙草を吹かし碌に口も聞かずに眠りにつくのでありました。

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