無愛想な彼と愛想の良い僕
僕は特にモテるワケでもモテないわけでもなく、それが嬉しいとも、悲しいとも思わない。が、最近は少しモテるヤツが羨ましい。そう思う機会が今までなかったからなのかは分からないが最近は特にそう思うようになった。僕の部下である三神浩太郎がこの会社にきてからは特に。
三神浩太郎です
と無愛想でとても会社の面接では受かりそうもない自己紹介をした見た目20代半ばであろう青年の態度は、ほとんど一回り(まだ一回りじゃない)年齢が違う僕にとってあまり良い印象はあたえないものだった。どちらかと言えば、親の七光りで入ったんじゃないのか?とか、とにかく僕の部下じゃなければいいやとか最悪なものだった。しかし、運命とは…いや会社とはそういうものでその僕的に印象最悪な青年を上司によって僕の下で教えることになった。
Γあー…えっと、西条太輝です。その、三神くん…だっけ?今日からよろしくね、まぁ実際は本格的なことは明日からだけどとりあえずよろしく」
(面倒なんだよなぁ…それに教えるタイプじゃないからなぁ)
Γ…よろしくお願いします。えっと…さい…じょう…さん?」
彼はしどろもどろで僕の名前を確認した。若いんだから、名前ぐらいは覚えてほしいんだがと考えたが僕はいつものように
Γあぁよろしく」と笑顔で答えた。
そんな出会いかたをした三神と僕だが三神は正直仕事の呑み込みも早く、別に挨拶をしないわけでもなくただ本当に感情が表に出にくいだけのようだった。僕が教えればそれを積極的にこなし素直に従うという、まぁ本当に表情があれば可愛い部下だろう。そんな部下である三神は正直仕事もできれば背も高く、顔も(表情はないが)カッコいい部類に入るだろう何処のハイスペックな漫画キャラだよと言いたくなる男で、モテないやつにとっては幸の塊である。そのため社内でも人気が高くそれはもう若い女性はもちろん、結婚をしている貴婦人…おばさまにも人気である。ただ、本当に無愛想である。愛想を振り撒けないのである。それに関しては人それぞれ得意不意得意があるため仕方がないとは思うが、無愛想なやつにはやはり近寄りがたい。しかし、その周りには愛想を振り撒いたり、人当たりの良いヤツが1人はいるものだ。大体はそんな、人当たりの良いヤツに色々頼む。
察しただろうか、つまり、つまりだ…僕は今ー…
他人の告白を受け取って他人の恋をサポートしているのだ。
ヤバイな、若干羨ましいな。ここまでのモテ期ねぇよちくしょう。
どうしてこうなるんだろうか。いや当たり前と言えば当たり前だ。モジモジと目の前で顔を真っ赤にする女性を見て、僕はため息をつく。
Γわかったよ。僕から渡しておくよ。…期待はしないでくれよ?それから、僕のせいだとも思わないでくれ」
半ば、諦めのようなセリフだと自分で分かってはいたが少しこの呼び出しの多さに苛つきを感じていた僕はそう答える以外出来なかった。それでも彼女は顔を綻ばせて僕にお礼を言うと仕事があるのでとすぐさま去っていった。
Γ…ふぅぅぅぅー………あー」
お昼休みも過ぎ、だだっ広い個室に残された僕は壁に寄りかかりずるずると落ちていき意味もなく息を吐き、声を出した。こういう時、ヘビースモーカーな人はタバコを吸いたがるのだろうか?僕はヘビースモーカーではないし、特にストレスを溜めるようなこともなし、発散するようなこともなかったからよく分からないな。こういう乙女心も、だ。
Γそんなに良いもんかな?」
Γ何がですか?」
あまりのことに僕は飛び退いた。休憩すべき時間はもう終わったはずなにそこにいるはずのない声が聞こえたからだ。
Γ…っ三神くん、もうお昼休み終わった筈だよね?サボりは」
Γ真辺さんが、西条さん呼んでこいって…どうしたんですか?」
お前のせいで僕の貴重な長くとった昼休みが無くなったんだよ!とは口には出さず、一言Γ別になんでもないよ」と言って立ち上がった。その様子を見て、Γ何か怒ってます?」と三神が言ってきたので腹が立った俺は少し睨んでやった。そうするとアイツは頭にΓ?」と付きそうなぐらい頭を捻った。無愛想な男のこういう動作が可愛いとかなんとか社内の女性が、言っていたが女性ではない僕にはよく分からないがなんとなく、小首を傾ける子犬のようではあった。可愛いかどうかは置いといて。
Γあの…」
Γあぁそうだったね早く真辺課長のところいかないとだったね。というか、何のようかなぁ…人の休み時間削るなんて…」
最後にボソッと真辺ェと恨めしく呟くといつの間にか僕のとなりについていた三神がΓあぁ、そういえば西条さんは真辺課長と同期でしたっけ」と思い出すように真辺との関係について再確認をしてきた。僕はそれにΓそっ、昔から仲の良い同期だよ。若いのにあいつは仕事もできたからなぁ…いや今も周りに比べれば若いけど」と言いながら真辺がいるであろうデスクへと足を運ぶため歩き始めた。
Γ…で?西条さんは何があったんですか?」
Γ…また、君宛のプレゼント貰った」
そういいながら先ほど貰った可愛らしいラッピングの箱を手渡した。すると三神はいつもの無愛想な表情にシワを加えて嫌そうな顔をするとすぐにΓすみません」と謝ってきた。こういうとこがあるから余計に僕はこいつには強く当たれない。
Γいいよ、別に。三神が悪いわけじゃない」
少しは表情にゆとりがあればいいとは思うが。
そんな気まずそうな三神を横目に僕は真辺へのもとへと向かった。
Γ遅いぞ。西条」
偉そうに微笑む相手は僕の同期であり、親しみのあるにくったらしい笑顔が印象に残る真辺 純一であった。
Γ…なんのようですか?真辺課長」
Γ敬語やめろよ、どうせ今は俺とお前しか居ない。こちらとしても親しいやつに敬語をつかわれるのはなんか、その、寂しいだろ?」
少々皮肉まじりの僕の言葉はふっと彼に笑われてスルーされてしまった。
Γそうだな、そうさせてもらおうかな。こうして話すのも久しぶりだしな、うん。そうしよう」
僕も僕で彼の提案を呑み数年前のように話し出す。
Γ最近どうだ?」
Γ何が」
Γ仕事」
Γあぁね、うん。そこそこじゃないかな。そっちは?」
Γ同じく」
何気無い相手の現状把握の探りあい。昔から酒が入れば話すが、大体はお互いに口数が多いわけでたもないため短い会話が続くだけのものが多かった。
Γそういえば、三神とはどうだ?」
Γどうだ?とは?」
Γうまくやっているか?」
Γやっていると言えばやっている」
Γそうか、ならいいが。お前は溜め込む癖があるからな」
Γ…お前は僕のお母さんか」
そうすると、真辺はくっくっくと笑うと「そんなこと気にする年齢でもねぇのか」と肩を竦めた。僕はそれを遠くを見つめながら聞いていた。横目で見るとタバコの箱を取り出していてその箱を振って見せた。これは、こいつが知り合った当時からの合図で屋上に行って一服したいなぁというようなものだ。
「お前と違って仕事たくさんあるんだけど」
そう言うと、にやにやと「…可愛くねぇなぁ…俺だって仕事ある。お前らの失態の処理とかな」と最初の皮肉に返すような言葉を返した。
はじめて。夏缶です。
はじめての作品ということで、文章がおかしいのは少々多目に見ていただけるとありがたいです。(既に何かおかしい)まぁ、今後も続くので展開により、気に頂けるかは分かりませんが読者様を励みに頑張りたいと思います。基本的には絵を描くのが趣味なので、その他もろもろ私情の進み具合により蹴りになりますが読んでいただけると嬉しいです。ここまでありがとうございました