第5話 嬉しい誤算
更新遅れてすみません。
作者治りはしたのですが、今度は花粉症になりました…
「ここが、本屋さんかあ」
ギルド前の定食屋さんで昼食をとり、ついでに本屋さんへの道順を教えてもらった。
着いた本屋はまるで映画の世界のような、ハードカバーしかなく、紙もとても重厚感がある。
「坊主、なに買いに来たんだい?」
「あ、あの、地図を買いに……」
「ほうほう、それならこれじゃな」
お爺さんが出してくれたのは小さくてレトロな方位磁石。
「これに魔力を少し注いでごらん」
「は、はい!」
手のひらに置かれた方位磁石に魔力を注ぐイメージをすると、まるでCGのように地図が展開される。青色に輝く地図はとても美しい。す、すごい…
「ほう、お主、海に愛されてるとは珍しいのう」
「そ、そうですか?というか、なんで!」
「ああ、ほら、この現在時点を貝殻が指してるおるだろ。持ち主の特に馴染みのある魔法が方位磁石に影響するのだが、上位スキルがあるとそっちが反応することがあってのーしかし、見事な海じゃな」
スキル……?
「人生でこんなに美しい海も初めてみたわい、お礼にそのマップただでやろうぞ」
「え?」
「その代わり、贔屓にしておくれよ。銀貨一枚分なのじゃからな」
「は、はい!ありがとうございます!」
マップ、ただでゲットしてしまった。浮いた分、なにか買っていこう。
積んである本を一冊一冊見ていく。ああ、料理本は欲しいなあ。童話もあるんだあ、勇者とか実にファンタジーだなあ。
お、これいいなあ!「海幸図鑑&調理法」!
「これを、一冊!」
「ほうほう、銀貨二枚じゃ」
きっかり丁度払い、お店から出る。また、お金が増えたら何か買おうっと。
人がまたさらに溢れている商店街を、都会で鍛えられた歩み方でスタスタ進む。しかし、様々な露店があるものだ。
「包丁ほしいなあ…って、あ!釣竿!」
まるでおもちゃのようだが、何本かのアジアンテイストな釣竿が売られている露店を発見した。おおー…こりゃいいや。
「すみません、これをお一つ下さい」
「ん?ああ、いいぞ、銅貨五枚だ」
「は、はい!あ、その、魚を捌けるような包丁とかもありませんか?」
「それは、ないな。武器屋はあっちだ」
「あ、ありがとうございます!」
案内されたのは露店ではなく、武器屋というところ。剣や盾、弓矢が置いてあり、銃がないあたり、ここは地球ではないと改めて確信する。店内は主に戦闘用がメインのようだが、ひっそりと片隅に包丁ゾーンが存在する。包丁は様々な大きさや形が存在しているが、とりあえずよく使っていた三徳包丁に似てるものを選ぶ。銅貨七枚分か。
「すみません、これを、一つ」
「ん?ああー…今銅貨切らしちまってるんだよな…そうだ、ナイフつけて、銀貨一枚にするし、一枚以上ならくじ引きもしてるんだ」
財布の中には銀貨二枚。うーん、まあ、あとは壺と瓶を買って帰るくらいだろうし、大丈夫だろう。
「では、ナイフも」
「毎度、うちの弟子の第一号になるが、商品としては優秀なやつだから安心しとけ。ほら、この箱から一枚ひいてくれ」
「は、はい!」
木で出来た箱から大きな三角の木の板を引く。そこには、『鍋』と書かれていた。
「や、やった!」
「そうか?俺的にははず…いやなんでもないよ、ほら鍋だ!持っていくようの風呂敷もオマケでつけてやるよ」
大きな渦巻き模様の風呂敷に買ったものを包んでもらう。うーん……収納できるからなあ……うん。
「じゃ、またおいで」
「は、はい!」
お店を出ると、ずく横の路地に入り、収納する。なんだか、見られてはいけないことだったのかもしれない。
うーん、もっと物入りよくなったら、常識とかマナーとか書かれた本を探さないと。
残りのお金で、中古品の壺をいくつか買い込み、街を出る。
また、一週間後来ようかなあ…うん。
あ!でも!あのギルドの人に三日後来いって言われたんだっけ。
「三日後かあ、面倒だなあ」
そんな気持ちを抑えられず、急ぎ足で海に戻る。勿論、警戒して隠れながらだが。けれど、もう途中で面倒になり、ジャングルを横切ることにした。
「思えばここはどこなのだろうか……」
先程貰った地図を歩きながらも展開してみると、そこは先程の街の近くを指していた。
「うーん……海まで遠いかなあ……」
意外と内陸側にある街だったのかと感じながら、一度地図をしまい、このままじゃ間に合わないと走り出す。ただ、途中でいつも食べている果物を見つけては拾う。また、食用になる草についても、何個か目ぼしいのをみつけては摘んでいく。
どのくらい経っただろうか、やっとのことで海に到着した。もう、既に夜になっていた。
「わー、満月だ……」
きらきら光る星空に囲まれた満月は、とても美しく、いつまでも見てられる。少し疲れた、月と海を見て休もう。砂浜に座り、果物を一つ取りだし囓る。甘酸っぱいトロリとした果汁が口に広がる。
「はぁー…幸せ」
少し感覚が麻痺してきたのだろうか。こんな些細なことにも幸せを感じる。地球よりも遥かに不便で生きづらい世界なのに。
暫くそこで休んでから、洞窟に向かう。明日は釣りをしないと。
そして、私の一日は終わる。
ユエちゃん、逞しくなったなあ…