表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

第15話 真綿に包まれた違和感


 本日は、ギルドに塩を納品する日。

 魔王と一悶着があったあの日から一週間経った。ケルーさんからはお詫びの手紙をいただき、娘たち一同にボコボコにされた魔王の写真が同封されていた。


 写真、カメラでもあるのか?と思ったら、八番目の奥さまの能力の一つで念写したものらしい。


 ……どの人だか、わからない。ぶっちゃけ、ケルーさんのお母さんくらいしか顔が出てこない。

 思えば、マヒナちゃんはあれから一切魔王のことを話すことはないし、話題にもしたくないのか、会話に出せば話を反らされる。手紙も読み終わったら勝手に処分してしまう。


 ただ、何故だかそれを注意出来ない自分がいて、それを無意識に肯定する自分がいて、なんというかそれがとても気持ち悪いのだ。


 でも、すぐに消えてしまう。


 そんな気持ちも、すぐに消えてしまう。


 一人で久しぶりにギルドに降り立てば、ダルコさんがすぐに迎えにきてくれて、メツガーさんが待つ応接間に通される。

 マヒナちゃんは、どうしたかというと、今日はお留守番。海のお友だち??とお話してくるらしい。思えば、マヒナちゃんの知らないこと多いなあ。今度聞いてみよう。


「すまないね、うちの家内の父が。あの人暴走しやすいからね。私もよくいじめられてるしね」

「そ、そうなのですか?」

「まあ……それで、聞いたんだけど君は異世界人、しかも日本人なんだってね。確かに典型的な日本人だよ。あの糞の暴君とか、西にいるという勇者の話を聞いて、典型的な大和撫子的な昔ながらの日本人はいないのかと落ち込んでしまったよ。しかし、君は典型的な日本人!嬉しいね!謙虚だよ!!おお!神よ!感謝します!」


 あれ、メツガーさんのテンションまでおかしい。やはり、お互い異世界人だと知ると普通はこのようになるのだろうか。


 あれ、でも、私、落ち着きすぎてないかな。


「あ、すまない、すまない。つい、お国柄が出ちゃうみたいでね。実は私は転生者なのだよ、しかもどうやら珍しい米国育ち。あ、もし言葉がおかしいのは諦めて」


「は、はあ……」


 とりあえず、色々と質問を答えながら、塩の納品を終える。どうやら、生前はクールジャパンに憧れた米国の青年だったらしく、私の話を聞いては一喜一憂していた。魔王様は自分の可愛い娘を獲られたためか、罵声のみで質問には一切答えてくれないらしい。

 私はアニメ、漫画、小説とか見ないし、ゲームもやらないので答えれる範囲はとても狭い。寧ろネットでそんなゲーム出来るんだーと逆に感心してしまったくらいだ。


「フーッ、いや、本当にありがとう。『エルボー』が完結してたのか……」

「ええ、父が読んでたので。たしか、最終巻……あ、でもその息子が主人公の続編が出てたような」

「なにぃいい!!おー神よ!!何故何故今私は地球にいないのですかああああ!!ということは、エルボーはエルアナかボニーと結婚したのか!?どっちなんだい!?」


「さ、さあ……」


「なんてことだあああああ!!ああ、異界の扉からエルボーの最終巻……いや続編……寧ろまとめて全巻落ちてこいいいいっっ」


 メツガーさんも、ご乱心。

 何故こうも異世界から来た?人たちは暴走するのだろうか。でも、メツガーさんは誰かに川へ突き落とされてしまい、しかも本当は間違えで死神がお詫びにとこの世界に転生したらしい。だからこそ、前世に未練がたっぷりあるのかもしれない。


 私は、どうなのだろうか……。

 前の世界に帰りたいのだろうか。


 そんな考えが頭を過った瞬間、吐き気が込み上げてくる。胃酸が喉を痛める不快感に思わず前のめりになり、口を抑える。メツガーさんも私の様子に気づいたらしく、すぐに治癒魔法らしき魔法をかけてくれる。

 けれど、どんどん増す不快感にそのまま私は意識を失った。



 気づけば、そこは我が家のベッドの上だった。誰かが、連れてきてくれたのだろうか。

 ふと、横を見れば長年愛用していた目覚まし時計が午後7時を示していた。


 目覚まし時計……。


 我が家と言っても、日本の我が家か。


 誰かが扉を開けて入ってくる。ガンコ者の父だ。私の姿に気づいたのか、こちらを凝視して、そしてゆっくりと歩みを進めてくる。


「湯江、か?」


 お父さんと声をかける前にまた酷い吐き気が込み上げて、押さえつけるように目を閉じれば、また意識は落ちていった。




「ゆ……ちゃ…ゆえちゃん、ユエちゃん!!」


「ん、あっ、おはよー……」


「もう、心配したよー!!いきなり、魔王経由でギルドの人から連絡が来たとおもったら、気失ったユエちゃんが送られてきてさあ!!びっくりー!!頑張って、ベッドに運んだんだ!!」


「そう、ありがとう」


「あと、シルフの…ケルーさんのお母さんだっけ?がホクホクイモの冷製スープを作ってくれた!!病人定番なんだって」


 それ、日本で言うビシソワーズ?だっけ?間違ってるかも。

 スープはとても美味しく優しい味がする。しかし、ギルドで倒れてしまうとは、流石にやらかしてしまった。

 今度から気を付けなければ。


「それにしても、なんで倒れたの?」

「んーなんでだろう?わかんないや。過労かなあ」

「そっか気をつけないとね」


「そうだねー、それにしてもメツガーさんと漫画の話をしてたんだっけ?んーあー思い出せないほど疲れてたのかなあ」


 何か、大事なことを忘れてちゃった気がするが、倒れたのもあって今日は早く寝てしまおう。


 覚えてないってことは、大したことではないんだろうし。








キャラの肉付けが薄い作者です。

というわけで、くっそ濃いめのメツガーさん。

え?ハーフオークに興味ない?

奥さんハーフエルフですよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ