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第12話 魔王様登場

魔王様(と9人の奥様たち)登場

 魔王様からの手紙を読んだ私は、それはもう落ち込んだ。本当に落ち込んだ。何故ならば、そこに書かれたことが塩作りの行程と同じだったのだ。

 ああ、しかも、苦汁の作り方が、塩作りの途中で出来たなんて……

 街で買い足したガーゼのようの布に塩を入れて、その時に一緒に買い足した大きめのザルと鍋をセッティングする。


 それをいくつかセットしておき、塩を煮詰めたものを流し込む。ただ、本日大事なのはその塩を乾燥する際に下から滲み出す液体を集めることが主な目的だ。


 そう、私が今まで塩を乾燥させてた時に下から滴る液体が、苦汁だったなんて。


 しかも、ノート確認したら寝惚けてる汚い字で書いてあった。不覚すぎる。平和ボケしすぎだ。


「ユエちゃん、大丈夫??」

「ちょっとムリかも」


 すっかり心おれた私は、早めに就寝することにした。明日には苦汁の抽出も出来てるはずだ。マヒナちゃんもせっせと寝る準備をしているのを横目に見ながら、私は夢の世界へと落ちていった。



 朝早く起きて、鍋を見ると塩と苦汁が分離されている。そこにクリーンをあけて、不純物を取り除く。街で手にいれた漏斗を使い集めていくと、瓶一本分の苦汁ができた。


「マヒナちゃん、いくよ」

「……にゃむにゃむ、ゆえちゃんいくのー?」

「うん、ささっと行って渡して家GETしよ」


 マヒナちゃんは、にへらと笑っている。完全に寝惚けているようで、仕方ないので収納してしまう。どうやら、また眠ってしまったようで寝息が聞こえる。

 私は茶室に繋がる魔方陣を開き、魔力を込めた。


 相変わらず、あっという間に茶室に到着。


 そうすると、前にはなかったちゃぶ台にもう一つの魔方陣が書かれた羊皮紙が置いてあり、メッセージカードには「謁見の間で会おう 森居」と書かれていた。


 え、また、


 面倒だなあと思いつつ、もう一度飛ぶとそこは、大理石のような石で埋め尽くされた宮殿に到着していた。しかも、足元を見ればレッドカーペットの上。そして、レッドカーペットのたどり着く先には、女に囲まれた一人の黒髪の男が黄金に光る玉座に座っていた。


「待ちくたびれたぞ、少女よ」


 男は細いながらも屈強な肉体美を持っていた。そして、こちらにはない日本人の薄い塩顔で、切れ長の一重でもバランスのよい顔立ちをしている。ただ、ギルドで見かけるような冒険者のような出立がなんとも玉座とのミスマッチ感が、なんとも言えない。

 あと、同じ塩顔でも優しそうな塩顔でとにかく細いのが好みの私としては、全く食指が伸びないタイプである。

 どうやら、意外と時間がかかっていたのか、それは申し訳なかった。


「お待たせして、すみません。あ、はじめまして、狭山湯江と申します」


 とりあえず待たせた事へのお詫びと自己紹介をすると、何故か魔王様は下を向きブルブルと震え出した。なんだろうか、私にはわからない。少し眺めていると、満面の笑みの魔王様が私を視線で射ぬく。そして、より一層笑みを強くした。


「……久しぶりに正しい日本人の反応が見れて、俺は嬉しい!!」


 はっ?、油断して思わず口から出そうになってしまった。


「魔王よ!!威厳ある態度で迎えるって言ってたではないか!おい!小娘、頭が高いわっっ!」

「ちょ!うるさい!!耳元で叫ばないでよ!!」

「テレジアったら、少し落ち着きなさい」

「もう、本当にテレジア短気だよねー」

「お主らもじゃ!!」

「…みっ!みなさ、さん、お、おちついて」


 口々に話す5人を尻目に、気だるそうに佇む耳の長く甲冑を着た麗人といつもとは違い美しい緑のドレスを着たケルーさんのお母さん、背筋が伸びまるで人形のような精巧な美しさを持つ女性と、本にかじりつき分厚い眼鏡をかけた少女がいた。


 全部で9人。これは、もしや、ケルーさんが言っていた9人の奥さんたちなのだろう。


「ゴホンッ。はじめまして、森居賢人(もりいけんと)だ。十三番目 魔王。またの名を……」


 魔王様の顔がグチャグチャになる。何が起きてるのだろうか、私は息を飲んだ。そして、また形成された顔は、鏡に映るような私の顔だった。


「鏡の魔王だ」


 声まで私の声に似ている。そして、またグチャグチャになり、元の魔王様の顔に形成されていく。す、スゴい!!


「スゴい!!スゴいですね!」

「ふふふっ!そうか、そう思うか!!ははははは!俺の特殊能力でな!『鏡の住人』っていうんだ!!すごいだろー!!」


 魔王様、意外とノリが良いのか、素直に褒めるとそれはそれは嬉しそうに笑っている。ただ、その様子見た奥様たちの反応が微妙なのにふと気づいた。


「鏡の魔王と聞いて、普通の異世界人もこの能力を知っておったぞ。何故、お主は知らん?」


「へ?」


 言葉を発したのは長い黒髪でお姫様カットをしており、唯一着物に身を包んだ気の強そうなアジアンビューティーな人だった。見た目的には私と同じくらいの歳に感じる。ただ、ケルーさんのように精霊で歳をとらない人もいるのでわからないけども。


 知らないことが、不思議なのか??


「……うふふ、千差万別なのよ。りっちゃん。さて、自己紹介をしなければね。

 私は鏡の魔王ケント様の第一夫人 アリア・パガニーニ・モリーですわ」


 ふんわりとした白に金の刺繍がほどこされたドレスを着た魔王の右横に座る女性がまず名乗った。白い豊かな髪と気品溢れる貴婦人で、他の人よりも少し年上なのだろうか。落ち着いた口調ながらも堂々としていて魔王よりも女王のように見える。

 ……だが、女ながらに豊満な胸に目がいってしまう。ちらりと自分の普通の胸を思いだし、なんとも言えない、気持ちになる。


「第二夫人ルビー・モリーよ」


 黒と赤のドレスを身に纏い魔王の左横に座る人が第二夫人のようだ。背中にコウモリのような羽が生えていて、深紅の髪をツインテールにしている。ただ、どう見ても中学生くらいにしか見えない……

 魔王の守備範囲がスゴい……

 

「……カミーリィア・モリー。見ての通り騎士だ」


 薄い金髪のベリーショートの麗人、白銀の甲冑をよく見ると前に魔導書で見た気がする紋章が描かれている。イーユー大帝国の……だったかなたしか?わかんないけど。


「不服ながら第四夫人のオリツヒメじゃ」


 不服そうに顔を歪めるのは、先程厳しい言葉をくれたお姫様カットの人だ。

 いまだに鋭い目付きでこちらを睨んでいるのが、とても怖いです。


「改めまして、第五夫人を勤めておりますオフィーリア・モリーと申します」


 ケルーさんのお母さんはオフィーリアさんっていうのか。いつもとはちがうドレス姿をまじまじ見てしまう。やっぱりキレイだなあ。


「だ、だ第六夫人のコゼット・もモリーですっ」


 ブラウンのドレスに赤髪にソバカス、少しぽっちゃりしていて、一番優しい雰囲気を醸し出している。膝の上には一匹のネコらしき生き物がごろごろと彼女に纏わりついている。吃音と風貌がとても他の人に比べて地味ではあるが、私としては一番仲良くなりたいと思える人だ。マヒナちゃんも、コゼット夫人を一番気に入ってるみたいだ。


「ルー・モリー。よろー」


 ゆるゆると挨拶したのは、犬耳の獣人であった。キャラメル色の髪色と小麦肌、そして私と同じようなアジアンテイストな格好をしており、たれ目がとてもチャーミングなお姉さんだ。


「第8110号 (やいと)、第八夫人です」


 ピンクブロンドに精巧な美しさを持ち、紫色の瞳がとても美しい。全体的に美しいが、なんというか生命って感じがしない。


「……リオン」


 本から顔を話さず、分厚い眼鏡で顔の形はわからない。しかも、緑色のローブに髪型を隠されていてなんというか、判断しずらい。

 とりあえず、魔王様の好みはわからない。

 それだけは、わかった。





説明回辛い。くそ、辛い!一話に五人以上出すのは難しい!!

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