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第11話 知識が足りない

 今、私は、問題にぶつかっている。


 苦汁(にがり)の作り方なんか知らない。ただ、原材料が海水ってことは分かる。そこからどうすればいいのだろうか……


 先程魔王様とギルドへの納品用の塩を作り終え、天日干ししてる最中だ。最近はマヒナちゃんが海水を汲みに行き、私がただひたすらに塩を作る生活。お陰でかなり生産率があがった。


 だからといって、多くは納品はしない。天気がいいからなんて一気に納品して、それが出来ると思われてしまうのは困るから。嵐がきたりしたら、元もこうもないから。

 ストックは大事なのだ。



「ケルーさん!」

「ユエちゃん、いいとこにきた!」


 夜遅くになると最近はメイドカフェに顔を出すようになった。理由としては、今建てて貰っている家についてのこと。ケルーさんとも仲良しだが、魔王様ともケルーさんを介して「風呂とトイレは欲しい」と伝えて貰ったら、「やはり日本人だな」と返答を貰うくらいには仲が良いと思われる。

 近々、受け取りのため魔王様の家に伺うことにはなっている。

 ついでに、ケルーさんにどんな人か聞いたら、通常時は眼光の鋭く美しい黒髪を持つ人らしい。

 ついでに、ケルーさんのお母さんとも仲が良いが、魔王様と関わると一瞬にして女の顔になるのが怖い。いや、私より年上の子供がいる男とは付き合えませんから。


「これを差し上げたくて」


 ケルーさんに渡されたのは魔導書にちらりと載っていた魔方陣というものに似た絵が書かれた二枚の羊皮紙だ。下には、日本語で「サヤマさんへ森居より」と書かれていた。


 魔王さん、森居っていうんだ。あ、だから、モリーなのか、納得。


「父の本邸とここを繋ぐものらしいです。勿論物を贈ることも可能です。詳しくはこの紙を見るようにと」


 渡された紙に書かれていたのは、日本語の「魔方陣の説明書」だった。


 1.自分、物、人の一部を魔方陣に直接触れさせる。

 2.魔力をそこにぶつけるようイメージする


 ※大きすぎるものは直接渡せ


 口で説明すればいいじゃんと思うくらいに、とても簡素な説明書だが。

 普通の紙もあるのに魔方陣が羊皮紙で書かれているのは、やはりなにか意味があるのだろうか。あまり興味ないけど。

 マヒナちゃんは凄く興味津々みたいで、魔方陣に顔を近づけてなにかを読み込んでいる。


「すごいね!完璧な構築だ!」

「うちの父のだから。手に入れられないものは一つしかないらしいし」


「私には違いがわからないや」


「ユエちゃんは、本当に魔法に興味ないね」

「無くても生きていける世界を知ってるからね」


 美味しい緑茶を啜る。まさか玉露まであるなんて、凄いな魔王様。ただ、これも横にある壺も全て日本にもあったものだ。確かに、魔法は便利だけども、個人の魔力に左右されるものらしく、どうなんだろうと思う。電気は個人で左右されるものでもないしね。お金なくて停められるのは、例外だけど。


「父とは、そこが違うかもね」

「あはは、そうかもね」


「そうそう、私苦汁の作り方わからないんで、作り方送って欲しいとお伝えしてくださいますか?」

「そうなのですか?わかりました」


 すっかり夜も更けてきたので、部屋からでると、ケルーさんのお母さんが着いてきて欲しいと案内してくれる。どうやら、魔王様の命令でメイドカフェの一室を私たち専用にしてくれるようだ。


「こちらに」


 大きな花瓶をそっと動かす。どうやら、見えないとこにキャスターがあるようで、カタカタ音がしていた。

 花瓶があった壁のところには、床より高い位置に木でできた小さな正方形の扉があった。なんだろう、この感じとても見覚えがある気がする。


「開けてみてください」


 促されるまま取っ手だろう窪みに手をかけると、少し何かが吸いとられ気がした。そして、カチャリと音がする。


 そして、横にスライドしてみるとそこはなんと、和室だった。

 キョロキョロしながら中に入る。本当に見事にシンプルながらも調度品や飾られている掛け軸まで見事に整えられていた。


 ここ、中学時代に礼法の授業で入った茶室か。じゃあ、これは躙口(にじりぐち)か!懐かしい。


 ただ、気づいたことしては、これ、逆勝手じゃないかなあ。……まあ、そんな細かいことは気にしないで置こう。


「その中はユエちゃんとマヒナちゃんしか入れないから。ついでに、こちらの声は聞こえるけどそっちの声は聞こえないようになってるから!」


 ハイテク!?


「あと、帰還用魔方陣がカケジクの裏にあるらしいから今日はそれで帰ってねー」


 なんという、ハイテク。魔法興味ないけどこれはこれは、便利だ。波の絵が書かれたカケジクを捲ると、そこには和室に似合わない羊皮紙と魔方陣があった。


 先程の説明書通り、魔方陣に触れながら魔力を込めると、あら不思議いつの間にかそこはいつもの海でした。


「ねぇ、マヒナ思ったんだけどね」

「ん?なに?」

「海水贈っちゃえばいいんじゃないかなー」


 翌日、街で瓶を買って送ったら、魔王様から半ギレの小言とニガリの作り方が書かれた手紙が届きました。

 海水送っただけなのに!!!








異世界人に知識があると思ってるのが間違い。

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