表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

第10話 家が建てられない

 土魔法で家を建てるには、隅々まで行き渡る魔力が必要とのこと。それは、複雑になればなるほど必要らしい。


 というわけで、複雑なのを立ててみた。三階建てバルコニーと収納タンス付き。

 立てて、一時間放置したら、一階部分しか残ってなかった。


「……あちゃー」

「うーん、魔力量がないからかなあ」

「そうなのかなあ……」


 一階部分を見てみると、タンスなども崩れていて、殆ど前の箱と変わらない。本を読み進めていくと、もう一つわかったことがある。創造力と知識が足りないと家は建てられないということだ。


 創造力があれば、漠然と建てた家よりも隅々まで魔力を通すことが出来る。そして、知識があれば、柱を何処に立てるの土台をどのようにするのか、そういうの気が回るので頑丈な家が作れるということだ。


 残念ながら、私には創造力も知識もない。

 昔からそういうことが苦手だった。


「どうしよう、行き詰まりかなあ」


 本を読み進めている間、現在マヒナちゃんには海水を汲みにいって貰っている。頑張って家を建てようと本を買った割りにはどん詰まりだ。

 そして、基本的に土魔法は砂でやることではなく、しかも家を砂で作ろうとしてるのが間違えだということもわかった。土よりも砂の方が細かいため、魔力で繋げなければならない部分が増えてしまうようだ。


 結果、私の魔力では、この箱が精一杯なのである。読めば読むほど、難しいものだとわかる。土魔法で家を建てることができれば、冒険者としては有り難い。また、魔力を閉じ込められる器を使い、全体的に分担し常時隅々まで魔力供給を出来るようにするという方法もある。ただ、前者は一生住むわけではなく、あくまでも一日二日の凌ぎの場合だ。私として、ずーっと住む家が欲しいのだ。後者に関しては、その器がとても高価で貴重なものなので、まず無理であろう。


 とりあえず、岩場に行ってみよう。


 暮らしていたところから、すぐの岩場でその岩を使った家を建ててみる。ゴツゴツしていて、とても寝やすそうとは思わない。


「んー、難しいなあ」


 今度は海水に濡れた土でやってみる。砂のお城大作戦。

 成功した。しかし、中はジメジメしており、個人的にこれが乾いた時に崩れるかもと思うと、住む気には到底ならなかった。

 どん詰まり。本代を無駄にしたって、本当に思ってしまう結果だった。

 しょうがないので、最後まで読み進めてみよう。先程下に叩きつけた本を拾い上げ、簡単に砂を払う。なんのためになるかわからないが、ぺらぺらとページを捲った。




 マヒナは本日分の海水が入った瓶と共に砂浜に帰ってきた。やっと、だ。質のいい海水を手に入れたいが為、結構泳ぎ進めたのだ。おかげで、予想以上の幻の海で一番質のいい海水を手に入れることが出来た。

 意気揚々と帰ってきた彼女は、大声で帰宅を知らせた。聞こえてないのだろうか、もう一度声を出す。けれども、波の音しか返ってこない。


「……え」


 心配になった私は、チョーカーで声を飛ばす。こちらにも、返事はない。どうしよう、大丈夫なのだろうか、ゆえちゃん。奴隷商に捕まったのか、それとも魔物に殺された?色々と最悪の事態を想定してしまう。


 なにせ、崩れかかった砂のお城と家が何軒か建ってるだけなのだ。


 初めて出来た友達なのだ。奪わないで、奪わないで。


 堪えきれなくなった涙が、溢れだしそうになった。


「ただいまー!!いやー、ちょっとギルド行ってたんだ」


「……うっうあうう、ゆえちゃあああん」


「え?」


 





「家を買った?!」

「うん。ケルーさんに人魚と暮らせる用の家ありますか?って、聞いたら父親に頼めばあるって言われたの」


 実はあの本に、「土魔法を使えても創造力や知識がない方に、この本を買った方への救済方法がある」ということを知ったのだ。

 それは、とても単純で「誰かが作った家を購入する」ということだ。


 この土魔法を使い家を建てたい人は、移動しながら家を住みたい、建築できない場所に家を建てたい、住んでいるところを誰にもバレたくないという理由が大きい。そこでだ、土魔法は使えるならば、建築において大事な土台だけを魔法で構築し、上には他の人が建てた家を乗せるという手があったのだ。


 ここで、大事なのは魔力量。


 魔力が大きければ大きいほど、収納できるという特性を生かし、家を収納し、持ってきてしまうという荒業だ。


 異世界から来た私は他の異世界の人よりは遥かに少ないが、《海を愛し、愛された者》という称号のおかげで、低い魔力が無限大らしい。

 意味が理解できないが、とりあえず家を持ち運ぶことが可能だとわかったので、その荒業に出たわけだ。


 そして、そこで私がもう一つやらなければならないことが出来た。


「塩を2壺と、苦汁の入手か」


 魔王様からの指示により、私はこの二つを三日後までにお納めしなければならない。


「マヒナちゃん! 我が家のためだよ!がんばろう!」

「そだね!がんばろう!」


 マヒナちゃんが採ってきたサザエモドキと私が採取したニセツルクサを食べ、本日はいつもの寝床で朝を迎えることにした。







土木作業全然してないですね。

土魔法については少し疑問視してたところを出して見ました。

砂で家作れなくね、って実は書きながら思って変更したのはナイショ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ