プロローグ 日常
「湯江、ねぇ、今日カラオケ行かない?」
「ごめん、パス!!母さんに洗濯物たのまれてるんだ!」
「まじかー!残念、また今度ねー!」
「うん!バイバイ!」
掃除が始まった教室を抜け、速歩きで駅に向かう。今日は土曜で早く学校終わるというのに、本当についてない。
仕方ないから、早く帰って、今日使った水着とかジャージとか洗ってしまおう。
私は、狭山湯江。私立港ヶ丘高校2年生。
この学校から見える美しい海に惚れて入学した。趣味は、海を眺めることである。
「今日も綺麗だなー」
急いでいるのに通学路から少しズレた海岸線を歩いているのも、いつもの習慣だからである。条件反射でこの道を選んでしまったというのもあるのだけれども。
けど、この事を先生に見つかると今は厄介なんだよなー。
先月、四名の生徒が学校から忽然と姿を消した。
私は知らない子達だったが、下級生では有名な子達だったらしい。そんな四人が姿を消したものだから、学校は大パニックに。一時、高校生なのにも関わらず集団登下校が実施された。しかも、なんの手がかりも未だに見つからないので、警察も連日聞き込み調査している。
「ふぅ…私も親に転校しろって言われたしなー」
美しい海を見れなくなるかもしれないが、親としては安全第一なのだろう。夏休みを跨いだら転校させるつもりとのこと。
この海を毎日眺められるのも、当分ないのだなあと思う。
「まあ、仕方ないかなあ…」
ただ、名残惜しい。
さっき化学の授業で塩を作った時に入ったのだが、それ以外でこの海に入ったのは十数回しかない。
ちょっと勿体ないなー。
「むぅ…」
そんな私は気付かなかった、足元から伸びている透明な無数の手に。
「ん、あっイタッ…えっ」
目覚めるとそこは本当に美しい海だった。私は通学バックを握りしめて、砂浜のど真ん中に倒れていた。
どう見ても見慣れた光景ではない、まるで外国に来たかのようだ。
どこかに打ち付けたのか、激しい傷みのせいでかなかなか起き上がれない。それでも無理矢理起き上がる。荷物は全部あるようだ。お財布も…ある。
「どこよ、ここ…くっ、イタタッ」
とりあえず、燦々と照らす太陽が痛いし肌が真っ赤になっているので、赤い長袖のジャージを上から被る。こう言うとき、帽子忘れてもいいようにとフード付きので良かったと思う。
「と、とりあえず、道を探そう…」
そう思い振り替えると、そこは生い茂るジャングル。本当にここは一体、どこの国なのか。到底日本とは思えない。海も凄く透き通った青だし。
まさか…拉致…とか?
でも、そしたら私がここで捨て置かれていた意味がわからない。
とにかく、ジャングルを真っ直ぐ行ったら道に着くかもしれない。あまり深く考えたら何もできなくなりそうだ。
昔自然学校での遠足で習ったことを思いだしスカートの上からジャージの長ズボンを履き、しっかりバックを持って進む。
暑いし、皺に成るかもしれないが、万が一毒蛇とかに噛まれたりしたら大変だろう。とにかく、言語とか聞けば何処の国がわかるかもしれないし、もしかしたら助けてくれるかも。
ひたすら道なき道を進むことにしたが……
まずったかもしない。
思いの外、呆気なくすぐに道を発見し、そこには複数の人がいた。
ただし、問題なのはそこから。
二人の西洋人がたくさん人が入った檻を馬に繋いでいるということだ。
しかも、耳を済ませばどうも聞いたことがない言葉。発音も独特だし、どうも可笑しいと感じる。
そっと、カバンに入っている海を見るために使っていた安い双眼鏡を取り出す。
覗いてみると、とてもよく見えたが…正直見えない方が良かったかもしれない。
檻の中の人は人種年齢は様々だが全員全裸であった。しかも首輪をし、鎖で繋がれている。
また、全員東洋人顔とは言い難く、インド系やヨーロッパ系の顔立ちをしていた。
いやそれより、あの人達は……奴隷じゃないのかな。え、それって、いつの時代の話なのよ。
ということは、あの人達は奴隷商人とかいうのかな。奴隷という単語に、この前やった歴史の話がちらりと頭を掠めて、血の気が引いてくる。
ああ、確実に、見つかったら、おしまい。
双眼鏡をしまい、私はひたすらその馬車が通りすぎて見えなくなるのを待ってから、先程いた海へと駆け出した。
「ありえない…ここは、どこなのっ…!」
海へ着くと私は一人、泣き崩れた。
ただひたすら泣いて、いつの間にか沈み始めた美しい夕陽を眺めながら、自分の今に絶望した。
見切り発車小説です。
まったり更新、お付き合いください。
主人公は、本当に普通の女子高校生のため、俺TUEEEとか勇者とか知識で世界変えてやろうとかありません。